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ヴィーガニズム
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ヴィーガニズム(英: veganism)は「自身の目的のために動物を利用する権利はない」とする主義。
イギリスのThe Vegan Society(ヴィーガン協会)の初代副会長だったレスリー・クロスが1951年に寄稿したエッセイで、それまで曖昧であったヴィーガニズムの概念を「人間は動物の搾取なしで生きるべきであるとする主義」と定め、「食物、売り物、労働、狩猟、実験およびその他のあらゆる用途の為の人間による動物からの搾取を終わらせる」ことを目的に「個人的な状況が許す限りこの理想に近い生活をすることに努めている人」をヴィーガンとしている。また、The Vegan Society(ヴィーガン協会)は、ヴィーガニズムを「衣食他全ての目的において、実践不可能ではない限りいかなる方法による動物からの搾取、及び動物への残酷な行為の排斥に努める哲学と生き方」と定義している。
概要
食生活においては菜食主義(ベジタリアン)とは異なり卵や乳製品などあらゆる動物由来の食物も避ける。思想としてビーガンを徹底している人は、動物性食品の摂取のみならず、ウール、毛皮等の革製品など動物由来の製品の使用を避けることを実践している。
ヴィーガニズムには、動物の権利運動と深い関わりがあり、英国ヴィーガン協会が「屈強なヴィーガン」と評したトム・リーガン(Tom Regan)の著した「The Case for Animal Rights(英語版)」は、現在の動物の権利運動における重要なテキストと認識されている。
種類
食を含むあらゆる目的で動物搾取虐待をできるだけ排斥しようというヴィーガニズムの他に食の除去範囲や頻度による区分もあり、肉を意識的に減らしているが摂取するフレキシタリアン(セミ・ベジタリアン、準菜食主義)、乳製品や卵は摂取するラクト・オボ・ベジタリアン、魚肉を除いた肉のみ食べないペスコ・タリアンなどがある。
倫理を理由に完全菜食主義である場合は、エシカル・ビーガン(Ethical Vegan)と呼ばれる。美容や健康に良いと考えているために菜食主義を行う「健康のためにプラントベース」(plant-based for health)の中には、ダイエタリー・ビーガン(dietary vegan)がいる。彼らの場合は食事は完全菜食主義であるものの革製品などは用いる者もいる。環境保全を理由に菜食主義を行う「環境のためにプラントベース」(plant-based for the environment)等があるが、各種を混同すべきではないという批判が強い。
ヴィーガニズムが動物の商品化を不可能でない限り排斥し、あらゆる目的での動物製品の使用を忌避するのに対し、プラントベース・ダイエット(菜食)は食事から動物製品を排除するだけにとどまる。また、環境保全目的で部分的にヴィーガニズムを実践する人々は、畜産業が環境を破壊しているため持続可能でないという考えから拒否している。ただ彼らの主張は、ヴィーガニズムの定義と全く乖離しており、とくに日本では商業主義者がヴィーガニズムを「消費者が買うことのできる出来合いのアイデンティティー」としてモラルハイジャックしているという指摘が海外のヴィーガンから上がっている。
ヴィーガン協会設立と思想の拡散
ヴィーガン (vegan) という単語は、1944年にヴィーガン協会の共同設立者であるドナルド・ワトソンによって造語され、ヴィーガン協会は卵や乳製品の摂取にも反対していた。1951年、ヴィーガン協会は「ヴィーガニズム」の定義を拡大し、「人間は動物を搾取することなく生きるべきだという主義」の意味だとした。1960年、H・ジェイ・ディンシャーはアメリカ・ヴィーガン協会を設立し、ヴィーガニズムをジャイナ教のアヒンサー(生物に対する非暴力)の概念に結びつけた。
ヴィーガニズ厶は年々拡大を続けている。ヴィーガン向けのレストランも増加しており、ヴィーガンが運営するヴィーガン企業への出資も行われている。
全世界の人口がヴィーガンになると、食品関連の温室効果ガス排出量が2050年までに70%減少するほか、虚血性心疾患、脳卒中、2型糖尿病および悪性腫瘍の症例の減少により年間810万人が死亡せずにすみ、年間7,000億から1兆ドルの損失が防げるという研究がある。
訳語
日本語では国内外のメディアで「完全菜食主義」や「絶対菜食主義」と訳されている。米作家のマーク・ホーソーンは著書でヴィーガニズムは「菜食主義」ではなく「脱搾取」であると主張している。
医学系辞典や論文などでは、「食」のみに特化した訳語があてられている。『研究社 医学英和辞典第2版』では、veganの訳語を「完全菜食主義者(の) 超純粋派ベジタリアンの」としている。『栄養・生化学辞典 普及版』では「菜食主義者」の項に、「卵、乳は摂取する vegetarian と、それも拒否する完全菜食主義の vegan がある」と記載している。『英和・和英 栄養・食糧学用語集』では、vegan/veganismの訳語は「菜食主義/菜食主義者 【徹底した】」である。『医学書院医学大辞典第2版』では、新保愼一郎によって書かれた「菜食主義者」の項目に、「南アジアの厳格な殺生戒の仏教徒のように動物性食品を全く口にしない菜食主義者(ビーガン)〔ママ〕」とある。 『メイヨー・クリニック健康医学大事典』では「厳格な菜食主義者(絶対菜食主義者)〔ママ〕」とある。『家政学用語辞典』では、「厳格な完全菜食主義〔ママ〕」とある。
『医と食』の菜食主義者の類型を説明した論文では「ビーガン(ヴィーガン・vegan)〔ママ〕」という小項目に「ビーガンは、ストリクト・ベジタリアン、ピュア・ベジタリアン、トータル・ベジタリアンなどとも呼ばれます。『絶対菜食主義者』、『完全菜食主義者』という訳語をみることもあります〔ママ〕」と記載されている(『医と食』は、国立健康栄養研究所・理事長の渡邊昌が管理栄養士向け雑誌として創刊)。『Vegetarian research』に掲載された菜食主義者の類型を示す論文では、「vegan(ビーガン:純菜食、完全菜食)〔ママ〕」と記載され、しかるべき用語はビーガン協会など「ビーガン」で記載されている。
歴史
ベジタリアンという言葉の誕生
菜食主義は古代インドや古代ギリシアまでさかのぼることができるが、肉食を避ける人々の呼び方として「ベジタリアン」(vegetarian、菜食主義者)という英語が使われるようになったのは、19世紀に入ってからである。『オックスフォード英語辞典』では、この単語の初期の使用例として、1839年にイングランドの女優ファニー・ケンブルが米国のジョージアで使用した例を挙げている。この時期のベジタリアンという言葉では、肉だけでなく卵と乳製品も避けたり、いかなる目的でも動物の利用を避ける人々を指す言葉として使われ、より厳格な完全な菜食主義者も指していた。
このころ、ヴィーガンまたは厳格な菜食者のコミュニティを設立しようという試みが何度もあった。1834年、ルイーザ・メイ・オルコットの父で超越主義者として知られるエイモス・ブロンソン・オルコットは、アメリカ合衆国マサチューセッツ州ボストンに、厳格な菜食主義を実践するテンプル・スクールを建てた。オルコットはまた、1844年にマサチューセッツ州ハーバードにて、農業を含むあらゆる動物の利用に反対するためのコミュニティのフルーツランズを設立したが、こちらは7か月しか続かなかった。
一方、イングランドでは1838年にJames Pierrepont Greaves (1777-1842) がサリー州ハムにて、厳格な菜食主義を実践するためのコミュニティのオルコット・ハウスを設立した。その会員が1847年に畏全英・ベジタリアン協会の設立に関り、同年9月にケント州ラムズゲートのノースウッド・ヴィラで初の会議を開催した。なお、この時の会合で議長を務めたのはサルフォードの議員であるJoseph Brothertonである。
ヴィーガニズムへの移行
健康への影響からではなくむしろ道徳的側面から菜食主義を実践してきた者たちは、動物の利用を完全にやめようと議論しはじめた。全米ベジタリアン協会の1851年の会誌には皮革に代わる靴の素材についての議論が掲載された。
1886年、イングランドの運動家ヘンリー・ソルトが執筆した A Plea for Vegetarianism (菜食主義の請願)が出版され、道徳上、菜食主義は必須だと説いた。のちにソルトは動物福祉から動物の権利へパラダイム・シフトした最初の一人として知られるようになった。彼の著作はマハトマ・ガンジーにも影響を与え、二人は親しくなった。1910年には、英国史上初のヴィーガン向け料理本となるNo Animal Food: Two Essays and 100 Recipes(Rupert H. Wheldon著)が出版された。歴史学者のリア・レネンマン (Leah Leneman、1944-1999) は、1901年から1912年の間、協会の大多数が卵や乳製品に対する見解を同じくしていたと記している。。協会内での見解は統一されないままだったが、1923年の会誌に「動物製品を断つことは菜食主義者として理想的な立場である」という内容の記事が掲載された。
1931年11月には、ロンドンでベジタリアン協会の会議が開催され、ソルトを含む会員約500人が参加し、マハトマ・ガンジーが The Moral Basis of Vegetarianism (菜食主義の道徳的基礎)という題で、健康のためだけではなく、道徳の問題として肉のない食事を勧めるのが、協会の使命であることを語った。ガンジーはロンドン留学当時のベジタリアンが食と病のことばかりを話題にしていたとし、次のように語った。
「健康上の理由から菜食を実践することは、一番ひどい方法です。病苦など、つまり単純に健康上の理由から菜食主義を実践する人の多くはこの食習慣から退却することにわたしは気づきました。菜食主義を貫くには、道徳的な基礎が必要なのです。」と宣う医者であった。
オルタナティブ・ムーブメント
1960年代から1970年代にかけて、米国で高まった対抗文化、ヒッピームーブメントの流れを受けて、既存の食事、環境、農産物生産者への懸念を表明する菜食主義者たちの運動があらわれ、有機食品への関心が高まった。当時、最も影響力があった著作は、1971年に出版された「食物連鎖の頂点から降りること」を提案するフランシス・ムア・ラッペの「小さな惑星の緑の食卓」で、本書は300万部以上売れた。
1970年代後半より、医学者ジョン・A・マクドゥーガル、コールドウェル・エセルスティン、ニール・バーナード、ディーン・オーニッシュ、Michael Klaper、Michael Greger、栄養学者コリン・キャンベルらは、動物性脂肪や動物性タンパク質を中心とした、標準的なアメリカの食生活は体に悪いと主張し始めた。代わりの彼らの提案は、低脂肪で植物中心の食事によって、冠状動脈型の心臓病や糖尿病、ある種のがんといった生活習慣病を予防したり回復できるということである。 CNNの番組に専門家として度々出演する医学者のサンジェイ・グプタはキャンベルの『チャイナ・スタディー』は世界中の人々の食生活を変えたと述べている。
1980年代にはヴィーガニズムはパンク・ロックと結びついた。米国ではストレートエッジのハードコアパンク、英国ではクラスなどのアナルコパンクと関連するようになり、音楽的メッセージやライフスタイルによって大衆に影響を与えるようになった。この影響はイベントなどを通じて、21世紀の現在に至るまで続いている。
2010年代
2010年代に入ると、ヴィーガニズムはさらに一般に受け入れられるようになり、ヴィーガン料理のメインディッシュも一般的になり、料理のメニューにヴィーガン向けの表示を掲載するレストラン・チェーンも登場した。
2010年には、オランダでベジタリアン向けに代替肉を販売する De Vegetarische Slager が開店し、2011年にはヨーロッパで初めてのヴィーガン向けスーパーマーケットがドイツで開店した。また、ドルトムントで Vegilicious という店が開店し、Vegilicious系列のスーパーマーケット Veganz が2011年にベルリンで開店、他地域にも店舗を展開している 。2013年、伝統的に肉料理がふるまわれてきたオクトーバーフェストで初めてヴィーガン向けの料理がふるまわれた。
2019年9月には、ヴィーガンと気候変動対策のためのETF(上場投資信託)が米国証券取引委員会に登録され、2020年1月から投資受付を開始され、同信託はアメリカの大企業のうちヴィーガンと気候変動に配慮した企業のみで構成され、動物性食品を取り扱う企業や動物実験を実施している会社の株は全て除外された。
ヴィーガンの人口
2012年のギャロップの調査によると、アメリカ国民の2%がヴィーガンであると自認している。2017年にReportBuyerに掲載された記事ではアメリカ国民の6%がヴィーガンであるという。イギリスでは2007年の時点で、豆腐と肉の代用食品の売り上げが7億8,650万ポンドで、2012年に行われた政府の調査に対し2%の国民がヴィーガンであると自認していると回答した。
オランダ・ヴィーガニズム協会は、2007年の時点で全国民の0.1%にあたる1万6千人がヴィーガンであることを自認していると発表した。また、ドイツ・ベジタリアン協会は2013年の時点で、全国民約8200万人のうち、80万人がヴィーガンであることを自認していることを発表した。イスラエルでは2014年に行れた調査では、ヴィーガンであることを自認している人は全国民の5%近くであった。
国 | ヴィーガン (%) | データ調査年 |
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カナダ | 2.3% | 2016 |
フィンランド | 0.5% | 2013 |
ドイツ | 1.6% | 2018 |
イスラエル | 5% | 2015 |
イタリア | 0.6% – 2.8% | 2015 |
日本 | 2.7% | 2016 |
ポーランド | 1.6% | 2013 |
ポルトガル | 0.6% | 2017 |
スロベニア | 0.3% – 0.5% | 2007/2008 |
スペイン | 0.2% | 2017 |
スウェーデン | 4% | 2014 |
スイス | 3% | 2017 |
イギリス | 7% | 2018 |
アメリカ | 6% | 2017 |
現在、世界3か国を除く全ての国(北朝鮮、バチカン市国、エスワティーニ(スワジランド)以外)の消費者がVeganuary運動(ヴィーガニズムを奨励する運動)に参加しており、2014年にこの運動が始まって以来、参加者は毎年二倍以上増えている。推定で人口の3 - 10 %は肉を食べない。
ヴィーガンの著名人
- ミュージシャン。何年も動物愛護家として活動しており、2020年からヴィ―ガンに。インタビューでは「他の動物類を虐待せずにすむように、我々の世界を見直すべきだと思う」と発言している。
- 俳優。2018年にヴィーガンになったこと、そのライフスタイルを愛していることを明かした。
- アメリカ合衆国の哲学者。1967年から2001年まで、ノースカロライナ州立大学で教鞭をとった。英国ヴィーガン協会が「屈強なヴィーガン」と評している。著書、「The Case for Animal Rights(英語版)」は、現在の動物の権利運動における重要なテキストと認識されている。
- アメリカ合衆国の法律学者。Rutgers School of Law-Newark大学の法律教授。で動物の権利の理論の草分け的存在として知られており、動物の権利をアメリカの法律大学で初めて学術的に教義した。非人間種=動物に必要な権利とは、人間の所有物やモノにならない権利のことで、その道徳のベースラインであるヴィーガニズムの実践と教育で達成できると主張している。
- アメリカ合衆国の労働運動家で、全国農業労働者協会(National Farm Workers Association,略称 NFWA)創設者。1993年に死去するまで、集団的な抗議行動をする権利が法的に認められていないという特殊な立場に置かれていた農業労働者の地位向上に努めた。チャベスは動物のための正義についても強い思い入れを持ち、死去までの25年間をベジタリアン(そしてヴィーガン)として過ごし、思い遣りと正義の大切さを伝え続けた。
- アメリカ合衆国の生物学者、動物習性学者、行動生態学者、作家。ジェーン・グドール・インスティテュート共同創業者。コロラド大学ボルダー校でエコロジーと進化生物学の教授を32年間勤め、現在は同校の客員教授。「基本的公平性から見て、ヒトと動物の違いに道徳的関連性は無い。」「ヴィーガンの倫理観は食べ物にだけ向けられておらず、むしろ普段の生き方全てに当てはまるものである。」と主張している。
- ベジタリアンとして知られているベトナムの禅僧活動・活動家。しかし、「ベジタリアンでいるということは、乳製品や卵も消費しないことを意味します。なぜならそれらは畜肉業界の生産物だからです。もし私たちが消費をやめれば、彼らは生産をやめます。集団的自覚のみが行動への充分な決意を創り出すのです。」と述べており、本来ヴィーガニズムと同義の、健康も環境もスピリチャルも似非科学も一切関係ない通常のベジタリアニズムを主張していることから、ヴィーガンと認められる。
- アメリカ合衆国の学者・活動家。「黒人差別と動物差別は同根だ」として、自身がヴィーガンであることを明言している。また「差別問題を解決したいのなら、ヴィーガニズムは避けることはできない」と主張している。
- 競泳リオパラリンピック代表。環境問題から学んでいくうちに種差別の加害者であったことに気づいてショックを受けたことからヴィーガンになった。
- 俳優。30年以上ヴィーガンであり、2019年、動物の権利団体PETAと協力して、テキサスで毎年開催される豚のロデオに抗議した。
- ミュージシャン。12歳の時からヴィーガンを実践。ラグジュアリーブランドに「毛皮の使用しないでほしい」と嘆願し、毛皮廃止を実現させたほか、自身のオンラインサイトで様々なヴィーガン製品を立ち上げている。インタビューでは「私個人としては、動物たちがおかれてる過酷な状況を見て見ぬふりができないのです」と答えている。
- 俳優。弟のホアキン同様、子供のころからヴィーガン。熱帯雨林を購入するなどの環境保護活動家であると同時に動物の権利の擁護者であった。
- 俳優。「動物は食事ではなく感情のある生き物だ」という考えから9歳の時ヴィーガンになった。「植物はかわいそうではないのか?」との質問に「植物は痛みを感じない」と答えている。動物の権利団体PETAのビデオで主演し、2019年には工場畜産の問題をテーマにしたドキュメンタリー映画「EATING ANIMALS」の、制作とナレーションを務めた。
- ミュージシャン。2013年にドキュメンタリー映画『フォークス・オーバー・ナイブズ~いのちを救う食卓革命』を観てから、もともと動物好きなこともあり、ヴィーガンになった。
- 俳優。2009年にヴィーガンになった。インタビューで「"肉が食べたい "と思ったことは一度もないんです。むしろ、子供の頃は、肉を食べるのが本当に辛かった」「肉を食べる人を批判するつもりはないけれど、なんとなく嫌なんです」と述べている。また、自宅に入る人には革製品を取り除いてもらうようお願いしている。
- アイスダンス北京五輪代表。子宮付近に腫瘍ができたことがきっかけでヴィーガンになった。スケート靴も非動物性の「ビーガンレザー」を使用しており、この靴で銅メダルを獲得している。
- ビッグタイトルを、史上最多の63獲得しているテニスプレイヤー。ヴィーガンになった理由は「倫理的なものだ」とし、動物の屠殺に耐えられないこと、気候変動への配慮などを挙げている。しかし自身へのヴィーガンというラベル付けはしばしば誤解され、誤用される可能性があるために好まず、またヴィーガンという言葉も好きではないため、自身は「プラント・ベース」と呼ばれるのを好むとしている。
各国・地域・民族のヴィーガニズム
この節の加筆が望まれています。 (2018年6月)
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アメリカ
アメリカでは、ヴィーガンの比率は2009年には1%であったが、2013年には2.5%、2017年には6%と10年弱で6倍になっている。
2018年にはマクドナルドがヴィーガン対応のバーガーをアメリカ本国でも発売することを決定した。またAndroid P Beta 2でGoogleの絵文字がアップデートされた際には、サラダの絵文字から卵が除かれヴィーガン対応のサラダの絵文字になる など、ヴィーガンの人々に配慮する企業が増えつつある。
インド
国民の大多数はヒンドゥー教徒である。古代、バラモンたちは生物を殺して得られる食物を、「暗黒」に由来するターマシクと呼び、「精神を乱し、怠惰や攻撃性、性欲を増す食べ物」と考えた。人口の3割弱が菜食主義者(ベジタリアン)であり、世界最大の菜食主義国である。ただし、牛乳大好きな国民性なために動物性食品を一切とらない「ヴィーガン」はインドには少ない。食料品には必ず「ベジマーク (菜食)」と「ノンベジマーク (菜食でない)」がついている。ジャイナ教徒は完全菜食主義者である。インド国内で食肉関連の業者や肉食者にはイスラム教徒やキリスト教徒が多い傾向にある。牛乳消費量と生産量は世界一である。
中東
2022年1月、中東初のビーガンフードフェスティバルがドバイで開催された。投資家で起業家でもある、サウジアラビアの王子Khaled bin Alwaleedはビーガンで、昔はトロフィーハンティングをやっていたが、現在は動物園にも反対、植物ベースの食料システムに投資し、ソーシャルネットワークで動物擁護団体PETAをリツイートするなどして、積極的に動物の権利を発信している。
台湾
中華民国では台湾素食という菜食文化があり、台湾政府がこれを認めている。台湾の素食は「肉、魚介類、五葷、卵、乳製品」を使用しないというものであり、ヴィーガン対応の料理でもある。台湾において比較的ヴィーガン人口が多いことからティージーアイ・フライデーズ台湾は台湾でビヨンドバーガーを販売する方針である。
日本
日本ベジタリアン協会はヴィーガンを「動物に苦しみを与えることへの嫌悪から動物性のものを利用しない人」と定義している。アニマルライツセンターでは、「個人的な状況が許す限りこの理想に近い生活をすることに努めている人」がヴィーガンだと説明している。数々のヴィーガン関連書籍を翻訳し自身もヴィーガンである井上太一氏は「ビーガニズム/ビーガン ⇒ 脱搾取/脱搾取派」と簡明に説明している。
実際には日本ではヴィーガンを「健康食」として認識するものも少なくない。
政治的な思想との関連についての意見もある。速水健朗はヴィーガンを左翼的な「食に関しての理想主義者」と主張している。
右派の流れとしては、神道や仏教の影響を受けた獣肉食忌避の歴史を背景にしているものがある。動物の権利を菜食(精進料理)と関連付けて述べた人物としては、古くは空海がいた。
一切衆生は皆是我が四恩なり。無明愚癡に因るが故に、彼の血肉を愛して其の命根を断つ。此の愚癡の罪に坐(つみ)せらるるが故に、畜生の果を感す。 — 十住心論
また、エコロジー右翼団体の新政未来の党はアニマルライツ活動をしている学生運動家の文章を機関誌に掲載している。
ただし、1980年代以降に拡大した国内のヴィーガニズムは、政治や宗教からは離れた市民運動が主流となっている。以下の団体はいずれも特定の政治や宗教組織に属していない。 PETA Asiaは動物の権利団体として世界最大規模のPETA(1980年設立)のアジア支部で、日本を含むアジアの15の国を対象にヴィーガン普及活動を展開している。日本での活動初期は街頭デモンストレーションや書簡による企業への抗議を、2020年以降は日本国内の複数の畜産施設の内部告発を行い法的手段を用いるなどして、ヴィーガンになるよう呼び掛けている。
PETAなどの欧米における運動の影響をうけた団体として、1987年に創設されたNPO法人アニマルライツセンターがある。同団体の目的は動物利用を前提とした畜産動物福祉の向上運動であり、ヘンリー・ソルトによる動物の権利へのパラダイム・シフト以前の方針だが、ヴィーガンレシピなどの情報も発信している。
日本におけるヴィーガニズムの普及
ANAがサステナビリティをテーマにした飛行機にヴィーガンレザーのヘッドレストカバーを採用するなど、 ヴィーガニズムは持続可能性の観点から広まりをみせている。
- 2017年3⽉から、内閣府の食堂では毎週⾦曜⽇をミートフリーの⽇として、ベジタリアン・ヴィーガンメニューを提供。
- 2019年11月、ベジタリアン・ヴィーガン関連制度推進のための議員連盟発足。会議ではヴィーガン料理が提供された。
- 2021年4月に東京都台東区が、全国の自治体初のヴィーガン認証制度を開始し、翌年には区内のハラール・ヴィーガン・ベジタリアンメニュー対応店舗を紹介する「食の多様性対応マップ」を作成した。
- 2022年4月から、東京都庁職員食堂(一般開放)で、毎週月曜日にベジタリアン対応の料理、第三月曜日には完全菜食のメニューを提供開始。
- 2022年5月から、世界79か国で普及する英国ヴィーガン協会の認証マークのサービスが開始。
- 東京都が、ベジタリアン及びヴィーガンに関する認証取得の支援補助を開始。
ドイツ
ドイツの4大学の34キャンパスでは学食メニューの68%がヴィーガン料理となっている。
アフリカ
伝統的に多くの動物性食品を消費するアフリカだが、近年気候変動や動物福祉、インフレによる物価上昇などを理由に、植物性食品の需要が高まっており、2023年1月、アフリカ初となる「ヴィーガンレストランウィーク」が開催された。
ユダヤ人
イスラエルは朝日新聞社によると「ビーガン(完全菜食主義者)の首都」とも呼ばれている。現地メディアの調査でイスラエルの人口の2〜5%はビーガンとされる。パレスチナの動物愛護団体の代表はイスラエルがビーガンの首都とされていることを、プロパガンダのためにビーガンを利用していると批判している。ビーガンはファッションではなく、動物愛護を含めた運動と思想であるため、パレスチナ人に対する行為は、ビーガンの精神に反していると糾弾している。。
ホロコーストから生存したユダヤ人から、収容所での生活と畜産動物の扱われ方の類似しているとして、断固として菜食主義の立場をとる人々があらわれている。例えばダッハウの生存者、エドガー・クプファー=コベルヴィッツは、『Die Tierbrüder: Eine Betrachtung zum ethischen Leben(動物兄弟: 倫理的生活についての省察)』を著し、動物に対する無関心で残酷な扱いに反対する情熱的な訴えを行った。彼の信じるところでは、「自分自身があまりにも多く苦しんだので、他の生き物の苦しみを自分のこととして感じ取れるようになった」のだという。さらに彼は、「人間は、動物を虐待し、殺し続ける限り、他の人間を虐待し、殺し続け – 戦争も起こる – だろうが、これは殺戮が小さな規模で実践され、学ばれるからだと、私は信じている」とも述べている。
アニマルライツ活動家で、ホロコースト生存者、ヘンリー・スピラは、「他者を害することは間違いなのです。そして一貫性の問題として、その他者が誰であるかということに制限はないのです。もし彼らが痛みと喜びの違いを認識できるのなら、彼らには害されない基本的な権利があるのです。...あなたが力こそ正義であるというファシズムを信じない限り、私たちが他者を害する権利はないのです」と述べている。
ノーベル賞作家でホロコーストの生存者、アイザック・バシェヴィス・シンガーは、「動物にとって、毎日がトレブリンカだ」と述べており、亡くなるまでの35年間、熱心な菜食主義者としても知られている。
アニマルライツ活動家で、ホロコースト生存者であり、1976年に動物の権利運動のNPO団体、「Farm Animal Rights Movement」の共同創設者アレックス・ハーシャフトは、「私は、自分の家族全員が約35万人の他のポーランド系ユダヤ人と共に殺害されたワルシャワ・ゲットーで幼少時代を過ごしました。その経験が、私が動物たちのために取り組んでいることと何か関係があるのかと聞かれることがあります。それが私の動物たちのための取り組みに与えた影響は些細なものではありません。それこそ、私の動物のための取り組みの全てなのです」と述べている。
イスラエルがヴィーガン先進国となっている理由はホロコーストの歴史があるからだと言われている。
一方、アメリカの作家で、フェミニスト、「動物の権利のためのユダヤ人」創始者で、ユダヤ教における動物の権利の問題と、ユダヤ人コミュニティにおけるベジタリアニズムに特化した促進活動を行ったロベルタ・カレコフスキー氏は、「動物の苦難とホロコーストに共通点はあるかもしれないが、それらは異なった歴史的フレームワークにあり、(比喩は)反ユダヤ主義の脅威を見えづらくしてしまう」と批判している。
動物製品の忌避と範囲
19世紀から20世紀初めのベジタリアンは健康上の理由で動物製品(畜産副産物)を避ける者と倫理上の理由で避ける者に分かれていたが、その状況は依然としてそのままである。そして、ヴィーガン内でも健康を理由に完全菜食主義なだけのDietary Veganとあらゆる動物由来のモノを避けるEthical Veganがある。
プラントベース・ダイエットは、肉・魚・卵・乳製品を摂取しないように心掛ける一方、動物由来の成分が含まれている衣服や化粧品を使うことは許容する。 それに対しヴィーガンは、食物や衣服、娯楽などあらゆる目的での動物の商品化を拒否している。 全英ヴィーガン協会は、動物実験を含む動物の利用を可能な限り避けた製品だけを認定している。
動物由来の範囲
動物由来の製品には肉、卵、乳製品、はちみつ、毛皮のほかに蜜蝋、骨灰、ボーンチャイナ、コチニールカイガラムシおよびその虫から採取される色素、カゼイン、ゼラチン、アイシングラス、ラノリン、ラード、レンネット、コチニールとは別のカイガラムシから採取されるシェラック、ヘット, 乳清、黄色油脂などがあり、これらの多くは完成品の原材料リストに記載されていないこともある。
また、ヴィーガンは、動物製品の購入も避けており、革製品や羽毛布団だけでなく、場合によっては製造時に鶏卵を用いるインフルエンザ用ワクチンといった特定のワクチンの使用も拒んでいる。ただし、状況によってはヴィーガン向けでない製品を購入したり、使い古すこともある。 ウールの代用品には、アクリル、綿、麻、レーヨン、ポリエステルなどがある。一部のヴィーガン向けの衣服や、靴、もしくは皮革の代用品としてヴィーガンらの間では石油由来の原料が愛用されているが、製造工程における地球環境への影響から論争になっている。
卵、乳、はちみつ、絹との関わり方
ヴィーガンは卵・乳製品・はちみつ等の製造時に動物を苦しめたり早すぎる死をもたらすことから、ヴィーガンはこれらの製品を避けている。
昆虫を加工した品も避けるべきだという考えに賛同しない菜食主義者もいるが、ヴィーガンは、絹等のカイコ由来の製品を避けている。現代の養蜂方法は残酷で搾取的であるという見解は多くのヴィーガンの間で一致している。蜂たちの食料の貯蔵物であるはちみつを搾取する代わりにコーンシロップや砂糖を摂取という方法がとられており、リュウゼツランを原料とするアガベシロップもヴィーガンの間で愛用されている。Vegan Society と American Vegan Societyは蜂蜜や絹など昆虫由来の製品の使用はヴィーガンにはふさわしくないとする一方、Vegan Actionと Vegan Outreachは個人の自由という見解を示している 。
食生活と健康効果および、栄養失調回避の注意点
健康効果
現在のヴィーガンの主な食生活であるプラントベース・ダイエットを実践するスポーツ選手もおり、アイアンマン・トライアスロンやウルトラマラソンなどの耐久競技の選手の中にも実践する者がいる。これらは身体のコンディショニングのための食事についてであり、ヴィーガニズムとの関わりは無い。
アメリカ栄養士協会とカナダ栄養士協会は、栄養のバランスが充分考慮されたヴィーガン食は、ライフサイクルのどの段階でも適合できる食事だとしている。バランスを充分考慮したプラントベース・ダイエットは、心臓病などの慢性疾患に対して予防効果があると言われている。カナダ小児医師会は、適切な注意を払ってよく計画されたヴィーガンの食事は、胎児、乳児、子供および青年期の成長のすべての段階で健康的なライフスタイルを提供できるとした。
菜食は、心不全、大腸癌、高コレステロール血症、高血圧、前立腺癌、脳梗塞になりにくいとされ、きちんとバランスが取れていれば、健康に必要な栄養素をとることができるとされている。カリフォルニア大学ロサンゼルス校のように、キャンパス内のすべての食堂に菜食メニューを設定したうえ、ヴィーガン専用食堂を設置する機関もある。ミシガン州立大学の研究では、赤み肉や加工肉は健康寿命を減らしてしまうとされ、菜食料理は健康寿命に良好な影響をもたらすとされる。
心疾患を専門とするアメリカのクリーブランドクリニックは、JAMA Network Openに発表されたメタ分析を根拠に、健康に配慮した菜食(プラントベース・ダイエット)は血圧とコレステロールを下げ、2型糖尿病リスクを軽減し、消化を改善するなど重要な健康上の利点があるとして、1か月のヴィーガンチャレンジを推奨している。
不足栄養素とサプリメント
肉・魚・卵・乳製品・蜂蜜も摂取しないため、十分に食生活に注意しないと鉄や亜鉛、ビタミンA、ビタミンB2とB12、ビタミンD、DHA、カルシウム、タンパク質などの栄養不足になりやすい。青年期までの子どもを菜食で育てる場合は更に食生活・栄養不足に注意が必要である。大人であってヴィーガン食生活をする際には、動物性食品にしか含まれないために特に欠乏しやすいビタミンB12を中心に、魚に多いビタミンD、青魚に多いオメガ3系脂肪酸はサプリメント摂取が求められる。
プラントベース・ダイエットは、食物繊維、マグネシウム、葉酸、ビタミンC、ビタミンE、鉄分、フィトケミカルの含有量が高く、カロリー、飽和脂肪、コレステロール、長鎖オメガ3脂肪酸、ビタミンD、カルシウム、亜鉛、ビタミンB12が低い傾向がある。
ビタミンB12は、土壌に含まれている場合も多く、温室栽培、室内栽培、水耕栽培など管理されきった場所で栽培された植物性の食物には、ビタミンB12がほとんど含まれていないため、ヴィーガンはビタミンB12が強化された野菜などを意図的に摂取する必要があるとされている。同時に、栄養強化食品やサプリメントを摂取しない場合であってもビタミンB12欠乏症の症状がみられないとする研究もある。
ヴィーガン料理
ヴィーガン向けの料理には、チリスープ、ラタトゥイユ、ファラフェル、フムス、ヴェジー・ブリトー、ライス・アンド・ビーンズ、野菜炒め、ヴェジーバーガー、パスタ・プリマヴェーラといったパスタ料理が挙げられる。
大豆は完全タンパク質を含んでいるため、豆乳や豆腐、テンペ、代替肉といった形で使用される。にがりを加えて作られる豆腐は水分含有量によって硬さが異なり、それぞれに適した調理方法があるほか、豆腐を柔らかくしたり滑らかにしたものをサラダドレッシングやスイーツ、シェイクの材料にすることができ、植物性タンパク質はしばしばパスタのソースに用いられる。
また、麩(小麦のグルテン)も蛋白源としてしばしば利用される。 グルテンミートといった代替肉は、小麦や大豆のグルテンを原料としており、ベジタリアン・ソーセージやベジタリアン・ミンス、ヴェジーバーガーといった、ベジタリアン向けの食品に加工される。
乳製品の代用品
豆乳やアーモンドミルク、ココナッツミルク、植物性ミルク(コメやオートムギなどを原料としたものが有名)が、牛や山羊の乳の代わりに用いられ、その中でも豆乳とアーモンドミルクは比較的手に入りやすい方である。ただしアーモンドに関しては生産にミツバチを酷使するため避けるべきではないかという議論もある。
牛乳1カップ(250ml)につき8gのたんぱく質が含まれているのに対し、豆乳は1カップにつき7gのたんぱく質が含まれている。その一方で、アーモンドミルクはカロリー・タンパク質共に控えめである。
動物の乳や肉同様、豆乳には完全タンパク質が含まれており、飲むと必須アミノ酸の摂取にもつながり、必要なたんぱく質全部をとることができる。 ただし、母乳の代わりとして乳幼児に豆乳を与えることはできず、母乳を与えない場合は牛乳、または豆乳ベースの乳児用ミルク(SBIF)を与える必要がある。
成分 | 全乳 | 豆乳 |
---|---|---|
エネルギー密度 (cal/235ml) | 149 | 80 |
脂肪分 (g) | 7.9 | 4 |
飽和脂肪量 (g) | 4.6 | 0.5 |
コレステロール (mg) | 24 | 0 |
ナトリウム (mg) | 105 | 100 |
カリウム (mg) | 322 | 300 |
炭水化物 (g) | 12 | 4 |
タンパク質 (g) | 8 | 7 |
アナログチーズはナッツやタピオカでできており、Daiyaという商品は風味や溶けやすさにおいて通常のチーズと変わらない。 ニュートリショナル・イースト はチーズに近い風味をしており、ヴィーガン料理においてチーズの代用品として広く使われている。チーズの代用品は家庭でも作ることができ、Joanne StepaniakのVegan Vittles (1996), The Nutritional Yeast Cookbook (1997), The Uncheese Cookbook (2003), Mikoyo SchinnerのArtisan Vegan Cheese (2012)などにレシピが掲載されている。 たとえば、あるヴィーガン向けブリーチーズは、カシューナッツと豆乳と豆乳ヨーグルト、ココナッツオイルから作られている。 また、Earth Balanceといったヴィーガン向けマーガリンも存在する。
卵の代用品
卵を使わないマヨネーズ風調味料のブランドには、Vegenaise, Nayonaise, Miso Mayo, and Plamil's Egg-Free Mayoが挙げられる。 マヨネーズ製造において、卵は増粘剤・つなぎとして入れられる。加熱することにより、卵のたんぱく質の粘り気が増し、他の材料をつなぎ合わせる。 卵1個分の代わりに、挽いた亜麻仁をテーブルスプーン3杯分入れ、亜麻仁3:水1の割合で混ぜ合わせてできたものは、増粘剤とつなぎの役割を持つ。また、Bob's Red MillやEner-G eggといった市販品も卵の代わりとして使うことができる。 ヴィーガン向けのパンケーキには、卵の代わりにベーキングパウダーが使われる。 このほかにも、きなこ1:水1を混ぜたものや、潰したバナナもしくはプルーンないしは林檎ソース4分の1カップ、裏ごしした豆腐や潰した芋、もしくは小麦粉をテーブルスプーン4杯分・植物油1杯・水2杯・ベーキングパウダー半杯分を混ぜてこねたものや 滑らかにした豆腐やマッシュポテトも卵の代わりとして生地に加えられる。
プラントベース食品の栄養群
医療関係者でつくるNPO団体責任ある医療のための医師の会 (PCRM) は、1991年より果物・豆類(豆、えんどう豆、レンズマメ、ラッカセイなど)、穀物、野菜からなる新四大食品群を取り入れたコレステロールを含まない・低脂肪の完全菜食の推奨を続けてきた。PCRMは一人当たり一日に3皿以上の果物(かんきつ類やメロン、イチゴなどビタミンCの豊富な食べ物は一日1皿以上)と、たんぱく質を豊富に含む豆類2つ以上(豆乳・豆腐・テンペなど大豆加工品のような)、5皿以上の全粒穀物(トウモロコシ、大麦、米、小麦のような。加工品としてはパンやトルティーヤといった)、4皿以上の緑黄色野菜(ブロッコリやニンジン、サツマイモのような)を摂取することが望ましいとしている。
PCRMのヴィーガン向け食品群はアメリカ合衆国農務省 (USDA) が1956年から92年までに推奨してきた四大食品群(肉・乳・野菜/果物・穀物およびその加工品)に代わるものとして作られた。 1992年、米国農務省は四大食品群に代わってフードガイド・ピラミッドを発表し、2011年にはマイプレートとなり、これら食品を5つのグループに分けており、穀物・野菜・果物・乳製品・タンパク質(肉、鶏肉、魚介類・卵、豆類およびその加工品・ナッツや種子)から構成されている。 また、イギリス政府も正しい食事プレートを推奨しており、5つの食品群(果物と野菜・いもやパン等の炭水化物・乳製品・肉/魚/卵/豆などのたんぱく質・脂質および糖分)からなる、このうち乳製品とタンパク質は大豆などの植物性たんぱく質のものからとってもよいため、ヴィーガンでもこれを実践することができる。
栄養
ビタミンB12
ビタミンB12は、細胞分裂、赤血球の生成及び成熟分裂、DNA合成、神経の正常な動作に必要とされており、細菌によって合成されている。ビタミンB12が欠乏すると重大な健康問題となり、神経が損傷するだけでなく、巨赤芽球性貧血に陥ることもある。 ヴィーガンはもちろん、ベジタリアンでさえビタミンB12強化食品やサプリメントを摂取すべきだという合意が栄養士の間にある。 多くの場合に(少なくとも欧米では)ヴィーガンが植物中心の食生活からビタミンB12を摂取することは難しいということが、ヴィーガニズムへの反論としてしばしば指摘される。
ビタミンB12の生成は、細菌やきのこ・藻類といった微生物が行っているため、植物も動物も自分でビタミンB12を生成することはできない。
草食性の動物では、自分の第一胃において反芻することで細菌が生成したものを吸収したり、ウサギのように盲腸糞を食べることもある。肉食の動物ではこうした動物を食べることでビタミンB12の摂取源となる。 きちんと洗われていない植物には、土中の、特に糞の細菌に由来するビタミンB12が含まれる可能性がある。特に発展途上国においては、飲み水にもこうしたB12を生成する細菌が含まれている可能性がある。 栄養士のリード・マンゲルスらは、人間の体内の細菌は消化器官の中でビタミンB12を生成するが、その多くは吸収されることなく排泄されるため尿に少量含まれている程度だとしている。 医学研究者のジェームズ・ハルステッド (James Halsted) は、動物性たんぱく質の摂取が少量あるいはまったくないにもかかわらず、イランのある地域の住民から正常な濃度のビタミンB12が検出されたのは、一緒に暮らしている動物の排せつ物や人間の屎尿を肥料として利用し、その屎尿で育った作物が十分に洗われぬまま食べられていたからであることを、1960年代に行った調査で明らかにした。 人間の口もB12の摂取源となるが、大した量ではないうえ、B12に類似した非活性物質であることが多い
欧米は衛生環境が整っているため、完全菜食ではビタミンB12不足を招きやすい傾向にある。 そのため、このような地域においてビタミンB12を摂取するには、サプリメントや栄養強化食品を食べる必要がある。 サプリメントのビタミンB12は産業的に細菌合成したのものであり動物由来ではない。
ビタミンB12のRDA(μg) | |
---|---|
0~6か月 | 0.4 |
7~12か月 | 0.5 |
1~3歳 | 0.9 |
4~8歳 | 1.2 |
9~13歳 | 1.8 |
14歳以上 | 2.4 |
妊娠中・授乳中 | 2.4~2.6 |
サプリメントや栄養強化食品を摂取していないヴィーガンに関するいくつかの研究にてビタミンB12欠乏症の症状がみられなかったことから、ヴィーガン達のコミュニティーの間では、このような栄養補助食品の必要性を疑問視する声も上がっている。
マンゲルスらによれば意見の相違は、こうしたサプリメントを摂取しなかったヴィーガンに対する長期的な調査が皆無なことや、ビタミンB12を測定する標準的な手段がないことが原因だとしている。また、もしビタミンB12を含むサプリメントや栄養強化食品を摂取しなかった場合、数十年かかるかもしれないが欠乏症になるだろうとしている。
また、ビタミンB12が含まれる食品として、味噌やテンペといった発酵食品、アラメやワカメ、海苔、昆布、スピルリナといった海藻、葉野菜や穀物・豆類には、ビタミンB12があり、さらに言えば雨水にも含まれている。 麦芽シロップ、シイタケ、パセリ、サワードウにもB12は含まれているが、これらの食品に含まれるB12は非活性のものであると見られている。
タンパク質
タンパク質はアミノ酸で構成されている。雑食性の動物は、タンパク質の3分の1を植物から摂取しており、ラクト・オボ・ベジタリアンはタンパク質の半分以上を植物から摂取していると、栄養学者のリード・マンゲルスは話している。 動物性たんぱく質を摂取しないヴィーガンは、たんぱく質全てを植物性の食べ物からまかなっているということになる。このとき、人間の体内では合成できない必須アミノ酸も植物性タンパク質だけでまかなえるのかという疑問が生まれる。
植物性たんぱく質は、大豆(豆腐・テンペ・豆乳等の加工品や枝豆など)やエンドウマメ、ピーナッツ、黒豆、ヒヨコマメ(ホムスなどの形で食べられることが多い)といった豆類や、キヌアや玄米、トウモロコシ、大麦、ブルグア、小麦(全粒パンやセイタンとして食べられる)といった穀物類、アーモンドや麻の実、ヒマワリの種といったナッツ類などに多く含まれている。
また、その他の野菜や穀物などの植物性の食べ物にもたんぱく質は含まれている。
キヌアと大豆に関しては、いずれも必須アミノ酸を含んでいるため、完全たんぱく質の摂取に役立つ食べ物と言える。
マンゲルスらは、1日に必要なたんぱく質を大豆から摂取することで、生物学的に見て体内に必要な分のたんぱく質を賄うことができるとし、アメリカ合衆国農務省が学校昼食プログラムで、肉由来にたんぱく質の食品を大豆由来のものに差し替えるかもしれないと付け加えた。
必須アミノ酸全てを多く含む伝統的な料理には、ベリーズ料理のライス・アンド・ビーンズ、コーン・アンド・ビーンズ、ホムス、全粒小麦で作られたピタパンなどがあげられる。 従来、適切なタンパク質摂取を植物性の食品で確保するためには、足りない必須アミノ酸を補いあうように、一回の食事毎に様々なタンパク源を組み合わせて摂取すべきだとされていた。しかし、アメリカ栄養士会は、成人の場合、必要な必須アミノ酸は1日の間に摂取されていれば良く、一回の食事毎に全ての必須アミノ酸を取る必要はないという立場を1993年以来取っている。
その他
ビタミンDは紫外線を浴びれば体内でも合成されるが、日照が制限されている場合に、適切でないヴィーガン食を続ければ欠乏症を起こすことがある。ω-3脂肪酸は必須脂肪酸で、ヴィーガン食では比較的少ない。
ヴィーガン向けグッズ・認定基準
全英ヴィーガン協会の定めるヴィーガン向けグッズの認定基準は、「動物由来の成分を使っておらず、製品および原材料の製造において製造元・支援者・下請けに至るまで動物実験が行われていない」である。協会のウェブサイトには認定を受けた企業や製品のリストが掲載されている。
ヴィーガンは Animal Ingredients A to Z (2004) の情報を基に動物由来の材料が使われていないか確認して商品を購入している。
諸問題
健康被害
1984年にヒンドゥー教徒に対して行われた調査では、ヒンドゥー教徒の子供の出生時体重が軽くなるデータが示されている。 授乳中の母親のビタミンB12欠乏症は、子供に深刻な欠乏症や神経障害をもたらすとされており、必須脂肪酸であるω-3脂肪酸、α-リノレン酸、これらの脂肪酸から変換されるドコサヘキサエン酸(DHA)が視神経や中枢神経系の発達に必須であるが、ほとんどのヴィーガン食では含有量が非常に低いため、妊娠・授乳中のヴィーガンの母親は摂取を補う必要があるとする研究がある。
アメリカ在住でヴィーガン生活を送ってきた女性がアレルギーや過敏症などを発症し、体調が思わしくないため医師に食生活を見直して魚を食べるように言われ、涙を流しながらサーモンを食べる動画が投稿された。後日、女性は新たな動画でサーモンとエビを食べたことを明かし、涙無しに食べたことと「なかなか美味しかった」と語った。
ローフード・ダイエットで人気のあったYouTuberで、ヴィーガンを自称していたヨヴァナ・メンドーサ・アイレス(Yovana Mendoza Ayres)が、魚料理を食べている疑惑が浮上した。炎上後に謝罪動画をあげ、6年間は完全なヴィーガンをしていたが、2年前から貧血気味で甲状腺ホルモンが低レベルであり非常に具合が悪く、一つ間違えば危険という状態であったこと、女性ホルモン値が閉経年齢レベルで生理が止まっていたこと、小腸の細菌増殖で腹部膨満感やひどい腹痛などが起こる小腸細菌異常増殖症(SIBO)と診断されたことで、医師から卵や魚を食べるように言われて食べていたことを明かした。
このように、ヴィーガンを自称していた健康系インフルエンサーたちが、健康被害を理由に「ヴィーガン」を辞めている。これについては、医学知識なく25日の断食などの無理な食事法をコンテンツにしていたことで健康に影響が出た可能性が指摘されている。
小児科専門医の森戸やすみは、「とにかく子供はバランスのよい食事を十分に摂る必要があります。例えば、『ヴィーガン食は子供にもよい』という説もありますが、子供が完全菜食を行うと、ビタミンB12欠乏症によって嘔吐や汎血球減少症が起こったり、ビタミンB欠乏症によって『くる病』になったり、精神神経発達に異常を来したり、低栄養状態になったりするリスクがあるからよくありません。つまり根拠のない除去食は手間がかかるうえ、子供の健康を損ねるリスクがあります」と述べている。
事件
2016年に極端なヴィーガンであった女性が、子供にヴィーガン食を強制させた上に死亡させたとして刑事裁判となった。女性は子供にナッツ類とベリーのみを食べさせ、発疹があっても治療を受けさせなかった。子供は発育が遅く、発疹の起こった部分に敗血症が起こっていた。
同年8月、イタリアの保守政党フォルツァ・イタリアの国会議員エルヴィラ・サヴィーノは、ヴィーガンの食生活が子供の食事において大事となる健康でバランスの取れた成長に不可欠な栄養素に欠けているものであることを理由に、ヴィーガン食を自分の子供に強制する親を罰する法案を同国議会に提出した。サヴィーノの法案は16歳以下の子供を対象としたもので、この法案が可決されて成立すれば、親が子供へのヴィーガン食を強制するだけでも最長で1年、子供がそれによって何かしらの病気を患った場合は最長4年、そこから子供が死去した場合は最長6年の懲役が科せられるという。しかし、結局は成立しなかった上に、法案の内容が少しばかり過激であることから、これに対して、刑罰よりも正しい情報を周知させることに重点を置くべきだという意見も多く出ている。
2017年にベルギーでヴィーガンの両親が、グルテンフリー・ラクトースフリーの食事を与え続けたことで、生後7か月の乳児を死亡させたことで有罪判決が下された。死亡時の体重が10ポンド以下(約4,500グラム以下)だったと報道された。
2019年9月にアメリカ合衆国フロリダ州で生のフルーツ・野菜と母乳のみを与える極端な生活を強いて息子を殺害した38歳の自称ヴィーガンの母親に、2022年に第1級殺人、重度虐待、過失致死、育児放棄など合計6件の罪で終身刑の判決がくだされたと報道された。乳児の検視結果、死亡原因は脱水を含む栄養失調による合併症であった。遺体は肝臓機能が低下し、手足と下肢がむくみで腫れあがっていた。生後18ヶ月の赤ん坊は死亡時8kgしかなく、普通の生後7ヶ月の平均体重レベルの体重しかなかったと警察の報告書に記載されている。両親は赤ん坊は死亡するまで一週間何も食べていなかったと供述しており、検察官は最終陳述で、「彼(赤ん坊)は、何も食べていなかった。18ヶ月かけて餓死したのだ」と述べている。夫妻は「家族で生のフルーツと野菜だけを食べる生活をしていた」と供述。死亡した乳児には母乳も与えていたという。 同じ罪状で起訴されている夫のライアン被告も、現在判決を待っている状態だと米ニューヨーク・ポスト紙は伝えている。また、ヴィーガンだという夫には12歳未満に対する性的暴行並びにみだらなわいせつ行為で追起訴が提出されたと伝えている。 米ピープル誌によると、母親の救急要請で救急隊員が駆け付けた時にはすでに呼吸が停止しており、そばには極度の栄養失調でやせ細った小さな3歳と5歳の兄弟の姿もあったという。また、母親は11歳の別の子供を巡っても栄養失調で以前に訴えられ、実の父親に引き渡されていたという 。 なお、フルーツや野菜のみを食べる菜食主義者は、一般に果実食主義者(フルータリアン)と呼ばれる。
ニセ科学
2021年の『朝日新聞』による「『ヴィーガン給食』取り入れた公立小学校 みんなで食べられ、みんながおいしい」と題された記事にて、アレルギーに対応した給食の一環として、八王子の公立小学校でヴィーガン給食を定期的に提供することになったことを肯定的に報道した際に、多くの医療関係者から批判を受けて記事が削除される事態になった。BuzzFeed Japanは「ヴィーガンは健康にいい」というイメージだけが一人歩きをして、栄養バランスが崩れて健康被害が出る可能性を医師らが危惧していることを報じた。小児科専門医の森戸やすみは、「ヴィーガン」とは栄養法ではなく、思想上の立場・主義、とした上で、都民ファーストの会の森愛東京都議会議員が、役所の食堂にヴィーガン食導入を勧めた千代田区議の小野なり子のツイートに「私も昨日の都議会一般質問で、給食のオーガニック食材化を求めて質疑しました。大田区の保育園・フリースクールでもヴィーガン給食で不登校や発達障害のお子さんに実績を上げています!」とリプライしていることに、「ヴィーガン」食が不登校や発達障害に良い影響があるエビデンスはなく、こうしたニセ科学的背景から特定の食スタイルを推進するのは、不登校や発達障害に悩む人たちを惑わせ、「家庭の食事が我が子の不登校や発達障害に影響しているのか」と無意味な自責感を与えるなどの問題があると指摘している。ヴィーガン給食導入した浅川小学校の清水校長がガンに効く呼吸法を主張する人物を自身の学校に呼んだことやニセ科学的発言を繰り返していることにたいし警鐘を鳴らしている。清水校長は件の「ヴィーガン給食」の名称を「エブリワン・プラントベース給食」に変え、毎月1 回程度続けている。
ヴィーガニズムは、エセ科学的背景を持つ様々な除去食ブームと誤解されやすく、この傾向に対して精神医学と哲学の研究家であるスティーブ・スタンケヴィチウス氏は、疑似科学やスピリチュアリズムを是としないヴィーガンを新ヴィーガンと呼び、「新無神論者は新ヴィーガンにならなければならない」という記事を発表し、理性によるヴィーガニズムの実践を訴えた。それに対し疑似科学や宗教信仰を懐疑・批判する懐疑主義者であり、懐疑主義の雑誌『Skeptic』誌の発行人で、『なぜ人はニセ科学を信じるのか』を著したアメリカの科学史家、サイエンスライターのマイケル・シャーマー氏は、「我々(新無神論者たち)は、ヴィーガンになろうとしているところだよ! まず、リデュースタリアンから始めてみよう。」とツイートしている。
急進的ヴィーガンによる襲撃
2017年3月、DxE(Direct Action Everywhere)の共同創設者のウェイン・シゥン氏とポール・ピクルシマー氏を含むDxE活動家たちが、スミスフィールド・フード社が所有するのユタ州の養豚場から衰弱した低体重の子豚を二頭連れ出し、コロラド州にあるアニマル・サンクチュアリに匿った。子豚たちの顔は母親の血に染まり、飢えをしのぐため、兄弟たちの死骸を食べていたという。程なくスミスフィールド・フード社は訴えを起こし、FBIが捜査に乗り出した。DxE自身が救出の顛末を撮影したビデオが有ったにも関わらずFBIはサンクチュアリーを捜査し、リリーとリジーと名付けられた二頭の耳の一部をスライスして遺伝子検査しスミスフィールド・フード社の「所有物」であった事を確認できる証拠とした。同年7月6日、FBIとビーバー・カウンティーの保安官事務所は訴求を開始。当初5人の活動家が告発され、3人は司法取引に応じたが、拒否したウェイン・シゥン氏とポール・ピクルシマー氏の処遇については裁判に委ねられることになった。検察は、彼らにそれぞれに家宅侵入と「商業価値」の無い家畜の窃盗としては異常に重い5年の刑を求刑。残酷描写を理由に記録ビデオを陪審員に見せることは禁じられ、陪審員が在宅時にSNS等に接することまでも禁じられた。ユタ州ビーバー郡で始まった裁判は、より多様な陪審員の見込めるセント・ジョージの裁判所に移管され、2022年10月4日火曜日に冒頭陳述、週末前の7日金曜日に陪審員が評決に達し、両名の無罪が確定した。
こうした肉屋や魚屋を狙ったヴィーガンによる攻撃が、主としてイギリス、スイス、フランスで報告されており、菜食主義者団体内でも強硬な主張を抱く組織による襲撃行為へ賛否が割れている。特にフランスでは、肉屋や魚屋に対して、窓ガラス破壊、店頭にスプレーで肉反対のスローガンの落書き、血液に似た液体による汚損などが起きるなど、急進的なヴィーガンによる肉屋襲撃や脅迫がより過激化してきている。フランス食肉専門店・食肉ハムソーセージ専門店・総菜店連盟(La Confédération française de la boucherie, boucherie-charcuterie, traiteur、CFBCT)は、一連の言動を「一種のテロ」と批判し、2018年6月に政府への精肉店の保護とテロ対策を求めた。ブシェリー・アボリシオン(仏語:肉屋廃止)と269ライフ・フランスは、同年9月22日にフランス全土で精肉店前デモを実施し、子豚の死骸を使った急進的な菜食主義者活動家の一人は、精肉店の窓ガラス破壊行為を非難せず、「いざとなったら刑務所に入る覚悟はできている」「われわれの活動で制限されているのは対人暴力のみだ」などと主張している。このように、家畜飼養や食肉処理など畜産業界や食肉業界で生計を立てているフランス人や伝統的に肉食を好むフランス人と、急進的完全菜食主義者(急進的ヴィーガン)」グループの人々の間で、衝突や対立しているケースがみられる。ポールバレリー・モンペリエ第3大学教授は、和解の可能性は「ない」と語っている。
2018年に食肉販売業者のクリスチャン・メドベ(Christian Medves)がイスラム過激派のテロで亡くなったことについて、「これっぽっちも同情しない。そこには正義があった」とSNSへ投稿したヴィーガンの女性活動家が、反テロ治安法による「テロリズム擁護の罪」で執行猶予付きの禁錮7ヶ月の判決を下された。
2019年には精肉店、鮮魚店、肉料理のあるレストランなどを相次ぎ夜間に襲撃したり、窓破壊、放火した罪で、ヴィーガンの活動家2人が逮捕された。同年4月8日に、禁錮1年4ヶ月と被害店への損害賠償を被告らに命じた有罪判決が下っている。被害を受けた店らが負った事業損失は数百万ユーロ規模と報道された。
ヴィーガンに対する差別・攻撃
ヴィーガンによる様々な言動が問題視される一方で、ヴィーガンへの反感を表明する者(ヴィーガフォビア)も出てきており、その中にはヴィーガンに対して憎悪攻撃に走る者も少なからずいる。例えばイギリスでは「菜食主義者向けマーケットでリスを食べ続ける」という嫌がらせを行った男に罰金刑が処せられた。また、ヴィーガンであることを理由に突然解雇されたり、企業の採用候補から除外されたりなどの事件があった。
法律事務所CrosslandSolicitorsの調査によると、英国を拠点とする「1,000人を超える」ヴィーガン従業員のうち、3分の1近くが「職場で差別されている」と感じていることがわかっている。2018年、当時ウェイトローズフード誌の編集者だったウィリアムシットウェルは、「ヴィーガンを1人ずつ殺すシリーズ」を提案したほか、ブリストルの大学生は「雄牛の去勢を見て食肉処理場を訪れるか、落第するか」を選ばされたが、大学はヴィーガン協会の指摘により中止した。
関連項目
- 動物に対する考え方
- 肉食を避ける考え方
脚注
注釈
参考文献
- A. リンゼイ著、宇都宮秀和訳『神は何のために動物を造ったのか:動物の権利の神学』教文館、2001年6月。ISBN 4764266296
- エリック・マーカス著、酒井泰介訳『もう肉も卵も牛乳もいらない!:完全菜食主義「ヴィーガニズム」のすすめ』早川書房、2004年6月。ISBN 4152085738
- ゲイリー・フランシオン著、井上太一訳『動物の権利入門:わが子を救うか、犬を救うか』緑風出版、2018年4月。ISBN 9784846118044
- シェリー・F・コーブ著、井上太一訳『菜食への疑問に答える13章:生き方が変わる、生き方を変える』新評論、2017年4月。ISBN 9784794810588
- トム・レーガン著、井上太一訳『動物の権利・人間の不正:道徳哲学入門』緑風出版、2022年5月。ISBN 9784846122065
- バーナード・ローリン著、高橋優子訳『動物倫理の新しい基礎』白揚社、2019年11月。ISBN 9784826990622
- ピーター・シンガー編、戸田清訳『動物の権利』技術と人間、1986年9月。ISBN 4764501325
- フランシス・ムア・ラッペ著、奥沢喜久栄訳『小さな惑星の緑の食卓:現代人のライフ・スタイルをかえる新食物読本』講談社、1982年5月。ISBN 4061426680
- ヘルムート・F・カプラン著、ニトライ陽子・田辺リューディア・まきぼう訳『死体の晩餐:動物の権利と菜食の理由』同時代社、2005年3月。ISBN 4886835449
- マーク・ホーソーン著、井上太一訳『ビーガンという生き方』緑風出版、2019年2月。ISBN 9784846119027
- メラニー・ジョイ著、玉木麻子訳『私たちはなぜ犬を愛し、豚を食べ、牛を身にまとうのか:カーニズムとは何か』青土社、2022年5月。ISBN 9784791774760
- ローリー・グルーエン著、河島基弘訳『動物倫理入門』大月書店、2015年11月。ISBN 9784272430987
関連文献
- 伊勢田哲治『動物からの倫理学入門』名古屋大学出版会、2008年11月。ISBN 9784815805999
- 西山ゆう子『アメリカ動物診療記:プライマリー医療と動物倫理』駒草出版、2008年12月。ISBN 9784903186658
- 一ノ瀬正樹・新島典子編『ヒトと動物の死生学:犬や猫との共生、そして動物倫理』秋山書店、2011年3月。ISBN 9784870236325
- 蒲原聖可『ときどきベジタリアン食のすすめ:ビーガン、マクロビオティックから統合栄養学まで』日本評論社、2011年9月。ISBN 9784535983557
- ふかもりふみこ『地球から愛される「食べ方」:この星を貪らない生き方「ヴィーガン・ライフ」入門』現代書林、2017年10月。ISBN 9784774516660
- 垣本充・大谷ゆみこ『完全菜食があなたと地球を救うヴィーガン:おいしい実践マニュアル付』ロングセラーズ、2020年5月。ISBN 9784845424542
- 田上孝一『はじめての動物倫理学』集英社〈集英社新書1060C〉、2021年3月。ISBN 9784087211603
- 浅野幸治『ベジタリアン哲学者の動物倫理入門』ナカニシヤ出版、2021年3月。ISBN 9784779515521
- 船瀬俊介『ヴィーガン革命:動物食は老化する』ビオ・マガジン、2022年4月。ISBN 9784865881158
- 佐々木正明『「動物の権利」運動の正体』PHP研究所〈PHP新書1309〉、2022年5月。ISBN 9784569846989
- 井上太一『動物倫理の最前線:批判的動物研究とは何か』人文書院、2022年5月。ISBN 9784409031155
- 森映子『ヴィーガン探訪:肉も魚もハチミツも食べない生き方』KADOKAWA〈角川新書〉、2023年1月。ISBN 9784040824178
菜食主義とヴィーガニズム
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