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人間の性

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人間の性(にんげんのせい)あるいはセクシュアリティ: human sexuality)とは、人間における性的本能の充足に関係する行動や性的振る舞いの総体を指す。

人間の性は多様な位相を備え、それらは時として相互に矛盾することがある。生殖健康快楽などの位相で、葛藤が起こりえる。

また、人間関係社会法律道徳や、宗教禁忌などの位相においても、性をめぐって葛藤が生じることがある。

人間の性存在性を研究し、またその障害の克服について研究する科学性科学である。

概説

エロース(愛)とプシューケー(心)
François GÉRARD (1770-1837)

人間の性存在性(セクシュアリティ)とは、人間における性的な感覚感情の表現様式、人間同士の性を介しての親交、またを通じてのアイデンティティの表現や、更に、性の影響を受けたり、性に基づく人間存在の表現様式を意味する。

人間の性には、非常に多数の様態が存在する。人間の性存在性には、性と人間の性的行動に関する、生理学的、心理学的、社会的、文化的政治的、そして霊性または宗教的な位相を含めて、広範囲な行動とプロセスが包摂される。哲学や、わけても倫理学、そして道徳性の研究が、神学での問題提起も含めて、人間の性の主題を扱う。

いずれの時代においても、文化においても、文学そして美術を含む芸術一般、加えて風俗サブカルチャーが、当該社会の人間の性に関する把握や見解の実質的ありようを提示して来た。ほとんどの社会法的権力において、どのような性的行動が許容されるのかに関する法的規範が存在する。人間の性の内実は、世界中の文化と地理的地域を横断して変動し、歴史を通じて絶え間なく変化している。

性の諸側面

心理学的な側面

人間の性は、妊娠期間のあいだ、胎児の発達においてホルモンの変化の影響を受ける。人間の性の表現様式は、大きく遺伝学的な素地に基づいていると主張するのが多数意見である。一方、人間の性は、人それぞれ、その成長の初期段階での実地の個人的経験に基づき、このようにして性の好み・嗜好が決まると主張する意見もある。あまり分析的ではないアプローチでは、両方の要因が相互に役割を果たしているのだろうと認めている人間性心理学ジェンダーでは、特定の形の性的表現が可能となる。

性機能障害は、人の性的機能が損傷を受けるような様々な生物学的状況や環境に言及している。このような障害の現れは、リビドーの減少、または遂行能力の限界の形式で起こることがありえる。男性・女性双方が、リビドーの後退の影響を被ることがありえ、その原因としては、ストレス、親密さの喪失、精神的な動揺が考えられ、また、その他の心理学的な状態から派生することがありえる。

性的遂行能力の限界は、勃起不全の形で、しばしば男性の性的能力に影響を及ぼすことがある。この原因としては、心血管疾病を含む、様々な形の疾病の病理からもたらされることがある。心血管疾病は、人体の様々な部位への血流の供給と共に、陰茎への血流の減少をもたらすこともある。

社会的な側面

人間の性はまた、その行動に関する暗黙のルールで規制されるか、またそのままの状態で、人間の社会的生活の一部として理解できる。このようにして、人間の性は社会のノルム(規範)に影響を及ぼし、また社会はそれに呼応して、人間の性の表現可能性の様態に影響を及ぼすと、主張されるマスメディアの発達によって、映画宣伝などを通じて、人間の性は、我々がそのうちで生きる環境のありように対し、より大きな決定力を有するようになったとさえ言える。ある人々は、人間の性を(しばしば、ステレオタイプへと)純化され、その後、再度商業化された形態で表現されるものとして見ている。

性役割は、個の社会環境によって影響される人間の性の位相(アスペクト)の一つである。異なる社会環境においては、人々がそれぞれのと関連付ける固有の特性が存在しえるのであり、それは特定のタイプのドレスであったり、色彩、行動様式であったりする。

社会と政治

性教育

性教育は、教育の分野でのに関する話題や主題の導入である。欧米諸国のほぼ大半で、性教育が実施されてはいるが、国によってその性格は極端に異なっている。オーストラリア欧州の大部分の国では、いわゆる「年齢相応」の性教育は、就学前に開始されることもある。これに対し、米国を代表とする他の国では、性教育は10代になってから実施され、時には、10代後期になって初めて実施される。性教育は、「赤ちゃんはどこから来るの?」から始まって、避妊禁欲ディベートを通じて、自省、性病の兆候、そして性的関係の社会的及び心理学的な含意(暗黙の意味)に至るまでの範囲の主題を扱う

文化的及び精神医学的側面

大多数の個人における性的行動のありようは、その個人が生きる文化におけるノルム(規範)によって類型的に規定されるか、または強く影響される。このような規範の実例は、結婚前の性交渉に関する禁止規定や、同性愛的なセクシュアリティやその他の類例な性的活動に対する否定規定である。この理由は、個人の属する文化において支配的な宗教道徳が、このような行動を禁止するためである(文化における禁忌を参照)。しばしば、このような文化的に誘導された性的行動は、個人の自然な性的傾向と矛盾することがある。

文化規範に反した人間の性を表現したいと望む者は、様々な形の迫害や抑圧によって、主流文化(メイン・カルチャー)の内部にあって下位文化サブカルチャー)を形成することを強いられる。

性的指向・性的嗜好

人間は、個々人で定まっているある規準に基づいて、特定の人間動物物体、また何らかの振る舞いに、性的に強く引きつけられ魅惑される。対象の性別年齢、外見や特定の様態が規準となって、このようなことが起こる。人が何に魅惑されるか、一般に類型が存在しており、これを狭義で性的指向(英:sexual orientation、性指向とも)または、広義で、性的嗜好(英:sexual preference、性嗜好とも)と呼ぶ

基本的な性的指向

近代社会で多数派とされる性的指向は、異性愛、すなわち、自己の性別と反対の性の人への性的魅惑である。異性愛は、ごく最近まで、そして場合によっては現代でも、多数の社会において、多数派であり、人間の性の規範の基盤を提供した。異性愛以外の性指向や性嗜好は、病気であるか倒錯であると見なされる社会もあった。この基準に立たない人は、しばしば偏見や迫害の犠牲者となった。とはいえ、同時に少なからぬ社会が、そして建前では異性愛のみを規範とした社会であっても、同性愛者や両性愛者の存在を許容していた。少年愛の項目を見ると、現在では同性愛と見なされる性的関係が、文化制度において認められていた社会の存在が分かる。

多くの社会において、自己の性別と同等の性の人への性的魅惑、つまり同性愛が、異性愛と同様に正常なものだという考えが、20世紀半ば以降、ますます一般化して来ている。この延長で、男女両方の性の人への魅惑、すなわち両性愛もまた承認され、市民権を獲得してきている。

  • 異性愛 -「ヘテロセクシュアリティ(英:Heterosexuality)」
  • 同性愛 -「ホモセクシュアリティ(英:Homosexuality)」
    • 男性同性愛者 -「ゲイ(英:Gay)」
    • 女性同性愛者 -「レズビアン(英:Lesbian)」
  • 両性愛 -「バイセクシュアリティ(英:Bisexuality)」
  • 全性愛 - 「パンセクシュアル」(英:Pansexual)
  • 無性愛 -「アセクシュアリティ(英:Asexuality)」

その他の指向と性的嗜好

性的嗜好は、様々な理由よりして社会的に受容されることが困難である。このような性嗜好は、一般に性的倒錯に分類される。ある種の嗜好は、現在の西欧においては、性的異常、または変態性欲と見なされる。少なくとも西欧では、また世界の多くの国でも、法に従う限り、性的異常と見なされる嗜好を行為に移すとき、それは犯罪と見なされうる。

性的倒錯を参照。

性同一性

ヘルマプロディトス(両性具有),ルーヴル

性同一性(英:Gender identity、日本語では「性自認」とも)は性的自己同一性であり、性別としての自己同一性である。

主体における典型的な生物的性別は、男性と女性であり、それ以外に染色体異常を主因とする、様々な生物的には不全性のある間性が存在する。社会的・文化的な性別であるジェンダーも、男性と女性に大きく二分されるが、主体の心理的な自己認知においては、もっと多様な性同一性が存在する可能性がある。「間性」、「中性」、「無性」、「両性」などの他に、「超性」なども想定される

性的指向の場合、主体と対象の性別における同性異性か、両性か、またはいずれでもないという形に分類されるが、純粋に対象(性や性愛の相手)の性別を考慮すれば、生物的なレベルでも、性対象の性別について、男性、女性の区別が存在し得る。主体の性別に関係せず、性対象の性別に基づく、男性愛、女性愛の概念が想定可能である。更に、相手のジェンダーをも考慮に入れると、人間相互の性的関係・性的親交は、もっと複雑なパターンが存在することになる

出生時に割り当てられた性別と自身の性同一性が異なる人を「トランスジェンダー」、同じ人を「シスジェンダー」と呼ぶ。

性をめぐる問題

産児制限

出産を人為的に防ぐことを産児制限といい、家族を主体にした表現ないし婉曲表現として家族計画も用いられる。産児制限の生物学的な手段としては主に避妊と人工妊娠中絶があるが、中でも有効で安全な避妊法が普及することは、生殖とを分離するための必要条件でもある。

性感染症

性行為を通じて感染する疾病英語では、「Sexually transmitted disease」で、略語として、「STD」または「STI」という。フランス語では、「Maladie sexuellement transmissible」で、略語は「MST」であるが、最近は「IST」である(「 I 」は、「Infection」の頭文字である)。

性関連商業

脚注

関連項目

参考書籍

  • ミシェル・フーコー 『知への意志-性の歴史 1 』 La volonté de savoir. Histoire de la sexualité, I (1976)
  • ミシェル・フーコー 『快楽の活用-性の歴史 2 』 L'usage des plaisirs. Histoire de la sexualité, II (1984)
  • ミシェル・フーコー 『自己への配慮-性の歴史 3 』 Le souci de soi. Histoire de la sexualité, III (1984)

外部リンク

以下の外部リンクは英語(外国語)サイトです。

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