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便秘
便秘 | |
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エックス線画像で見る若い子供の便秘。(円は大便の問題のエリアを表している)
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分類および外部参照情報 | |
診療科・ 学術分野 |
消化器学 |
ICD-10 | K59.0 |
ICD-9-CM | 564.0 |
DiseasesDB | 3080 |
MedlinePlus | 003125 |
eMedicine | med/2833 |
MeSH | D003248 |
GeneReviews |
便秘(べんぴ、英: constipation)とは、便(大便)の排泄が困難になっている状態の総称である。
概説
定義と診断(便秘と便秘でないものの線引き)
かつて、医学的には3日以上排便がない状態のことを指したといわれるが、明確な定義はなく、症状が患者の主観によるため、定量化が難しいこともあり、定義は学会や国により異なっていた。日本消化器病学会の定義では「便秘とは、排便の回数や便量が減ること」とされていた。
なお「便秘」という言葉は(もともとは、医学用語というわけでもなく)一般の人も広く使う平易な言葉であり、一般の人々(患者)が使う「便秘」という言葉は、たとえば「便秘で困っています」と言っていても1日おきに排便している状態を指している患者がいる一方で、1週間に1 - 2回しか排便しないのに自分のことを便秘とは思っていない患者もいて、患者ひとりひとりが使う「便秘」という言葉の意味に大きなずれがあり、排便のどのポイント(点)に焦点をあてて「便秘」と言っているのか、全然はっきりしない言葉である。たとえば「下痢」という言葉のほうは「水っぽい便」だという意味で、患者と医師の間で症状を具体的に伝えられる「共通言語」として使えるのに対して、「便秘」という言葉は、患者の口から出た時、医療関係者の側から見るとそれがどのような症状なのかはっきりしておらず、どのような意味なのか注意を要する言葉(あれこれ質問をして、具体的な症状をあれこれ尋ねないと、どの方向性の意味で言っているのか、全然はっきりしない言葉)である。
2000年に米国消化器学会のコンセンサス会議で作成された便秘の診断基準では、「下腹部膨満感」「排ガス量」「排便回数」「残便感」「排便時の肛門の痛み」「(便の)量」「便の状態」を複合的に捉えたものに変更された。これは、多くの患者が臨床上は正常な排便頻度(毎日)であっても「下腹部膨満感」「排便時のいきみ」「便の硬さ」「残便感」などを訴えるため、排便回数だけで便秘を評価するのは不十分と考えたためである。3日以上の排便間隔と残便感を基準とし「排便の頻度が週2回以下で、便が硬く、排便困難、残便感がある状態」や「3日以上排便がない状態、または毎日排便があっても残便感がある状態」と考える専門家もある。一方、本人に自覚症状がなくても、腹部X線画像診断により便の滞留を認めた場合は、便秘と診断される。
客観的に評価・判定するための「ブリストル・スケール」というものも開発されている。
下の「#ブリストル・スケールによる客観的な評価」で解説。
自覚症状
自覚症状としては、血便、腹痛、吐き気、直腸残便感、腹部膨満感、下腹部痛、食欲不振、めまい等のほか、肩や背中に放散痛を伴う場合がある。2017年10月には、日本消化器病学会により「慢性便秘症診療ガイドライン2017」が作成された。
分類
まず一般的に、排便回数が減る(排便が週3回以下などに減る)「排便回数減少型の便秘」と、排便回数は減らないが排便に苦労する「排便困難型の便秘」に大別することができる。
細かな医学的な分類、特に機能性便秘の分類については「#機能性便秘の分類」で詳しく解説する。
なお現在使用されていない、医学的な、だが古い分類手法では機能性便秘を、ストレスや食事内容の変化が原因となる「一過性便秘」と慢性的な「弛緩性便秘」「痙攣性便秘」「直腸性便秘」に分類していた。(この分類法はすでに古くなっている)
疫学(統計)
2019年(令和元年)の国民生活基礎調査によれば、便秘の有訴者率は、34.8%(男性25.4%、女性43.7%)であるが、65歳以上になると68.6%に急増(男性64.1%、女性72.3%)する。便秘があると慢性腎臓病や末期腎不全になりやすいとの報告がある。
(簡潔に言えば)「6人に1人はなる」といわれる。
統計的にいうと、男性より女性が便秘になりやすい。いくつか理由がある。→#便秘と女性
原因
原因にはさまざまなものがある。人それぞれである。医学者などは原因を「機能性」と「器質性」と(医学用語的に)大分類することも行う。
普通の人々の言葉で説明すると、普段から水分の摂取量が極端に少ない生活をしている人が大腸内の便の「水分量」少なく便秘になる場合もある。またそうでない人でも数日間水分摂取が極端に減ると、突然排便が困難になる場合もある。普段は全く便秘ではなく毎日快適に排便しているのに、航空機や列車に長時間乗るような旅行・観光・出張をする時に限って(宿泊先の宿・ホテルで)必ず便秘になる、という人もいる(特に女性では顕著)。食生活(食べる食品の種類)や食べる頻度を変更したら便秘になったが、食生活をもとに戻したら便秘が治ったという人もいる。また腫瘍の増殖に伴う消化管の狭窄や閉塞などの「器質的な要因」によって起きる便の通過障害もある。成人の主な便秘の原因の(医学的な)分類は「#主な原因(成人)」の節で解説する。
ブリストル・スケールによる客観的な評価
ブリストル・スケール(排便スケール)を便の硬さ・大きさの評価に使用し、排便記録を付けると客観的な評価が可能となる。
ブリストル・スケール | 状態 | 解説 |
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1 コロコロ便 | 硬くてコロコロのウサギ糞状の便 | |
2 硬い便 | ソーセージ状ではあるが硬い便 | |
3 やや硬い便 | 表面にひび割れのあるソーセージ状の便 | |
4 普通便 | 表面がなめらかで柔らかいソーセージ状、 あるいは蛇のようなとぐろを巻く便 |
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5 やや柔らかい便 | はっきりとしたシワのある半分固形 | |
6 泥状便 | 境界がほぐれて、フニャフニャの不定形の小片便、泥状の便 | |
7 水様便 | 水様で、固形物を含まない液体状の便 |
主な原因(成人)
急性と慢性に分類される。原因は多岐に渡り、急性の場合は医療機関での診断と治療が必要とされる。特に、出血や狭窄を伴う場合は生命に関わる重篤な機転に及ぶ可能性がある。
分類 | 解説 | ||
---|---|---|---|
便秘 | |||
急性 | 機能性 | 消化管に異常はないのに機能低下を起こして回数や量が減少 | |
器質性 | 消化管そのものの病変が原因 | ||
慢性 | 機能性便秘 腸過敏性症候群を含む |
腸過敏性症候群、生活習慣 | |
症候性(二次性) | 腫瘍、憩室の形成と進行に伴う症状 | ||
薬剤性 | 薬物中毒、重金属中毒、薬の副作用 | ||
器質性 | 消化管そのものの病変が原因 |
発症機序から見た分類
- 特発性
- 弛緩性便秘:加齢による筋力低下。
- 痙攣性便秘
- 神経性
- 末梢神経:ヒルシュスプルング病、シャーガス病
- 中枢神経:パーキンソン症候群、多発性硬化症、脊髄損傷
- 機械性閉塞 (イレウス)
- 内分泌疾患、代謝異常
- 筋異常性疾患
- 代謝性疾患
- 薬剤性
-
虚血(消化管への血流減少)
- 腹部動脈瘤、
- その他
症状
排便の停止や便量の減少を主症状として、腸の閉塞性疾患が原因になっている場合では、呼気の便臭、変形した便、血便、便潜血を伴うことがある。また、腹痛、吐き気、直腸残便感、腹部膨満感、下腹部痛、食欲不振、めまい、肩や背中の放散痛などを伴うことがある。
診断
問診と身体診察を行い、消化管そのものの病変が原因となっている器質性便秘や症候性便秘の鑑別を行う。腹部レントゲン撮影は、大腸の状態を迅速かつ客観的に見ることが出来、侵襲の少ない検査で最初に選択される。特に「最近の状況」「大腸癌の家族歴」「体重の急激な変化」「直腸出血」「50歳以上」のいずれかに該当し、器質性の疑いが考えられる場合は大腸内視鏡検査が選択される。
また、薬剤性便秘を起こす可能性のある薬剤を中止し、経過観察を行うこともある。治療抵抗性の便秘に対しては注腸造影による腸管形態の確認、腸管蠕動遅延性便秘の診断が行われる。さらに肛門直腸内圧検査、直腸肛門反射の確認をしヒルシュスプルング病、肛門挙筋群症候群の診断を行う。器質性疾患や代謝性疾患を認めた場合は、該当する疾患の治療が行われる。
前述の臨床的な異常や薬剤歴を認めない場合、機能性便秘の可能性が高くなる。機能性便秘の場合、「機能性便秘の診断基準」「便秘スコア(CSS)」を利用し細分類が行われる。
- ROME IIIによる機能性便秘の診断基準
-
- 以下の2つの症状がある。
a. 排便時の25%超がいきむ。
b. 排便の25%超が塊であったり硬い。
c. 排便時25%超で残便感がある。
d. 排便の25%超で肛門直腸閉塞感がある。
e. 排便を促すために25%超で用手法を使う。
f. 排便が週3回未満。 - 下剤を使わないのに軟便となることはまれ。
- 過敏性腸症候群の基準を満たさない。
- 以下の2つの症状がある。
0 | 1 | 2 | 3 | 4 | |
---|---|---|---|---|---|
排便回数 | 3回以上/週 | 2回/週 | 1回/週 | 1回未満/週 | 1回未満/月 |
排便困難:便を出すのに苦痛を伴う | なし | まれに | ときどき | たいてい | いつも |
残便感 | なし | まれに | ときどき | たいてい | いつも |
腹痛 | なし | まれに | ときどき | たいてい | いつも |
排便に要する時間 | 5分未満 | 5〜10分 | 10〜20分 | 20〜30分 | 30分以上 |
排便の補助の有無 | なし | 下剤 | 摘便or浣腸 | ― | ― |
トイレに行っても便が出なかった回数/24時間 | 0 | 1〜3 | 3〜6 | 6〜9 | 10回以上 |
排便障害の病悩期間(年) | 0 | 1〜5 | 5〜10 | 10〜20 | 20年以上 |
まれに:1回/月未満、ときどき:1回/月以上だが1回/週未満、いつも:1回/日以上、たいてい:1回/週以上だが1回/日未満
機能性便秘の分類
機能性(慢性)便秘は、「慢性便秘症診療ガイドライン2017」で下記のように定義された。正確な判定のためには、バリウム粒の検査薬を服用し数日後に腹部X線検査を実施する。
- 排便回数や排便量が少ないために糞便が大腸内に滞留する。
- 回数減少型
- 直腸内にある糞便を快適に排出できない。
- 排便困難型
- 器質性便排出障害
- 直腸肛門反射が減弱(浣腸の乱用や肛門内異物挿入など)
- 直腸脱、直腸瘤など(必要が有れば外科手術)
かつては「弛緩性便秘」「痙攣性便秘」「直腸性便秘」に分類していた。
治療
症状の訴えがあっても本人が苦痛を感じておらず、また肛門疾患などの合併症がなければ治療の必要はない。急性症状の場合、外科的に閉塞の原因を取り除く。器質性便秘、症候性便秘、薬剤性便秘も同様に対症療法を中心に原因を取り除く。
形質的・器質的疾患を有している場合は疾患に対応する治療が行われる。例えば過敏性腸症候群では、「過敏性腸症候群の診断・治療ガイドライン」が策定されている。
内服薬剤
腸内細菌叢を正常化させるため、瀉下薬(便秘薬)と乳酸菌製剤が併用されることもある。
治療例
- 第一選択
- 追加処方
- 周辺症状の治療
- 漢方薬では大黄甘草湯、乙字湯、加味逍遙散、麻子仁丸、防風通聖散、大建中湯、桃核承気湯、センナダイオウ錠などが用いられる。鎮静作用のある甘草が配合されていセンナダイオウ錠は、生薬そのままで頑固な便秘に作用する。
瀉下薬による副作用として、塩類下剤では高マグネシウム血症、刺激性下剤は習慣性になりやすく、薬剤に対する感受性が低下し、便秘薬を服用しないと排便が行われなくなる便秘薬依存症や腸管粘膜障害などがある。
-
酸化マグネシウム
- 高齢者、腎機能異常患者には使用しない。プロトンポンプ阻害薬、骨粗鬆症治療薬との併用に注意を要する薬剤が多数ある。高マグネシウム血症防止のため、血液検査で定期的な血清マグネシウム値の測定が必要である。
- センノシド
- ピコスルファート
- ルビプロストン
- リナクロチド
-
エロビキシバット
- 妊婦は禁忌。
浣腸
浣腸にはグリセリンが入っており、これらの直腸への刺激で排泄を促す。刺激が強く急激に催し、また悪寒や吐き気などといった症状を誘発させる場合もある。グリセリン浣腸では、我慢しきれずすぐに出す使い方をした場合は、後述するような体質によっても違い、便を出し切ることができず不快感が残る場合もある。
完全に腸内の便を取り除くのを望む場合には、摘便や腸洗浄と呼ばれる処置もある。腸洗浄とは、ぬるま湯(生理食塩水を使う場合もある)を注入し、それらの湯と一緒に排出する。注入時に無理な圧力を掛けると、直腸穿孔を起こすおそれもある。したがって専用の器具が利用され、また市販もされている。基本的には専門の医師による指導が望ましい。また、こちらは専用の器具や温度管理などで手間が掛かるが、注入量が多く刺激が少ないため、腹痛などの問題が起きにくい体験談も聞かれる。
民間療法の範疇としては、ぬるま湯や生理食塩水以外のもの(コーヒーなど)を使うという話も聞かれるが、医学的に根拠はない。
養生法
原因のはっきりしているものは、それに合った治療をするが、常習性便秘の養生法は以下の通り。
- 毎日1回、決まった時間にトイレに行く習慣をつける。便意がなくても、朝に1回はトイレに必ず行き、排便をしようと努力する。しかし、本当に出そうもないのに長時間座り続けるのは良くない。
- 積極的に体操や水泳などの運動に心がけ、腹筋を鍛える。腹部のマッサージも効果的。
- 朝、起き抜けに白湯や冷たい水・牛乳を飲むのも良い。食物繊維を積極的にとり、1日3食を心がける。
排便姿勢
排便時の座位姿勢は、新聞・雑誌を読む時のような直立姿勢はふさわしくない、直腸肛門角が開くよう少し前傾姿勢で、たとえるならロダンの彫刻『考える人』のような姿勢が良いとされる。さらに、腹筋に力が入りやすいように踵を少し上げたり、脇腹を両手で押さたりして腹圧を与える方法もある。また、和式便器における蹲踞のようなもっと前傾した姿勢が良いとする指摘がある。
機能性便秘予防
機能性便秘の場合には食べ物、飲み物、運動の程度を変えることは、便秘を改善することになる。なお、水分の摂取量を増加しても尿量が増えるだけで大便の軟らかさが変わることはない。但し、朝一番に冷たい水を飲んだ場合は冷感刺激によって腸管運動が活発化され排便が促されることもある。
食物繊維の摂取
ビタミンの摂取
- ビタミンB1
- 自律神経を刺激され、腸の働きが調整される。玄米、ごま、豚肉など
- ビタミンE
- 腸管の血液循環を活発にし腸管の働きを良くする。植物油、落花生、卵黄など。
乳酸菌が入った食品
腸内環境を改善する。味噌、ヨーグルト、ぬか漬け等。
十分な運動
運動不足は腸の働きを低下させる。よって、規則正しい運動で消化器を活発にすることが推奨される。運動は軽いものでも十分で、毎日20分から30分の歩行でよい。また、軽い腹筋運動やストレッチも効果がある。手を使って腹をさすり、腸の蠕動運動を促すことも効果がある(「腸もみ」「腸マッサージ」などと呼ばれる)。
十分な排便の時間
便意を無視しないようにする。生活習慣において毎日決まった時間に便意を催す者もいるが、そうでない人は、便意を催しやすい時間帯を排泄に割り振る生活上の配慮も効果がある。朝食前は体温が低く、身体全体の活動も活発でないため排泄には向かない。
便秘と女性
便秘は高齢者に多く見られ、若年層では男性よりも女性に多い。これには科学的な根拠があり、それは社会的なものから、生活習慣的なもの、そして女性の身体構造に大きく関与する。
- 男性に比べ、排便に必要な括約筋、腹筋の力が弱い。
- 男性は膀胱が大きいので、普段からたっぷり水分補給ができるが、女性の場合は、男性に比べ膀胱の容量が小さい(膀胱の隣に子宮があり、やや圧迫されている。解剖図で観察してもわかるが、明らかに膀胱の内部空間が男性より狭い)ので、頻繁にトイレに行くわずらわしさを避けるために(また女性は特に「トイレに頻繁に行く姿を人に見られるのは避けたい」という心理が強く働くので)水分摂取を少なめにすることが習慣・習性になっていることが多く、結果として大腸内の便の「水分量」が減る。
- 女性の場合は「もし水分をたっぷりとると必然的に尿意を催すが、尿意を催した時に周囲にトイレがないと、非常に困った状況になる」という恐怖心を常に抱いて生きている。男性の場合は、ズボンや下着を脱がず「立ち小便」ができ排尿できるが、女性の場合はもしトイレがない状態だとしゃがんで、尻をむき出しにして小便をすることになるので、女性は「尿意を催した時に近くにトイレがない状態」を内心、非常に恐れる。その結果しばしば、普段から用心して「水分はできるだけ少なめに取る」という習性・習慣になり、大腸内の便の「水分量」が少ない傾向になりがちで便秘が多くなる。特に慣れない場所に行く時は、「そもそも 行き先にトイレがあるのかないのかさっぱりわからないので、尿意を催した時のことがすごく不安」「具体的にどこにあるのか、どう行けばいいのか、とっさにわからないので不安」なので、女性は用心して水分補給が減る。結果として大腸内の水分量が減り、便秘になる。
- 男性に比べ、外や人前で便意を催した時などでも、気恥ずかしさなどの理由で排便を躊躇、我慢する傾向がある。それによって排便のリズムが狂い、排便反射が鈍くなる。したがって、便が滞留しても便意を感じなくなる。
- 女性に多いダイエットも大きく原因している。食べないことによって腸の蠕動(ぜんどう)運動がおろそかになる。
- 女性特有の黄体ホルモンであるプロゲステロンが体内に水分を蓄積しようとする。その結果、排便に十分な水分が補給されなくなる(このホルモンは月経、妊娠などの時に多く分泌され、そのためにその時期の便秘が多くなる)。さらにこのホルモンは括約筋を収縮させる働きがあるため、排泄を一層困難にさせる。
- 女性は骨盤が広い。そこに腸が下垂しやすくなり、腸が不安定になる。また、下半身に脂肪がたまりやすくなるために、血液も骨盤に滞りがちになる。そのため腸の働きが弱まりやすい。
- 上記と同様の理由で腸管の形がいびつになりやすく、そこに硬い便などが留まりやすい。
- ストレスによる過敏性腸症候群などにより、歪になった腸が閉塞し、そこに便が滞る。
- 便秘薬など薬の濫用。一例として、ビサコジル製剤は腸の蠕動を促進させるものであるが、何度もそれに頼ると身体が慣れ、反応が鈍くなる。それだけでなく、自立的な蠕動運動を阻害するために、薬に頼らないと排便が困難になるような慢性的な便秘に陥りやすい。その他、浣腸や下剤の濫用も、自然な排泄や排便サイクルを乱す恐れがあるので、濫用すべきではない。
などの理由が挙げられており、便秘治療薬の購入者は女性が圧倒的に多い(パッケージにピンクが多いのは女性をターゲットにしているため)。その一方、男性は、高齢者以外は便秘で悩まされるケースは少ない。だが、男性は便秘より下痢に悩まされている傾向にある。これも同様に、食習慣(酒、油物、刺激物を好む傾向にあるが、これらは腸の動きを活発化させたり、腸壁を滑らかにさせたりする作用がある)や外的ストレスに対する脆弱性(前述の過敏性腸症候群は、男性だと下痢になりがちである)、太い腸管など身体の構造に起因するものである。
- 徳井教孝、三成由美、便秘の定義と便秘体質 『中村学園大学薬膳科学研究所研究紀要』 2012年 5号 p.49-54, ISSN 1882-9384
- 穂苅量太、三浦総一郎、機能性下痢や機能性便秘へのアプローチ―診断特にIBSとの鑑別,一般的治療法― 『日本内科学会雑誌』 Vol.102 (2013) No.1 p.77-82, doi:10.2169/naika.102.77
- 大村節子、栄養指導による慢性便秘患者の栄養素摂取量変化 『栄養学雑誌』 Vol.53 (1995) No.3 P199-207, doi:10.5264/eiyogakuzashi.53.199
脚注
関連項目
外部リンク
- 便秘 - 一般社団法人日本臨床内科医会
- 便秘 - MSDマニュアル
- 細田誠弥、生活習慣と排便異常 順天堂医学 Vol.50 (2004) No.4 p.330-337
- 平塚秀雄、IV女性と便秘 日本大腸肛門病学会雑誌 Vol.43 (1990) No.6 P1070-1076
- 『便秘』 - コトバンク
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