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反露
反露(はんろ)とは、ロシアあるいはロシア人、ロシア文化などに対して抱かれる反感意識や偏見、不信感や敵対的、批判的態度を指す。ロシア恐怖症(ルソフォビア)とも。対義語は親露。ロシアは長らくの間、ソビエト連邦の実質的盟主であるロシア・ソビエト連邦社会主義共和国として存在していたため、反ソの概念と重なる部分もある。
概要
国によってはしばしば反共主義(反ボリシェヴィキ)や反ソ主義と結びついているが、これらは完全に一致する概念ではない。ロシア人の中にも、白系ロシア人に代表されるように反ボリシェヴィストは多数存在し、それに対するソビエト連邦は反露主義のひとつである反ロシア民族主義の政策を基本としていた。
2022年にはロシアのウクライナ侵攻によって、被侵略国のウクライナは言うまでもなく、世界各地で対露感情が急激に悪化しており、ロシアから離れたロシア語話者は多くの嫌がらせ、あからさまな敵意、差別を受けている。
ロシアへの影響
ロシアにとってウクライナやジョージアなどの旧ソ連地域に反露国家が成立することは脅威であり、NATO加盟に繋がるのを恐れている。
反露組織
GUAM - ジョージア、ウクライナ、アゼルバイジャン、モルドバが加盟している組織。領土問題や国家承認問題でロシアと対立している。
各国における反露
全般的にはNATO加盟国は反露国家であるともいわれる。同じくNATOに加盟しているブルガリアは比較的親露的であるとされるが、同国が2017年にロシアを安全上の脅威として名指しした事例もある。UKUSA協定を結び独自の諜報機関を共有している諸国は反露的である。また、中近東・アラブ世界においてはイランに代表されるようなシーア派諸国は親露的、スンニ派の湾岸諸国は親米国家であることから、反露的な傾向が強い。中南米諸国においては長年の間、「アメリカ合衆国の裏庭」と評されるほど、アメリカが政治的にも経済的にも深い関与を示していた地域であるが、その反動として反米左派政権が樹立した国は親露的な傾向が強くなる。また、旧ソ連地域においても反露傾向の強い民族主義勢力への支援を米国が行ってきたため、それらによって政治勢力の主導権を握った場合はウクライナをはじめとして反露国家へと転換するケースが多い。
旧ソ連地域
ウクライナ
ウクライナでは西部、特にガリツィア地方は世界屈指の強固な反露地域でGUAM加盟国。
ウクライナ西部と中部では親欧米から反露感情が強いとされ、逆に東部はロシアとの交流から親露感情が強いと言われている。
政治的にはクリミア半島(2014年クリミア危機)や東部の親露地域(ドネツク人民共和国、ルガンスク人民共和国を中心としたノヴォロシア人民共和国連邦)を巡ってロシアと対立し、ソ連崩壊後に加盟していた独立国家共同体(CIS)からの脱退を宣言している(CISは正式には認めていない)。
ウクライナの民族主義団体である右派セクターが反露・親米・親欧州を主張し、ロシアやロシア系ウクライナ人を敵視し、ロシアとの強い結びつきやロシア語の公用化に反対している。
2014年クリミア危機の8年後の2022年には、ロシアによるウクライナ侵攻という形で武力衝突に発展し、各国からロシアは制裁を受けるとともに、反露感情が急増している(先述)
ジョージア(グルジア)
ロシア語名の「グルジア(ロシア語表記、Грузия)」としても知られるジョージアはGUAM加盟国であり、国内で独立を主張した南オセチア共和国とアブハジア共和国の親露地域を巡りロシアと対立している。
同国政府は「グルジア(Грузия)」と言う外名の使用を取りやめるよう各国に要請しており、日本政府はこの要請を受けて2015年4月から外名を英語名の「ジョージア(Georgia)」に変更した。
モルドバ
モルドバはGUAM加盟国で沿ドニエストル共和国(親露地域)を巡りロシアと対立している。
アゼルバイジャン
GUAM加盟国の一つである。1990年1月に発生した黒い一月事件や、ナゴルノ・カラバフ戦争でロシアがアルメニア寄りの立場を表明したことが反露感情の主な要因となっている。
エストニア
エストニア国内には多くのロシア系住民(25%)を抱えており、2007年には首都タリンでロシア系による暴動が発生している。
歴史的にはロシア帝国から独立したが、第二次世界大戦後にはソ連に併合されてしまう。これにより独立後の2007年には鎌と槌の使用と掲揚が禁止された。同年のサイバー攻撃(DDoS攻撃)でロシアと対立し、NATOと協力し、ロシアによるサイバーテロ対策に乗り出した他、ロシア軍撤退後は西側諸国との関係を強めている。また旧ソ連構成国の中で、唯一北朝鮮を国家として承認していない。
ラトビア
ラトビア国内には27%のロシア系住民(ラトビア人は62%)を抱えており、ロシア語話者が38%(公用語のラトビア語は58%)で非国民 (ラトビア)のロシア系住民を巡りロシアと対立している。
ロシア語はラトビアでは外国語としては重要視されているが、かつての占領国の言語であるロシア語が幅を利かせている状況はラトビア系住民から脅威とも捉えられており、2012年に行われたロシア語の第二公用語化の国民投票は74.8%の反対多数で否決された。
リトアニア
リトアニアは史的にロシアとの対立が長く、ロシア化の影響を強く受けたこともあり、反露感情が強い国の一つである。歴史的な経緯から、ロシアの軍事力の増大がリトアニアの安全を脅かしているとの意見が根強い。
アルメニア
2015年、ギュムリで第102軍事基地所属のロシア兵がアルメニア人の一家全員を殺害する事件が発生した。過去にもロシア兵が同様の行為を起こしていることもあって、反露感情は強まっている。
アジア・中東
日本
日本における反露感情は明治維新後にある。日露戦争開戦前は恐露であった。1900年(明治33年)、清で発生した義和団の乱で、共に八カ国連合軍として互いに勝利したメンバーであったがロシア帝国の存在を日本は恐れていたという。
日露戦争勝利後の日本は蔑露になった。1918年(大正7年)のシベリア出兵でも、この感情は消えなかった。第二次世界大戦後(冷戦)の日本は西側諸国(第一世界)陣営だったため、東側諸国(第二世界)陣営のソビエト連邦とは相容れない関係だった。
冷戦期の日本の反露・反ソは主にロシア(ソ連)による北方領土実効支配の批判で、8月9日の反ロデー(旧反ソデー)では主に北方領土に関係する街宣活動をする街宣右翼が多数存在する(街宣車に「北方領土奪還」といったスローガンを掲げる団体もある)。北方領土の日(2月7日)に行なわれた。ソ連時代はソ連が共産主義国家でもあった事から反共主義も結びついていた。
経済面では日本の高度経済成長によって、ソビエト連邦のGDPを上回り、経済的にソビエト連邦を大きく見下す日本人が増加した。1991年(平成3年)のソビエト連邦の崩壊によって、ロシアに対して脅威と感じる日本人は以前より減少したものの、ロシアによるウクライナ侵攻以降は再び脅威視されている。
2011年(平成23年)2月7日の北方領土の日にて、北方領土占領に抗議した右翼団体が在日ロシア大使館前でロシア国旗を破る行為が行われた。
2015年(平成27年)、日本国政府はウクライナなど旧ソ連4カ国で構成する「民主主義と経済発展のための機構GUAM」との実務者会合を東京都内で開催した。
2022年(令和3年)、ロシアがウクライナに全面的に軍事侵攻を行ったため、ウクライナに対して支援を行い、ロシアと関連の疑いのあるベラルーシに資産凍結など大規模な経済制裁を行った。
2023年(令和4年)、ロシアのパノフ元駐日大使はウクライナ侵攻を巡り日本の反露感情は、ソ連時代よりも強いと発言した。事実、2023年の内閣府世論調査ではロシアに親しみを感じると回答した割合が過去最低の5%に落ち込み、昭和53年の調査開始以来最低を記録した。
以上のことから日本では右派に反露感情が強いと言える。ただし、北方領土問題について日本共産党が千島列島全域返還論を主張しているように、左派にも過去の歴史的経緯からの反露的姿勢は存在する。
大韓民国
韓国では、反共主義の影響でロシアが北朝鮮や中国の協力国として見られ、強い嫌悪感や反露主義が存在する。
イスラエル
ユダヤ人たちは基本的には、ロシアに対しては「憎しみの念」や、強い「疑いの念」を抱いている。
ユダヤ人たちは二千五百年ほど前にローマ帝国に侵略され自分たちの国を失ってしまい、その地を逃れてディアスポラで世界中に広まったわけだが、移動した先々でひどい差別にあい、新天地を求めて移動を繰り返すうちに、実にその半数ほどが帝政ロシアにたどり着いた。19世紀初頭時点で、ロシアには519万人ほどのユダヤ人が暮らしていた。これは、世界の全ユダヤ人のおよそ半分がロシアに暮らしていた、ということになる。そんなユダヤ人をロシア人たちは、概して言うと歓迎せず、たびたびユダヤ人を差別し、迫害してきた歴史がある。ロシア人全体のユダヤ人に対する差別意識はかなり強いものがある。ロシア政府も同様で、ユダヤ人に対して差別的な措置をとってきた。ユダヤ人たちは、ユダヤ人だと知られれば、理由も明かされず無言で露骨に差別された。そんな状態なので、たいていロシアの社会のさまざまな組織の中堅以上のメンバーにはなれず、どんな頭脳明晰で成績優秀なユダヤ人でも、成績で学年1位をとりつづけたようなユダヤ人も、就職試験では全て落とされてしまう、などということが一般的だった。やっとの思いで組織に入っても、差別的な扱いを受けて、たとえば死ぬ確率が高い危険な労働を強制されたり、昔のシベリアのような、行けばかなりの確率で死んでしまうような土地で勤務させられるなど、さまざまな形の差別・いやがらせを受け、苦しんだ。それでも他に行き場がなかったロシア(ソヴィエト)のユダヤ人たちは、生きるために「しかたなく」ロシア(ソヴィエト)に住み続けた。ロシアが嫌いでロシアを離れたくても、他に行く場所も無かったから、しかたなく暮らしていたのである。一部のユダヤ人は、自分がユダヤ人であることを必死に隠しつつうまく振舞って、なんとかロシア人社会の中堅どころまで食い込むことはあったが、いつ突然組織のロシア人たちにバレてしまい、「あからさまな差別のスイッチ」が入って、リンチ同然の仕打ちをうけるか分からず、ロシアに暮らすユダヤ人たちは皆、気が休まらなかった。そんな差別を受け続けていれば、当然ユダヤ人の一部も、ロシア政府やロシア人全般に対して強い憎しみを抱くようになるわけであり、ロシアの中で反政府運動に参加したり、生涯をささげるようなユダヤ人もいた。それがますますロシア政府のユダヤ人に対する偏見や弾圧を強める結果になった。
長い闘いを経て1948年にイスラエルが建国され、二千年ぶりにユダヤ人たちは自分たちの国を持つことができたわけで、全世界に散らばったユダヤ人のイスラエルへの大量移住が開始された。ロシアに生きていたユダヤ人たちの多くはロシア人やロシア政府を憎み、ロシアで暮らすことに「うんざり」していたので、ユダヤ人がユダヤ人として正々堂々と差別されずに生きられるイスラエルができたのだから、当然、相当な割合のソヴィエト連邦在住ユダヤ人がイスラエルへの移住を望んだ。「(イスラエルへの)帰還法」に基づいて、1970年から現在までで、およそ200万人のユダヤ人(やその配偶者など)がイスラエルに移住(帰還)した。(本当はソヴィエト(ロシア)のことは嫌いでも、離れて移住するとなると簡単ではない人々も多かった。もうすでに高齢になりすぎていて「この年齢で、いまさら住む環境を大きく変えるのは辛すぎる」「もう年老いて頭も鈍り、いまさらヘブライ語を学べない」といった人は、イスラエルへの帰還をあきらめる選択をしがちだった。また一部のユダヤ人は、ロシア社会にかなりうまく「まぎれ」こんで、そこに基盤をつくれていたので、ソヴィエト(ロシア)に残る決断をした。)というわけで、イスラエルに移住したユダヤ人たちは、基本的にはロシアのことを嫌っている。長年に渡り、自分たちユダヤ人がロシアでロシア人からどんな仕打ちを受けてきたのか、忘れておらず、その迫害の歴史を語り継いでいるからである。ユダヤ人は、「記憶」の民であり、自分たちが経験したことを子孫に語り継ぎ書き残す。子孫たちもユダヤの先祖たちが経験したことを読み、聞き、その文書を子孫たちに伝える活動を行う。そうして子々孫々、自分たちに起きたことを忘れないのである。
イスラエルの人々は、しばしばロシアの反政府勢力とのつながりも強い。ウクライナやジョージアのような旧ソ連構成国の反露勢力との関係も深いとされる。 ソ連(ロシア)で迫害されソ連(ロシア)を離れたユダヤ人たちも、イスラエルに向かって旅立つ直前まで仲間だったユダヤ人たちを、国外から支援しつづけた。ロシアの国内で反政府活動をするユダヤ人のために、国外からさまざまな支援活動を行った。
また世界中のユダヤ人が、他のユダヤ人を護ろうと活動する。ディアスポラによって世界中に散ってしまったかわりに、ユダヤ人のネットワークは世界中に広がっており、しかもしばしば商売に長け資金力があり、ユダヤ人の豪商は巨大な力を持っており、権力者に接近するのも巧みなので、政治にもさまざまな影響を及ぼすことができる。そうした世界のユダヤ商人たちが、資金援助、情報網、人脈...とあらゆる方法を駆使して、ソ連(ロシア)国内で迫害されているユダヤ人たちを助け、ロシア政府をたたこうと努力した。
時代を遡ると、実は明治時代の日本が敵対するロシアと日露戦争を行うための戦費を調達できたのも、ユダヤ人がロシアを憎んでいたおかげである。日本が莫大な戦費を調達できたのは、実はユダヤ人のネットワークのおかげであり、なぜユダヤ人がそうしてくれたかというと、「帝政ロシア政府の圧制によって苦しめられているロシア国内のユダヤ人たちを救うために、何とかしてロシア帝国を崩壊させたい」と、ロシア国外の、ユダヤの豪商やユダヤ人銀行家たちが願っていて、その方法を模索していた時期に、ちょうど日本がロシアと戦争を始めようとして戦費を調達すべく、高橋是清が資金調達の任を帯び奔走していたが壁にぶちあたっている、ということを聞いたユダヤ人たちが、「日本がロシアに対して戦争をしてうまく勝つことができれば、ロシア帝国を崩壊させられる」と気づき、彼らのネットワークを駆使し、ユダヤの銀行家や豪商などが力をあわせて戦費を提供してくれたのである。しばしば表面的な歴史書やテレビ番組などでは『高橋是清が「欧米のバンカーたち」から資金を調達した』などと曖昧な表現がされているが、この「欧米のバンカーたち」というのは、もっとはっきり言うと、ユダヤ人銀行家(銀行のオーナーたち)である。結果として「ユダヤ人たちのロシア帝政に対する憎しみ」と「日本人の帝政ロシアに対する憎しみ」は、絶妙な、まるで奇跡のような連携をとれることになり、日本は強大なロシア帝国に勝利することができ、またユダヤ人のほうもロシア帝政を崩壊させられることができ、ユダヤ人仲間たちを救うことができたわけである。
一部のシオニズム系ラビは、エゼキエル書38章のマゴクをロシアなど東スラブ人の軍とみなし、ロシア軍のイスラエル侵攻が聖書に予言されていると主張している。 一方で、旧ロシア系勢力が正教会と結びついたり極右政党を結成するなど関係は複雑である。
サウジアラビア
サウジアラビアはアラブ世界では最も親米的な国であると同時に反露的な国とされる。
欧米
ポーランド
ポーランドは歴史的にロシアと対立が多く、世界有数の反露国として知られる。
歴史的な要因としてはロシア帝国時代のエカチェリーナ2世らによるポーランド分割、ソ連時代のスターリンによるポーランド侵攻やカティンの森事件、第二次世界大戦後の保護国化及び社会主義体制によるソ連の影響が挙げられる。
2014年クリミア危機ではウクライナに同調し、対ロシア制裁を欧州連合に求めている。
アメリカ
アメリカとソ連は第二次大戦では連合国としてヤルタ会談などで共闘したが、戦後は冷戦時代に突入しそれぞれが資本主義、共産主義の盟主・超大国として君臨した為に対立関係であった。
ソ連崩壊後もシリア内戦(ロシアはアサド政権を支持し、米国は反体制派側を支持)などで対立している。
カナダ
カナダではウクライナ西部のガリツィア地域をルーツに持つウクライナ系移民とその子孫がウクライナ国外では最も多く、在外ウクライナ民族主義組織によるロビー活動が盛んである。
西欧諸国
イギリスやドイツといった主要国は、反ロシア勢力の拠点が置かれてある。
その他にもチェコ、スロバキア、スロベニア、クロアチア、フィンランド、ルーマニアも反露国家に含まれる。
アフリカ
南アフリカ
南アフリカは冷戦時代にソ連の脅威への対抗意識から核武装していた(冷戦後に破棄)。しかし、冷戦後にソ連やユーゴスラビアといった東側諸国からの支援を受け、反アパルトヘイト闘争を戦っていたアフリカ民族会議(ANC)が与党となったため、同組織の最大の支援国であったソ連の後継国家であるロシアとの関係は今まで以上に良好なものとなっている。