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報道

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1690年9月25日付のボストンの新聞。

報道(ほうどう、: reporting)とは、ニュース・出来事・事件事故などを取材し、記事番組を作成して広く公表・伝達する行為であり、言論活動のひとつである。特に報道やそれに伴う世論の形成の研究を「新聞学」と呼称する。

報道を行う主体を報道機関、報道の媒体をメディアと呼ぶ。報道は不特定多数の大衆の情報を伝達する、いわゆるマスコミュニケーションに含まれるため、報道の媒体はマスメディアと呼ばれることも多い。

概要

議会での議論や戦争の経過など数多くの事件や出来事を直接見聞きしている人はまれであり、特に現代社会ではマスメディアの提供する情報を通して事件や出来事を間接的に体験している。

報道における取材(しゅざい)とは、報道対象の事実を確認する行為で、報道機関は原則として所属する記者の取材に基づく記事を報道するが、国外など遠隔地で発生した出来事は、通信社などの配信する記事によって報道する場合もある。この場合、記事の頭に「○日ニューヨーク共同」のような形でクレジットが入る。

いっぽう、ジャーナリズム: journalism)とは、事実の伝達のほか、それについての解説論評も含む。テレビ放送では報道番組娯楽番組などと対置されるが、スポーツ中継のように娯楽番組であると同時に事実を伝える報道番組としての側面を含むものもあり、明確な区分は困難である。ただし、ジャーナリズムの定義を無条件に拡大すると本質が見えなくなることから、一般には時事問題に関する報道・解説・批評等の活動を指して用いられる。

報道・ジャーナリズムは社会的に非常に大きな影響力をもっており、「立法」「行政」「司法」の3つの権力にこの「報道機関」(マスメディア)を加え、「第四権力」と呼ぶ者もいる(「四権」参照)。

世界のジャーナリズムで一般的かつ重要とみなされている機能として、「バイライン(署名)」「ソース(情報源)」「クレジット(引用・参照元)」「オプ・エド(反対意見)」「コレクション(訂正欄)」が挙げられる。

報道の特質と課題

報道と政治権力

日々のできごとに限らず建造物・風景・珍しい動植物など特に現代社会では人々はマスメディアの提供する情報を通して世界を認識することが多い。このようなマスメディアの影響力から権力者にはその情報をコントロールしたいという志向が現れることがあり、現にいくつかの国々では厳しい情報統制が実施されている。

情報統制の敷かれた国々では権力者にとって都合の良い情報だけが住民に伝わり、世界情勢や自国の置かれている状況も客観的に判断することが困難になる。一方、言論統制が形骸化して正確な報道が他国から入ってくる場合は独裁政権には不利となる。冷戦末期、西側諸国衛星テレビの情報は国境を越えて東欧諸国の人々の世界観や行動に影響を与え、東欧革命の大きな原動力となった。

権力者によるマスメディアのコントロールが明確に表れるのがクーデター発生時であり、クーデターが発生すると情報によって市民や兵士の行動のコントロールを図るためまず放送局が占拠される。

こうした情報統制を防ぐために、民主主義国家においては表現の自由が保障され、報道の自由もその中において保障がなされている。このような自由はアメリカ独立戦争フランス革命などの市民革命の中で、新聞などの行う報道が世論の形成に大きな役割を果たしたことによって確立され、樹立された新政府においては自由権の一部として法的に表現の自由が認められるようになった。日本においても、日本国憲法の第二十一条において「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する」との一文があり、この中で報道の自由は保障されている。さらに第二項では「検閲は、これをしてはならない」と定められており、検閲も明確に禁止されている。報道の自由には取材の自由や媒体の流通・頒布の自由が含まれている。

しかし報道の自由が確立されたのちも、政府とマスメディアの間ではその自由の範囲をめぐってしばしば対立が起きている。軍事的・外交的なものを中心に重要事項がしばしば国家機密に指定され情報流出が制限される一方、情報公開法が制定され政府の公文書等が一般に公開されるよう定められている国家も多くなってきている。また、ジャーナリストの重要な職業倫理のひとつに取材源の秘匿が挙げられるが、刑事裁判においてはある程度の尊重はされるものの、どこまでそれが認められるかについては議論がある。

報道と正確性

報道では事実確認の怠りや他社との競争を背景とする勇み足などによって誤報が生じることがある。この他、部数を増やすためのやらせ虚偽報道などの問題(イエロー・ジャーナリズム)がある。また表現の自主規制報道におけるタブーの問題もある。このうち、明確な誤報や捏造報道に関しては、訂正報道がなされる場合がある。例として、日本の放送法では報道が事実でないことが判明した場合、その判明した日から2日以内に訂正・取り消し放送を行うことが義務づけられている。また放送に関しては、2003年に設立された放送倫理・番組向上機構(BPO)が放送への苦情や放送倫理に関わる諸問題を審理し、各局に見解の提示や勧告を行っている。

インターネット上では2016年頃より、ソーシャルメディアにおけるフェイクニュースが急速に問題視されるようになり、さまざまな機関でファクトチェックが行われるようになってきている。

報道と客観性

客観報道に対する考え方は媒体の種別によっても国によっても異なっている。

新聞社や雑誌社には社是として不偏不党を掲げる社がある。一方で特定の政党や政治団体を支持している新聞や雑誌もある。また、新聞を政党や政治団体が発行していることも多い。米国ではニューヨーク・タイムズは政治報道では共和党より民主党に近い立場とされている。

客観報道の中身についてはさまざまな議論がある。数多く発生する事件やできごとに対し、どのニュースを選択し、どのような順序で、どれくらいの紙面・放送時間で報道するか、どの写真・映像を選択するかという決定のプロセスが介在するからである。

2000年に制定された日本新聞協会「新聞倫理綱領」では「新聞は歴史の記録者であり、記者の任務は真実の追究である。報道は正確かつ公平でなければならず、記者個人の立場や信条に左右されてはならない」としている。

報道機関は、事件や事故といった事象に対し、報道する価値が「ある」「ない」といったふるい分けを行い、価値があると判断した事象を報道する。判断する基準についてニクラス・ルーマンによれば

「驚き」「新奇さ」「断絶」「非連続」などの特性を備えており、広く報じる価値がある情報となる。そして、「驚き」などの判断基準はそのときどきの社会の状況によって異なるため、「同じような事件であっても、昔は報道されなかった(情報価値がなかった)のに、今では報道される(情報価値が生まれた)」といったことが、普通に起こりうる。

ここから報道に対する指摘の一つとして、「報道に「社会的責任」や「中立性」、「正義」などの「あるべき論」を求めるのは、そもそも間違っている」という考えが生まれる(ルーマン)。報道は、社会的責任などの規範とは別次元の基準で情報を峻別し、多くの人が求めるものを報じる仕組みとなっている。そこへ外部から規範を基準として入れ込もうとしても機能するわけがない、ということである。

日本における客観報道の定義は曖昧であり、客観報道そのものに疑問を呈する意見もある。客観報道の定義は人によって千差万別で、定まった合意がないからである。記者クラブが持つ問題点と併せ日本の報道機関の偏向報道体質はよく批判され、客観報道は空想でしかないとの意見もみられる。

報道と過剰性

犯罪の被害者や加害者に関しては、日本では20歳以下の少年に関しては少年法によって匿名での報道が法的に定められているものの、それ以外の場合は基本的に実名での報道が行われている。しかしこうした実名報道プライバシーの侵害や報道被害人権侵害につながるとされ、匿名での報道を求める声も上がっている。

記者たちの取材マナーやモラルの欠けた過剰な取材も大きな問題となってきている。例としては、事件が起きた際に報道各社が関係者の元に殺到して人々の日常生活を脅かすメディアスクラムや、パパラッチの横行などが挙げられる。

このほか、犯罪に関する過剰に詳細な報道は市民の間の不安を増幅させ、模倣犯を生み出したり、動機や手口までもが詳細に報じられることにより、新たな犯罪連鎖自殺が誘発されることがある。またニュースが娯楽化し、報道番組がショー化して、取材映像にBGMや効果音、あるいはテロップやナレーションを付加することにより必要以上に演出してしまう過剰演出も問題である。

報道によって個人の名誉毀損が起きることは珍しくなく、裁判所によって名誉毀損が認められた場合は損害賠償謝罪広告などの名誉回復処分を受けることが可能である。ただし、その報道に公共性と公益性があり真実である場合は名誉毀損罪の免責要件にあたり、罪に問うことはできない。名誉毀損と報道の自由は対立する関係にあり、適用範囲を巡って多数の裁判が起こされ、多くの判例が出ている。

報道と閉鎖性

日本の報道機関は閉鎖的とされる。記者クラブの問題もある。

調査報道

官公庁や捜査機関、各企業から記者会見プレスリリースなどで発表される情報を、精査や取捨選択することなくそのまま報じるような報道は発表報道と呼ばれ、画一的・一面的な報道や対象への無批判などを引き起こすため、あまり望ましくない報道姿勢とされている。これの対照となるのが調査報道で、公的な発表に頼らず丹念な取材によってさまざまな情報を集め、それを積み上げて隠された事実を突き止める報道スタイルのことを指し、ジャーナリズムの神髄であるとされている。

様々な組織から要求されるガイドライン

  • 自殺報道ガイドライン - 2000年にWHO(世界保健機関)が発表、厚生労働省が従うよう要請している。
  • LGBTQ報道ガイドライン - 2019年3月に第一版が発表された。
  • 薬物報道ガイドライン - 2017年、偏向報道や無断撮影で叩くことより治療につなげるよう評論家の荻上チキが発表した。
  • ひきこもり報道ガイドライン‐ 2022年12月8日、偏見や無断撮影などを行うことに対して、弁護士、精神科医、当事者らが発表した。

脚注

参考文献

  • ビル・コヴァッチ、トム・ローゼンスティール 著、加藤岳文、斎藤邦泰 訳『ジャーナリズムの原則』日本経済評論社、2002年12月。ISBN 978-4818814479 
  • ビル・コヴァッチ、トム・ローゼンスティール 著、奥村信幸 訳『インテリジェンス・ジャーナリズム―確かなニュースを見極めるための考え方と実践』ミネルヴァ書房、2015年8月20日。ISBN 978-4623073870 
  • 前川徹、中野潔『サイバージャーナリズム論―インターネットによって変容する報道』東京電機大学出版局、2013年11月。ISBN 978-4501620301 

関連項目

報道の種類

外部リンク


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