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男らしさ

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男らしさ(おとこらしさ)または男振り(おとこぶり)・益荒男(ますらお)らしさとは、これが男性の特性(あるいは特徴・要件等)である、と特定の話者や特定の集団が想定している観念群のことである。「女らしさ」という観念に対置されるもの。

概説

「男らしさ」や「女らしさ」という概念は、ジェンダー(生まれつきの性によって人が社会の中でどのようなあり方をしているか)という名称で括られて研究されている。

一概には言えないが、要素ごとに、文化的に醸成されたものである、とする見解や、生物学的差異に由来するもの、とする見解がある。例としては、前者を指摘する場合は、(しつけ)や社会環境(前述の文化・地域・宗教・歴史・家庭環境 等)による人格形成への影響などを指摘する見解がある。後者を指摘する場合は、ホルモンの違い、(その結果として生じる)脳の性差などで性格・性向が規定されている可能性を指摘する見解がある。文化人類学者などは文化的な面に比重を置いて言及し、生物学者などは生物学的な面に焦点を当てて他の面を見落としてしまうことが多い。いずれにせよ、全ての要素を一般化して説明することは困難である。

なお、コミュニケーションのしかたについては、Deborah Tannen(en:Deborah Tannen)やJulia T. Wood(en:Julia T. Wood)らによって、男女差(「男らしさ」(「男のやりかた」)「女らしさ」(「女のやりかた」)があることが指摘されている。それが相互不理解、相互誤解のもとにもなっているという。詳しくは 「コミュニケーション#コミュニケーションの男女差」を参照のこと。

歴史

産業革命期から第二次世界大戦後における男らしさとは、「男は弱音を吐かない、泣かない、女を守る」といったものから、男性を一方的に仕事や戦争に出すものまで様々な事例が存在し、その代償として男性優位(男性だけが大学などに進学できたり、社会の重要な職業に就くことが出来るなど)を得るものが多かった。

フェミニズム・保守層

1970年代以降のフェミニズムは「男らしさ」批判を展開し、さらに保守層からは反論がおこった。こうした男らしさをめぐる論争は現在進行形で続いている。

フェミニズムやジェンダー論においては「男らしさ」「女らしさ」の具備を個々人に求める事が性差別を助長しているとする。それまでの男性優位の社会構造を改め、雇用や賃金の平等化など、両性平等の原則にのっとった社会政策が実施された。これによって女子の大学進学率などが向上したが、いっぽうで過渡的措置として女子優遇政策をとる場合があり、それも保守層の批判の的となった。

保守層からの批判とは、フェミニズム政策や「らしさ」の消失によって、少年達に様々な問題が露出しはじめ、少年達は真面目に勉学に励むという事をしなくなり、北欧アメリカで男子生徒の成績は急激に低下したとするものである(→ガールパワー)。様々な科目で少女達に遅れをとり、大学進学率も低下したと主張し、イギリスはこの男子の学業不振を社会問題として捉え、男らしさに基づいた教育制度が実施される事になった。アメリカでも同様に少年犯罪や学業低下を問題視し、「真に男らしい男とは責任感と弱者をいたわるジェントルマン精神を持つ男である」として男らしさを復活させようという運動がある。

「男らしさ」の具体例

地域によって様々な違いがある。男性の精神的特徴(論理的、リーダーシップ)をとらえて規定するものもあり、肉体的特徴(筋肉質、高身長、強さ)をとらえて規定するものもある。

イギリス

イギリスでは古くは騎士道にのっとった生き方が男らしい、と思われていた。その後、紳士的(ジェントルマン)であることが最大の男らしさと考えられていた。紳士道からレディーファーストの理念も発達し、ただ力を誇示するだけでなく、女性を尊重してこそ誠に男らしいとされる文化が発達した

フランス

フランスでは早い段階で、男性らしさや女性らしさより、個性や人間らしさが評価されるようになった

日本

戦国時代

  • 武士に生まれたものの間では武士道にのっとった生き方をすること
  • 自分の生物的な生命よりも、名誉や理念を重んじること。
  • 潔さ
  • 倹約節約する。無駄使いをしない。金銭に拘泥しないこと。

幕末、明治時代

  • 自分ひとりの身のことより、天下国家のことを考えること。
  • 性的に放縦であること、絶倫であることなど、性の側面での卓越性が発揮できる人物。

第二次世界大戦前から戦後しばらくの間などは、例えば、以下のようなもの。

  • 能動的、判断力、決断力
  • 落ち着いていること
  • いさぎよさ
  • 我慢強さ
  • 無口
  • 不言実行。(父親たちは「背中で語っていたものだった」などという)
  • 感情表現を抑えること。特に悲しみの感情の表出(泣くこと)や喜びの感情の表出は抑えるのがよしとされた。

第二次世界大戦後、高度成長期、現代において

  • 判断力、決断力
  • 有言実行
  • 自主的。転じて、たとえ女性の配偶者に十分な財産・収入があっても、男性が「養われる」のは男らしくないとする偏見がある。ヒモという蔑称は男性に対してだけある。主夫に対する無理解も多い。
  • (労働者の家庭では)汗をかいて体を動かすこと
  • (父親が学者の家庭などでは)学問や形而上の世界に意識が向いていて、もっぱら頭脳を使い、論理や理屈を優先する理知的な人柄で、あまり身体を動かさないこと、汗をかかないこと。(かわりに、もっぱら女性のほうが身体を使った活動を行い、そちらが「女らしい」)

以上の「男らしさ」は、男性から見た男性の理想像的要素が強いが、現代の日本の社会では、女性の権利・発言力が増したので、女性、以下のように女性の視点で見た都合の良い男性像、もしばしば語られるようになった。

「男らしい人が好み」と言う女性に「具体的にはどんな人ですか?」と質問すると、千差万別な答えが返ってくることがSPA!などの記事に取り上げられている。そのため日本においては男らしさのイメージも千差万別であり、万人が認めるような男らしさの概念が確立されているわけではないと考えられる。

否定的

否定的な意味では、世界的に次のようなことが(悪い意味で)「男っぽい」とか「男らしい」とされてきた。

  • 「鈍感(どんかん)」「ニブい」
  • 「喧嘩早い」「暴力的」
  • (男児・男子生徒など、特に男同士でいる時など)自分が勇猛であると見せようとして、(無駄に)危険・無謀なことをする。(結果として、怪我が多かったり事故死する確率が女児より高い。)
  • 「心のたくましさ」にしばしば欠ける。理念や理屈ばかり先行させているので、いざ理念どおりに行かない時に「心がポキリと折れた」ようになり、しばしば生きる気力すら根本的に失ってしまう(女性に比べて自殺率が高い)。

男らしさへの批判

フェミニズム

フェミニストは男らしさ、女らしさを後天的に作られた男尊女卑的な性役割、「男らしさ」なるものは男性が強者としての立場から女性や弱者に一方的な「優しさ」を押し付けるパターナリズムとして否定し「らしさからの解放」を掲げている

教育界

教育界においても「性差で役割を固定するのは良くない、個性をつぶしてしまう」といわれ、現在の教育では画一的な男らしさは殆ど否定されつつある。代わりにジェンダーフリーが導入されているところがある。大学などの教育の場でも、「そもそも、男らしさ・女らしさ、とはいったい何なのか?」ということを考えさせる授業や講義がある。ただ、人によっては、男らしさ・女らしさはあってもいいではないか、という意見もある性同一性障害の児童・生徒に対する教育上の配慮等も課題である。

男性による批判

男らしさは男性の負担になるとして、男性自ら排除しようとする人々も数多く存在する。また、近年「女らしさ」の要求はタブー視されてきているのに、「男らしさ」への要求は今なお当然とする向きが残っていることに反発する意見も多い

男らしさのコスト

「男らしさのコスト」(the cost of masculinity)とは,マイケル・メスナー(en:Michael Messner)が提起した「男性は地位や特権と引き換えに,狭い男らしさの定義に合致するために―浅い人間関係,不健康,短命という形で―多大なコストを払いがちである」 という視点である。

脚注

注釈

用例

関連項目

関連文献


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