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QT延長症候群
QT延長症候群(QTえんちょうしょうこうぐん、long QT syndrome; LQTS)は、心臓の収縮後の再分極の遅延がおき、心室頻拍(Torsades de Pointes:TdP、心室性不整脈の一種)のリスクを増大させる心臓疾患である。
概要
心臓の収縮後の再分極の遅延によって生じる心室頻拍は動悸、失神や心室細動による突然死につながる可能性がある。症状は、条件のサブタイプに応じて、様々な刺激によって誘発される。心臓に器質的疾患を持たないにもかかわらず、心電図上でQT時間の延長を認める病態である。QT時間が0.46秒以上、またはRR間隔で補正したQTc時間では0.44秒以上である場合を指す。Torsades de pointes(TdP)と呼ばれる心室頻拍を惹起することがある。より簡略にはT波の終点がRRの中点を越えていれば明らかにQTの延長とする。この方法はスクリーニング診察時に用いることがある。
QT 時間の RR 間隔による補正式として、
Bazett の式
がある。
また、QT 時間の正常値を出す回帰式として、
Heggliu-Holzman の式
がある。
分類
先天性QT延長症候群
先天性QT延長症候群では、無治療の場合は40歳までに半数以上の患者で心イベントが発生し、また初回イベントとして突然死あるいは心停止に至る例も5%未満ではあるが存在するといわれている。多くは遺伝性(家族性)であり、安静時からQT間隔が延長していることが多い。 日本における有病率は、1か月健診時の心電図スクリーニングによって 0.09%(4285例中4例)と見積もられた。
Naチャンネル、Kチャンネルの遺伝子に変異を認めることがある。ブルガダ症候群の原因遺伝子と重複している場合が多い。
後天性QT延長症候群
電解質異常、薬剤性(副作用)が原因となる。
薬剤性の例として、抗ヒスタミン薬とマクロライドの併用、キノロン系、抗精神病薬など。
2008年から開始された、薬物誘発性QT延長の非臨床試験データベースにより、幅広く情報が集められた。
QT延長を来す可能性がある薬物に関しては、CredibleMedsのウェブサイトで検索できる。 薬物への反応には個人差があり、後天性QT延長症候群の症例においても KCNQ1, KCNH2, SCN5A などの遺伝子変異が続々と報告されている。 ここに挙げた遺伝子変異は、いずれも先天性QT延長症候群の原因遺伝子として知られている。
問診・検査
- 現病歴・既往歴 -- 失神発作や難聴
- 家族歴 -- 突然死、失神発作
- 服薬歴 -- マクロライド系薬剤、抗真菌剤、抗ウイルス剤、抗ヒスタミン剤など。
- 心電図
-
アドレナリン負荷試験
- アドレナリン0.1µg/kgの急速静脈注射に引き続き0.1µg/kg/minの持続点滴
- 潜在性LQTSの診断に有用である。
Schwartzの診断基準
基準項目 | 点数 | ||
---|---|---|---|
心電図所見 | QT(QTc)時間の延長 | QTc ≧ 480msec | 3 |
460 - 479msec | 2 | ||
450 - 459msec(男性) | 1 | ||
運動負荷後4分のQTc | ≧ 480msec | 1 | |
Torsade de pointes | 2 | ||
T波交互脈(交代性T波) | 1 | ||
結節性T波(Notched T波, 3誘導以上) | 1 | ||
徐脈 | 0.5 | ||
臨床症状 | 失神 | ストレスに伴う失神発作 | 2 |
ストレスに伴わない失神発作 | 1 | ||
先天性聾(ろう) | 0.5 | ||
家族歴 | 確実なLQTの家族歴 | 1 | |
30歳未満での突然死の家族歴 | 0.5 |
診断確実:点数合計 ≧ 4点
疑診:点数合計 2 - 3点
可能性が低い:点数合計 ≦ 1点
治療
先天性QT延長症候群では、交感神経興奮が心室頻拍を誘発すると考えられているため、β-ブロッカーが第一選択薬となる。またカテコールアミン分泌を誘発しないよう運動制限もあわせて行われる。