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ウイグル人大量虐殺

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ウイグル人大量虐殺
東トルキスタン独立運動新疆紛争
Xinjiang in China (de-facto).svg
場所 中華人民共和国の旗 中国 新疆ウイグル自治区
日付 2014年 - 現在
標的 ウイグル人カザフ人キルギス人チュルク民族ムスリム
攻撃手段 強制中絶強制不妊手術レイプ輪姦を含む)、強制労働拷問殴打抑留洗脳
犯人 中国共産党の旗 中国共産党
習近平総書記
動機 テロ対策中国化イスラム恐怖症

ウイグル人大量虐殺(ウイグルじんたいりょうぎゃくさつ、英語: Uyghur genocide)は、中華人民共和国新疆ウイグル自治区1955年に設立)およびその周辺で、中国共産党ウイグル人およびその他の民族的・宗教的少数派に対して行っているとされる、現在進行中のジェノサイド(大量虐殺)ないし人権侵害である。アメリカ合衆国を中心に数十か国が非難しているが、中国政府は関与を否定している。

概要

2014年以降、中国政府は、習近平総書記の政権下にある中国共産党の指示の下、ホロコースト以来最大規模かつ最も組織的な少数民族・宗教の抑留となっている、100万人以上のイスラム教徒(その大半はウイグル人)を法的手続きを経ずに秘密裏に収容所に収容することにつながる政策を追求してきた。

この政策を批判する人たちは、新疆の中国化と表現し、民族虐殺や文化的大虐殺と呼んでいるが、一部の政府、活動家、独立系NGO人権専門家、学者、政府高官、東トルキスタン亡命政府なども、この政策を大量虐殺(ジェノサイド)と呼んでいる。特に批判者たちは、国家が支援する収容所へのウイグル人の集中、ウイグル人の宗教的慣習の弾圧、深刻な虐待、さらには強制的な不妊手術、避妊、中絶などの人権侵害を詳細に示す証言や広範な証拠を取り上げている。

中国政治が専門の平野聡東京大学大学院法学政治学研究科教授によれば、『ニューヨーク・タイムズ』が2019年11月にリークした新疆秘密文書、現実に伝えられる報道や画像、当事者の証言、中国の正式な国家統計である『中国統計年鑑』の中でウイグル族を含む少数民族全体の人口が減少した事を根拠に、新疆ウイグル自治区でジェノサイドがおこなわれているのは明らかと述べた。

それに対し、中国問題専門家の村田忠禧横浜国立大学名誉教授が平野教授と同じく中国の正式な国家統計である「2019新疆統計年鑑」のデータによって少数民族全体の中でのウイグル族の具体数を詳細に分析した。村田名誉教授は平野教授の主張に対し、「平野聡教授は少数民族全体の人口データとウイグル族の人口データを一括りにして論じている。」と述べ、それと同時に、平野教授の主張する様にウイグル自治区の少数民族の人口は18年、19年は確かに合わせて164万人の「減」だが、16年と17年の2年間は合わせて242万人の「大幅増」となっており、平野教授が分析に用いた『中国統計年鑑』はばらつきが極端で正確ではない、と述べている。村田名誉教授は1978年にウイグル族は555万5000人だったが2019年には1167万6000人まで増えていること、また15年から18年までウイグル自治区の少数民族は増加し、ウイグル族も2万人強増加したことから、「ウイグル族は安定的に増加している」と指摘している。「このような歴然とした事実を無視して、『ジェノサイド』が進行している、といくら声高に叫んだところで、(中略)アメリカ政府の『人権外交』の本質が無知と偏見で作られた『デマ情報』に基づいていることを全世界人民に知らせる結果となるであろう。」と述べた。村田名誉教授はまた、「いわゆる『ジェノサイド』は全く存在しない。私は新疆を訪れて自分の目で新疆の繁栄と発展を確かめたので、西側が中国を中傷する言葉を信じない」と語った。村田名誉教授は大量の資料を読み、西側が宣伝する「ジェノサイド」論に反論する文章を執筆して、複数の日本メディア向けに送ったが、「誰にも相手にされず」、文章は今も掲載されていないという。

画像外部リンク
新疆ウイグル自治区ロプ県の強制労働施設に収容されている少数民族ウイグル族の男性達

2021年12月Twitterは、ウイグル問題に関して、個人を装い、中国政府寄りの主張を英語などで不正に拡散させ、「国家的関与が疑われる」として規約違反で2160のアカウントを凍結した。中国による新疆ウイグル自治区の少数民族弾圧を「デマ」とする内容であり、Twitterは組織的な情報工作を指摘している。『読売新聞』は、2160アカウントの凍結後、閲覧が停止された投稿とリツイートの計約6万7200件のデータの一部をTwitterから取得し、内容を調べた結果、大半は英語で中国語フランス語もあったが、少なくとも45アカウントから日本語で発信されており、それらは架空とみられる英語や中国語の個人名であり、日本が標的になっていた。最も多かったのは、ウイグル族を名乗る人が出演し、人権侵害を否定する動画が添付された投稿のリツイートであり、投稿には動画のなかでの発言の日本語訳が記され、人権侵害を指摘したCNNの報道について「記者が偽ニュースを作り出した」などとしていた。中国政府系メディアの日本語記事のリツイートも確認され、自治区の発展をアピールするシンポジウムで、出席者が「一部の勢力が事実を無視し、自治区の人々が美しい生活を享受する権利を中傷し、破壊しようとしている」などと発言する内容であり、こうした発信は内容と日付がほぼ同一で、31アカウントが4時間以内に同じような投稿をリツイートしたケースもある。英語など他言語の投稿でも共通する特徴がみられ、「ウイグル問題は米国の戦略的陰謀だ」という中国政府系メディアの記事を投稿したり、中国外交官の投稿をリツイートしている。オーストラリア戦略政策研究所の報告書によると、アカウントは数百個が同じ日に開設されており、また他人から購入したとみられるものもあり、中国政府の関与は不明だが、オーストラリア戦略政策研究所は「中国が国際的批判をかわす目的で行っている」との見方を示している。

新疆ウイグル自治区における出生率の低下

中国政府の統計によると、2015年から2018年にかけて、ウイグル人が多く住む地域であるホータンカシュガル出生率が60%以上低下している。同時期に、国全体の出生率は1,000人あたり12.07人から10.9人へと9.69%減少した。中国当局は、新疆ウイグル自治区で2018年に出生率が3分の1近く低下したことを認めたが、強制的な不妊手術や大量虐殺の報告を否定した。また、ウイグル自治区全体では出生率の急落が続いており、全国ではわずか4.2%であるのに対し、2019年だけで24%近くも低下している。

これについて東京大学社会科学研究所の丸川知雄は『新疆統計年鑑』を分析した上で、ウイグル自治区全体の出生率低下とウイグル族への不妊手術実施には直接の関係が無い上に、手術が強制された証拠もないと述べた。ウイグル族は子供を働き手として期待し、子供は天の授かりものと見なすイスラム教の影響も強く、ウイグル族に対して一人っ子政策が厳しく適用されなかった事もあり、ウイグル族では子供が6人も8人もいることがあったので、ウイグル族が集住する地域では子供が多過ぎて貧困から抜け出せない状況にあった。そこで自治区政府は05年から出産制限を勧める補助金政策を取り始め、夫婦が子供を二人だけ生めば「計画出生父母光栄証」が、子供を一人だけ生めば「一人っ子父母光栄証」を与えられ、毎年の年金と一時金を受け取れるという計画出生政策を実施した。当初07年は毎年600元に加えて、光栄証を貰った時に一時金として3000元が与えられていたが、11年から年金の額は1200元に上乗せされ、20年時点では、一時金の額が6000元、2年目からの年金は一家庭に対して年3600元とさらに増額されている。丸川はこのような経済インセンティブこそが新疆で不妊手術が多かった主たる理由であり、強制的な不妊治療が行われたとの憶測に反論した。

国際社会の反応

国際社会の反応は様々で、日欧米を主体に数十か国が中国政府を非難している一方、それ以上の中国支持国が存在する(2021年時点)。

国連における反応

2019年7月、日欧など22カ国が第41回国連人権理事会(UNHRC)に共同書簡を出し、中国によるウイグル人やその他の少数民族の大量拘束を非難し、中国に対して「ウイグル人や新疆のその他のムスリムや少数民族のコミュニティの恣意的拘束や行動の自由に対する制限を控える」よう呼び掛けた。米国は人権理事会から離脱していたので含まれなかった。しかし、それ対抗して50ヶ国が中国支持の共同書簡を発表し、逆に「人権問題を政治的に利用する」慣行を批判した。また、西側諸国の報道が事実に反していると批判した。

同年10月、23カ国が国連に共同声明を出し、中国に対して「人権を尊重する国内および国際的な義務や約束を守る」よう求めた。これに対し、54カ国(中国自身を含む)が中国の新疆政策を支持する共同声明を発表した。

2020年10月、39か国が新疆における中国の政策を支持・非難する反対書簡を国連人権理事会に提出した。ドイツの国連大使クリストフ・ホイスゲンが代表してスピーチした。これに対し、45か国が中国支持声明を発表した。

2020年12月、国際刑事裁判所は、疑われている犯罪のほとんどについて中国に管轄権がないことを理由に、中国に対する捜査措置をとることを断念した。

2021年6月22日に開かれた国連人権理事会で、オーストラリアイギリスフランスドイツ日本アメリカなど44カ国が、新疆ウイグル自治区の人権状況について「深刻な懸念を抱いている」との共同声明を発表し、国連人権高等弁務官ミシェル・バチェレの新疆ウイグル自治区訪問と調査を受け入れるよう中国に要求した。声明は「信頼できる報告では、新疆で100万人超が恣意的に拘束され、ウイグル族やその他少数民族に偏った監視が広がり、基本的な自由やウイグル文化への制限を示している」として、拷問強制不妊手術性的暴行や子供を親から引き離すなどの報告もあるとし、さらに「国家安全維持法下での香港の基本的自由悪化とチベットでの人権状況を引き続き深く懸念している」とも指摘した。これに対し、ベラルーシ代表が同じ日に中国擁護の声明を発表、署名する国はアフリカ、中東などを中心に69の国(パレスチナを含む)にのぼった。さらに、声明を読み上げたカナダには、カナダの先住民寄宿学校の跡地から200人以上の子供の遺骨が発見された件を取り上げ、いくつかの国とともにカナダに対し「人権侵害行為を即時停止」するよう促す反転攻勢の共同声明を発表した。

10月の国連総会第3委員会では43か国が懸念声明を発表するも、62カ国が擁護した。

人権団体の反応

2021年6月10日、アムネスティは、ウイグル人などイスラム教徒少数民族が暮らす新疆ウイグル自治区で、中国政府人道に対する罪を犯しており、中国政府ウイグル人カザフ人などイスラム教徒の少数民族に対し、集団拘束や監視拷問をしていたとする報告書を公表した。報告書では、「中国当局が地獄のような恐ろしい光景を圧倒的な規模で作り出している」「ものすごい人数が強制収容所洗脳拷問などの人格を破壊するような扱いを受け、何百万人もが強大な監視機関におびえながら暮らしており、人間の良心が問われている」「(中国政府の行動は)新疆の人口の一部を宗教と民族に基づいてまとめて標的にし、イスラム教の信仰とテュルク系民族イスラム教文化風習を根絶するため厳しい暴力と脅しを使うという明らかな意図」「(強制収容所に入れられた人が)止まることのない洗脳と、身体的かつ心理的拷問を受けている」として、中国政府は「少なくとも以下の人道に対する罪」を犯しており、「国際法の基本ルールに違反する、収監など厳格な身体的自由の剥奪」「拷問」「迫害」を挙げ、拷問の方法として「殴打、電気ショック、負荷が強い姿勢を取らせる、違法な身体拘束(「タイガーチェア」と呼ばれる鉄製のいすに座らせ手足をロックして動けなくする)、睡眠妨害、身体を壁のフックにかける、極めて低温の環境に置く、独房に入れる」などがあり、タイガーチェアを使った拷問は、数時間~数日にわたることもあり、その様子を強制的に見せられたという証言も得たとしている。また、中国政府は強制収容所で行われているのは「職業訓練」であり、テロ対策として過激思想を解いたりするためのものだと主張しているが、アムネスティは、テロ対策は集団拘束の理由にならないと報告書で反論し、新疆ウイグル自治区の収容制度について、「中国の司法制度や国内の法律の管轄外で運営され」、強制収容所で拘束されていた人々が刑務所に移されたことを示す証拠があると主張した。

国別の反応

法的立場においては、2021年初めに米国務省法律顧問室は中国の行為は人道に対する罪に相当するものの、ジェノサイド条約は対象集団を生物学的または身体的に破壊する意図が加害者になくてはならないと決定していることから、立証が極めて難しくジェノサイドであることを証明する十分な根拠は存在しないとの結論を下した。

政治的には、アメリカは人権侵害をジェノサイドと宣言した最初の国であり、2021年1月19日にその決定を発表した。これに続いて、カナダの下院オランダの議会がそれぞれ、2021年2月に中国の行為をジェノサイドと認める非拘束性の動議を可決した。

2021年4月にイギリスの下院はジェノサイドと認定する決議を可決した。2021年5月、リトアニア共和国議会もジェノサイドと認定する決議を可決した。

その他の反応

2021年1月、中国在アメリカ合衆国中国大使館が「中国がウイグルの宗教的過激派を抑え込んだ結果、女性は『子供を産む機械』ではなくなり、解放された」とツイートしたところ、Twitterはこの発言をデマとして削除し、アカウントも「人間性を抹殺するもの」として凍結した。

アメリカ経済学者でもあるジェフリー・サックス2021年1月インタビューにおいて、インタビュアーからの、中国によるウイグル人抑圧についての質問を「アメリカが犯した巨大な人権侵害」に言及することで回避した。その後、19の人権団体が共同でコロンビア大学にサックスの発言を問題視する書簡を送付した。書簡の署名者たちは、サックスはアメリカの人権侵害の歴史に話を逸らすことで中国によるウイグル人抑圧を相対化するという中国外務省と全く同じロジックを用い、さらに中国政府に抑圧された人々の視点を矮小化することで、「中国政府の視点を強調し、その政府によって抑圧されている人々の視点を矮小化することによって、ジェフリー・サックスは自らの組織のミッションを裏切っている」と批判している。『ザ・グローバリスト』の編集長であるステファン・リクターとJ.D.ビンデナゲルの2人は、サックスが「古典的な共産主義のプロパガンダ策略」を積極的に推進していると批判している。

2021年4月、サックスとウィリアム・シャバスミドルセックス大学)は、『PROJECT SYNDICATE』への寄稿で、アメリカ国務省が中国によるウイグル人抑圧を「ジェノサイド」であり、かつ「人道に対する罪」に認定したことを「薄っぺらい」と批判し、アメリカ国務省から提供されたジェノサイドの証拠は何もないと述べ、「アメリカ国務省がジェノサイドの告発を立証できない限り、告発を撤回すべきである」と主張している。『ナショナル・レビュー』によると、サックスは「中国共産党を含む権威主義体制に寛容な態度で長年意見を述べてきた」「COVID-19の起源、世界における中国の役割、ウイグル人虐殺など、多くの問題で日常的に北京の路線を採用している」としている。

台湾蔡英文総統は、『文藝春秋』2021年9月号のインタビューで「民主主義自由人権は普遍的価値です。私共は北京当局に、香港やウイグルの人々への弾圧をやめるように呼び掛けていきます。日本も含めた民主主義陣営は、民主主義の価値を守るために今こそ団結すべきです」と述べた。

脚注

注釈

関連項目


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