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ジェミニン
ジェミニン(英: Geminin、GMNN)は、ヒトではGMNN遺伝子にコードされるタンパク質である。ジェミニンは大部分の真核生物に存在する核局在タンパク質であり、種間で高度に保存されている。ジェミニンは後生動物の細胞周期、細胞増殖、分化系列の決定、神経の分化において機能するなど、多数の機能を持つことが解明されている。その機能の具体例としては、DNA複製因子Cdt1の阻害が挙げられる。
歴史
ジェミニンはもともとDNA複製の阻害因子、そして後期促進複合体の基質として同定された。同時期に、ジェミニンは発生中のツメガエルXenopusの胚の神経板を拡張することも示された。
構造
ジェミニンは約200アミノ酸残基からなる核局在タンパク質で、その分子量は約25,000である。非典型的なロイシンジッパーコイルドコイルドメインを含む。酵素活性やDNA結合モチーフの存在は知られていない。
機能
細胞周期の制御
ジェミニンは細胞周期のG1期には存在しないが、S期、G2期、M期を通じて蓄積する。ジェミニンのレベルは有糸分裂の中期から後期への移行時に、後期促進複合体によって分解されることで低下する。
S期
S期の間、ジェミニンはDNA複製の負の調節因子として機能する。多くのがん細胞株において、RNAiによるジェミニンの阻害によってゲノムの一部の再複製が起こり、異数性が引き起こされる。こうした細胞株では、ジェミニンのノックダウンによって増殖が顕著に低下し、数日以内にアポトーシスが引き起こされる。しかしながら、このことは初代培養細胞や不死化細胞株には当てはまらず、これらの細胞ではDNA再複製を防ぐ他の機構が存在している。ジェミニンのノックダウンは多くのがん細胞株で細胞死を引き起こすが、初代培養細胞では引き起こさないことから、がん治療の標的としての可能性が提唱されている。
有糸分裂
S期の始まりから有糸分裂の終盤まで、ジェミニンは複製因子Cdt1を阻害し、複製開始前複合体の組み立てを防いでいる。G1期の初期には、後期促進複合体はユビキチン化を介してジェミニンの分解を開始する。RNAiによるジェミニンの阻害は、多くのがん細胞株において次の細胞周期でのDNA複製の障害を引き起こすが、そうした細胞周期の欠陥は初代培養細胞や不死化細胞株では観察されない(Cdt1のレベルはこれらの細胞でも低下している)。
このように、ジェミニンは各細胞周期に1度だけ複製が起こるよう保証する重要な因子である。
発生の制御
ジェミニンはクロマチンの高アセチル化によって初期の神経系への運命決定を促進する。この効果によって、神経関連遺伝子への転写のためのアクセスが可能となり、こうした遺伝子の発現が促進される。究極的には、ジェミニンはいずれの系統へも運命決定されていない細胞に対し、神経系の特性を獲得させることができる。
ジェミニンはSWI/SNF クロマチンリモデリング複合体と相互作用することも示されている。神経前駆細胞では、高レベルのジェミニンの存在が終末分化を妨げている。ジェミニンとSWI/SNFとの相互作用が取り除かれると、ジェミニンによる阻害は解除され、神経前駆細胞は分化することが可能となる。
モデル生物
ジェミニンの機能の研究にはモデル生物が利用されている。国際ノックアウトマウスコンソーシアムプログラムの一環として、Gmnntm1a(KOMP)Wtsiと呼ばれるコンディショナルノックアウトマウス系統が作製されている。このプロジェクトはハイスループットな変異体作成によって疾患の動物モデルを作製し、関心のある研究者に配布するものである。
オスとメスのマウスに対して、欠失の影響を決定するための規格化された表現型スクリーニングが行われている。26種類の試験が行われ、3つの重大な異常が観察されている。劣性致死性の研究からは、妊娠中にホモ接合型変異体がみられず、そのため離乳期まで生存しないことが示されている。その他の試験はヘテロ接合型変異体の成体マウスに対して行われ、メスでは水晶体の形態的異常と白内障がみられることが示されている。
さらに、ジェミニンノックアウトマウスの小腸と肺では、ゲノム不安定性と腫瘍形成の増加が観察されている。
臨床的意義
ジェミニンはいくつかの悪性腫瘍やがん細胞株で過剰発現していることが知られている。一方、ジェミニンがゲノム不安定性を防ぐがん抑制因子として作用していることを示すデータも存在する。
関連文献
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外部リンク
- GMNN protein, human - MeSH・アメリカ国立医学図書館・生命科学用語シソーラス(英語)