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ブレッドボード

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最近主流になっている、ソルダーレス(=はんだづけ不要)のブレッドボード。この写真は その中でも比較的小さいタイプで、穴が400のタイプ。
(やや珍しい)上のソルダーレスタイプと同じ配置ではんだづけするタイプ。同じ場所に同じ部品を配置すれば同じ回路ができるようになっており、一旦ソルダーレスタイプで回路を組み実験して成功したら、念のためその部品をそのままこちらに移してはんだ付けして、振動などを受けても部品がはずれることのない恒久的な回路として使う、という目的のもの。
ソルダレス・ブレッドボードで回路を組んだ例

ブレッドボード(英:breadboard, prototyping board あるいはprotoboard)とは、電子回路実験や試作をするための板のことである。「プロトタイプ基板」や「プロトタイピング基板」とも。

「ブレッ――」は誤記。

概説

ブレッドボードは電子回路の実験試作評価などに用いる。

「breadboard」というのは、本来の意味は、パンを切る時にパンをのせる板のことである。「bread ブレッド」(=パン)+「board ボード」(=板)という構成の語であり、あえて日本語に訳せば「パン切り用まな板」といったところである。ラジオの初期からすでに、ラジオ愛好家たちがパン切り用の木製のブレッドボード上で回路を作ってきた歴史があるので、「breadboard」が回路の実験・試作用の板、という意味でも用いられるようになった。(なお英語圏では現在でも「パン切り用のまな板」は普通に日常生活で使われつづけているわけなので)英語圏の一般人の日常生活では「breadboard」と言えばまずパン切り用のまな板を指している。)

ブレッドボードの中でも特に、各種電子部品ジャンパ線を差し込むだけで電気的に接続され、電子回路を(試験的に)組むことの出来る、はんだ付けが不要なタイプの基板を指す場合、1970年代には英語では「solderless breadboard(ソルダーレス・ブレッドボード)」と呼ばれていた。最近では、はんだづけがないものが一般的になってきて他のタイプはめっきり減ったので、英語でも単に「breadboard」と呼ぶことが多い。ただし、歴史的経緯もふまえると、単に"breadboard"と言った場合、「試作用基板」全般を指しうるため、初期の「板に自力で釘を打ち付けたもの」から「基板からあらかじめ金属端子が多数突き出ていて線を巻きつけるもの」、ユニバーサル基板なども含むことになる。

2010年代の日本のアマチュア工作の世界では、漠然と「ブレッドボード」と言うと、穴に素子やワイヤーを差し込むタイプ(ソルダレスタイプ)をもっぱら指していることが多い。以下歴史を踏まえて順に解説する。

種類、分類

いくつか分類法があるが、古いタイプも含めて全体を概観して分類すると、差し込み式 / はんだづけ式 / ワイヤラッピング式 / (木の板タイプ) などと分類することも可能である。

最近のものは「はんだづけが必要なタイプ」および「はんだ付けが不要(ソルダーレス)のタイプ」に2大別する方法がある。 ソルダーレス式ははんだ付けが不要ということが大きな特徴である。試行錯誤のために何度もハンダをつけたり取ったりすると熱に弱い部品を劣化させたり壊してしまうことがあるが、はんだづけ不要のタイプはそうならないという長所がある。

歴史

1920年代TRF受信機。Signal社製。木製の板の上に組み立てられている。この時代、メーカー製の受信機ですら木製の板の上に組み立てられていたのである。

1900年代初頭のラジオ黎明期から、ラジオ愛好家たちは回路を組むのにあたり、入手しやすく安価で丈夫な木製のパン切りまな板を用いてきた。当時のラジオの部品はひとつひとつが現在のものと比べてかなり大きく、一辺が数cm~10cm弱もあるような塊のような形状の部品ばかりで、おまけにそれなりに重い部品だったので、それらを配置するのにパン切りまな板のサイズや丈夫さはちょうどよかったこと、また乾燥させた木材はちょうど手ごろな絶縁体であることも、パン切りまな板が選ばれた理由として挙げられる。回路の部品(トランスフォーマー真空管キャパシタ銅線端子など)を配置し、はんだ付けして回路を作った。また画鋲を使う、というのも一般的であった。

を打って、それを中継ラグ端子とし、そこに部品や配線をハンダ付けしたり、線を巻きつけることで接続して、回路に関するアイデアについて試行錯誤を行う、ということも行われた。

ブレッドボードについてのアイディアは徐々に増え、さまざまなタイプが登場した。

たとえば1961年の米国特許3145483Aは、木製の板にバネ機能を持った部品や他の部品をあらかじめ組み付けたブレッドボードである。たとえば1967年の米国特許3496419は回路をあらかじめプリントしておく、というものである。

現在もっとも広く用いられているブレッドボードは白い合成樹脂製の、差し込み式で はんだ付け不要のタイプであるが、これは1971年にRonald J. Portugalが特許を取得したものである。

木の板を用いるタイプ

歴史で解説したように、ラジオの初期の1900年~1910年代にはすでに、回路の実験や回路の制作をする人々は、(パン用のまな板のような)木の板に釘を打ちつけたものなどにはんだづけを行って回路を製作していた。

板に釘を打ち付けるものは(差し込み式とは異なり)ボード自体も容易に自作可能である。電子部品の小型化が進み、ユニバーサル基板方式の試作板や差し込み式が登場・普及するにつれて、次第にすたれていった。(差し込み式よりも不便だが)現代でも面白がって作る人が少数だがいる。 特に鉱石ラジオを組む場合は、(部品のひとつひとつが大きく、ユニバーサル基板や「差し込み式」で組むのはかえって不便なので)今でも木の板が一番便利である。

ワイヤラッピング式

ワイヤラッピングタイプ

1970年代には、基板に金属端子がニョキニョキと立っているもの(生け花の剣山の針の密度が低いようなもの)が現われていた。そこに線を巻きつけること(ワイヤラッピング)で、はんだづけをしなくても回路をつくることができた。

ユニバーサル基板タイプ

「ユニバーサル基板」と呼ばれる汎用のプリント基板、つまり電子部品を取り付けるための穴が規則的に多数並んでいて穴周囲にはんだ付けするための銅薄膜(ランド) が付いた基板、もブレッドボードの一種である。1991年ころまでは主流だったタイプであり、特に、高周波回路や大電流を流す回路の試作では今もこちらが用いられ(差し込み式は不適なので(後述)、結果としてプリント基板しか使えないので)、主流である。(ソルダーレスタイプと異なり、穴に部品のリード線やジャンパーワイヤーを差し込むだけでは済まず)電子部品のリード線やワイヤー類をはんだづけする必要がある。

様々なタイプがあり、碁盤の目のように単純に穴ひとつとその周囲に銅薄膜(ランド)が並んでいて穴と穴の導通(電気的な接続)はリード線で行うもの、あらかじめ穴が複数個でグループ化し導通しているもの、あらかじめ全ての穴と穴が碁盤の線のような銅薄膜で全て導通していて不要な線を使用者がカッターで切断するもの、などがある。

プリント基板方式のプロトタイピング基板の主な材質(素材)は、最近は一般に「FR-4」「FR-3」「FR-1」「CEM-3」...などといった簡便な用語で分類されている。たとえば「FR-4」はガラス布基材エポキシ樹脂銅張積層板(※ガラス布とは、ガラス繊維で織られた。それをエポキシ樹脂で固めたもの。)、「FR-3」は紙フェノール(=フェノール樹脂で固めたもの)、「FR-1」は紙基材フェノール樹脂銅張積層板、「CEM-3」はガラス布・ガラス不織布基材エポキシ樹脂銅張積層板、である。いずれも絶縁性がある素材である。ランド(はんだ付けするための金属箔)が作られている面の数については 片面だけのもの(片面基板) / 両面のもの(両面基板)がある。スルーホール(基板を貫通した穴)の周囲のランドの形状についても細かい区別を言うと、丸型 / 角型 がある。

差し込み式

穴にリード線を差し込むタイプで、歴史で説明したように、1971年にRonald J.Portugalが特許を取得した。特許取得から20年後にいわゆる「特許切れ」になって誰もが自由に製造できるようになって以降に(つまり1991年以降に)、製造者が次第に増えてゆき、次第に普及しはじめた。(かつてはソルダーレスでもワイヤラッピング方式もあったのだが)現在ではソルダーレス式では差し込み式しか実際上は使われていないので、差し込み式のことを「ソルダーレス」と呼んでしまうことが多い。

ブレッドボードの図。図のものは大きく4つの区画に分かれているタイプ。赤線と青線は一対のバス。この図のものは、計4組のバスがある。各穴には1,2,3...と番号が振ってあり、またA,B,C,D,Eとアルファベットが振ってあり、数字とアルファベットで穴を特定できるようになっているので、理解したり他者に説明することが容易である。「1」の行のA,B,C,D,Eの穴は互いに(裏側で)導通している、が「2」の行とはつながっていない。例えば1-Aの穴と1-Bの穴に差し込んだものは互いにはんだづけしたような状態になり電流が流れる。が、「1-A」は(そのままならば)隣の行の「2-A」「2-B」...とは絶縁している、という関係になっている。つまり異なる行同士を導通させるにはジャンパー線が必要

ソルダーレスタイプのブレッドボードは、回路の変更が瞬時に自在にできる。素子を抜いたり差すだけで交換することができる。また、ジャンパーワイヤーの抜き差しで回路変更も自在である。回路の試作・実験用、また電子回路に関する学習教育用として広く用いられている。

穴の間隔が、(基本的に)汎用のIC(集積回路)の足の間隔(DIP ICピッチ。2.54ミリ)と一致しており、ICもそのまま差しこむことができる。

複数のブレッドボードを並べて互いに接続して用いることもできるので、大規模な回路も組むことができる。

不向きの回路

ただし、差し込み式のブレッドボードはその性質上若干の制約があり、大きな寄生容量(回路によっては寄生インダクタンスも)があるため高周波回路(おおむね10MHz以上)には向かない。また、接点の抵抗のため大電流を流す回路(おおむね500mA以上)にも向かない。

脚注


関連項目



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