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中水道
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中水道(ちゅうすいどう)とは、生活排水や産業排水を処理して循環利用するものを指す。中水または雑用水とも呼ばれる。その用途は具体的には水洗トイレの用水、公園の噴水など、人体と直接接しない目的や場所で用いられる。
背景と効果
都市部をはじめとする人口の集中地帯では上水道の新規水源の開発が高価となり、建築物の集中により下水道の容量が不足してきた。また、都市化の進展での田畑や緑地の減少により雨水の地中浸透率が減少し都市型洪水が発生するようになってきた。
排水量の減少と雨水の一時貯留が求められるようになり、そのために大規模都市開発のときに雨水浸透施設とともに水再利用施設としての中水道設置が義務付けられるようになってきた。
大雨のときの流出量や上水の使用量などの減少で周辺環境を改善する効果が期待されている。
問題点
既に普及している上水道と異なり、管路網などの送水設備を整備する必要があり、使用用途も限られるため、スケールメリットに劣り、高コストとなり易いなどの問題があるため、一部大規模施設内における設置及び運用を除き、現在のところ殆ど普及していない状況にある。
循環方式
- 建物内循環方式: 単独の建物ごとに施設を設置するものである。付属の浄化槽を通じて中水を排出するものが主であることが多い。
- 地区循環方式: 都市再開発などで、地区内の排水を集め複数の建物に供給するものである。
- 広域循環方式: 下水処理場の処理水を利用するもので、工業用水道と施設を共用するものも多い。
処理施設について
原水の種類
- 地下水: 清澄な水であれば、日本酒などの原料として上水として用いられることも有るが、不純物が混じっていれば適さない場合に中水に回されるケースもある。
- 雨水: 質がよく処理が簡単であるが、雨粒の核には微量の土粒などが含まれており、または屋根の樋などに付着する土埃などが混ざることもあり、水以外の堆積物が底部に蓄積することもある。主にドーム球場など大型施設で雨水を蓄積し、水洗便所用に利用されることが多い。
- 井戸水: 古くから生活用水として使われていた。現在は災害用などに供される場合もあるが、大抵は中水として利用されることが多い。
- 雑排水: 屎尿・厨房排水が含まれていないため、塩の濃縮がなく処理水の質をよくすることが出来る。
- 工業廃水 : 工業と言う業態の性質ゆえ、重金属などの不純物を除去したうえで放流ないし、再利用されることもある。
- 厨房排水: 残滓や廃油など、汚染物質を多く含み直接下水道に流せないことも多く、阻集器などの厨房排水除害施設が設けられる。その処理水を利用する。
- 屎尿排水: あるいは汚水とも呼ばれる。便所や汚物処理室などから排出されるもので、屎尿やトイレットペーパーの繊維などが含まれ、感染症の防止などに浄化槽を含め、特別の配慮が必要である。
- 医療排水: 病院・歯科医院などで、手術・処置の際に排出されるもの。血液や痰などが人体からの排出物が含まれているため、感染症防止のための処理をしたうえで利用することもある。
用途
※上水とは異なり、塩素などによる消毒がなされないことや、飲用水などに適する水質の基準が満たされない事もあり、人体に直接触れるおそれもあるため使用できない用途も発生する。付属金具に関しても同様。
- 使用可能な設備や用水
など
- 使用不可の設備や用水
- 一般家庭の屋外における水栓(庭の散水や洗車以外にも水遊びの用途に使われるため。)
- 冷水機や給茶機サーバーなどの飲み物を提供する設備や製氷機、公園・駅などの水飲場
- 洗面器・手洗器、人工肛門または尿瓶などを洗浄する器具
- 医療用の洗浄機器
- シャワー(浴室や便所内の失禁用、厨房エリアの配膳車の洗浄、理髪店の洗髪器など)
- ミスト・加湿器
- 連合流し
- 化学実験に用いられる流し
- 台所や厨房設備
- 洗濯設備(コインランドリーなども含まれる)
- 浴室や温浴施設(サウナなども含まれる)
- プール(消毒槽やシャワーなどを含む)や親水目的の設備
- 生け簀や水槽、釣り堀・水族館等、生物を飼育・観賞する設備。
- 魚河岸などのように魚介類を扱う施設。
- 神社の境内にある浄めのための水。
- 食品加工に使われる工場の中水使用が可能な箇所を除く一切の設備。
- 水洗便所の便器のうち、人体に直接触れるもの(上記)
- 建築・土木工事における作業用の仮設の給水設備(飲料水の他にも多目的の用途に使われているため)
- ガソリンスタンドやバスの車庫、物流センターなどで使用されている洗車機(しぶきが人体に触れる可能性があるため)。
- スプリンクラー(消火用)や防火設備としてのウォータースクリーンなど、人命を保護する目的での防火の用途としての設備。
- 中水使用可能な用途以外の給湯設備全般
など
水質目標
- 衛生上問題のないこと
- 利用上支障、不快感がないこと
- 機器等に悪影響を及ぼさないこと
- 管理基準の判定・確保に必要な指標があること
- 水処理技術が安全性が確立されていること
- 水質維持のためのコストが合理的なこと
中水道の水質基準
※便器洗浄水は、濁度の基準はない。
その他の基準
- pH値、臭気、外観、残留塩素は7日以内に1回検査。
- 大腸菌、濁度は2ヶ月以内に1回検査。
- 中水道に手洗い付洗浄タンクは使用しないこと。
- 配水に関しては中水道管には飲料水道管とクロスコネクション防止の区別のため、着色などをすること。
※残留塩素基準…遊離残留塩素は0.1ppm(結合残留塩素の場合は0.4ppm)を保持。
その他
- 毎日、維持管理の記録を付け、整理しておく。
- 建築基準法による建築設備定期検査においては、国土交通省が定める雑用水の通水試験を行い、上水などへのクロスコネクションがないか、着色剤を中水タンクに注入するなどで検査を行う。
- 配管やタンクに上水と区別するために中水の表示をする。
参考文献
『2008年版 建築設備定期検査業務基準書』国土交通省住宅局建築指導課監修。 編集:一般財団法人 日本建築設備・昇降機センター