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塵旋風
塵旋風(じんせんぷう)とは、地表付近の大気が渦巻状に立ち上る突風の一種である。一般的には旋風(せんぷう、つむじかぜ)や辻風(つじかぜ)と呼ばれ、英語ではダストデビル(Dust devil)と呼ばれる。竜巻と誤認されることがあるが、塵旋風と竜巻は根本的に異なる気象現象である。
概要
塵旋風(じんせんぷう)とは、地表付近の大気に上昇気流が発生し、これに水平方向の強風が加わるなどして渦巻状に回転しながら立ち上る突風の一種である。乾燥した土や砂などの埃、細かい落ち葉やゴミといった粉塵(ふんじん)が激しく舞い上がることから塵旋風と呼ばれる。対流混合層がよく発達した晴天で強風の日中などに砂漠・荒地・空き地・田畑・運動場・駐車場などのある程度の広さがある場所で発生しやすく、小規模な塵旋風であれば日常生活の中でも比較的容易に見ることができる。大部分の塵旋風は無害であるが、ごく稀に大規模な塵旋風が発生して人や建物などに被害を及ぼすことがある。
塵旋風は、一般的な日本語では「旋風」(せんぷう、つむじかぜ)や「辻風」(つじかぜ)と呼ばれ、ニュースや天気予報などでは「塵」(じん)という漢字を平仮名にして「じん旋風」と表記することもある。英語では「ダストデビル」(Dust devil)と呼ぶことが一般的で「埃の悪魔」という意味だが、「ダストワール」(Dust whirl)と呼ぶこともある。なお、ダストデビルよりも細長く渦巻いて立ち上るような場合は「ワールウィンド」(Whirlwind)と呼ばれ、ワール(Whirl)には「渦巻く」や「目眩」といった意味がある。雪上などの別環境で発生する場合は「スノーデビル」(Snow devil)や「アッシュデビル」(Ash devil)や「スチームデビル」(Steam devil)と呼ばれる場合もある。
これらの気象現象の厳密な区分は困難であるが、何れも突風の一種として分類される。また、これらの気象現象は竜巻(トルネード)と誤認されやすいが、塵旋風と竜巻は定義や発生要因が根本的に異なる。
定義
塵旋風の定義を簡潔に述べるため、日本の気象庁や気象研究所、日本気象学会などによる竜巻の定義と併せて述べる。
- 竜巻の定義
- 上空の大気状態が主な発生要因である。具体的には、突風前線面での寒気と暖気の衝突による上昇気流や、シアーの大きい風の収束などが挙げられる。
- 主に、どんよりと暗く低い雲が立ちこめる、荒天時に発生する。
- 地表から上空の積乱雲の中へと回転性の高速の上昇気流が立ち上り、上端の高度は数百 m - 1 km程度に達する。
- 地面から巻き上げられた砂や塵、海面から巻き上げられた水滴が立ち上っていることが多い。また、積乱雲から柱状または漏斗状の雲が垂れ下がることが多い。
- 気象現象として大規模で、付近の天候が急激に変化することがあり、雹(ひょう)や霰(あられ)が突然降り出すこともある。
- 襲来前後にダウンバースト等の激しい下降気流が発生することが多い。
- 竜巻の直下や付近に建物などが存在した場合、甚大な被害を及ぼす可能性は高く、自然災害となり得る。
- 竜巻の規模を計る指標として、シカゴ大学名誉教授の藤田哲也による「藤田スケール」が国際的に知られている。
発生要因
まず、太陽光などによって地表の温度が上がり、同時に地表付近の大気が熱せられることで混合層内にセル状の対流(ベナール対流)または、乱流状の対流が発生する。収束域(上昇気流域)になんらかの原因で発生した大規模な回転(回転源)が加わると、角運動量保存のためコンパクトで強力な渦になり、塵旋風になると考えられている。つまり、塵旋風が発生する時の上空は混合層がよく発達した強い日差しの晴天であることが多い。これは、竜巻が発生する時の上空の様子とは大きく異なる点であるが、収束による鉛直渦度の引き伸ばしという直接的な原因は竜巻や、水面で見られる蒸気旋風などと同様である。
暖候期の晴天時に強風の注意報や警報が出れば発生しやすい気象条件と言えるが、寒候期においても晴天時に強風が加われば発生する気象条件となり得る。また、地表だけでなく海面や湖面でも発生する可能性がある。なお、太陽光ではなく、建物の火災や山火事などで地表が熱せられて渦巻状の火柱が立ち上る現象は火災旋風と呼ばれる。
形状
塵旋風の形状は渦巻状または漏斗状で、鉛直軸の回転方向は風向や地形次第で右巻きにも左巻きにもなる。地球の自転による転向力(コリオリ力)の作用で、例えば北半球では左巻きになるなどと誤解される場合もあるが、塵旋風は気象現象として小規模であるため転向力が影響することはほとんどない。また、多くの粉塵が舞い上げられている場合は、外見上の透明感が急減したり、付近の大気よりも暗い色合いで茶色っぽく見えたり灰色っぽく見えたりすることが多い。何れも地表側から上空側へ向かって渦巻状に立ち上るが、大規模な塵旋風でも最大直径は50 mから100 m程度、最大高度は数百 m程度であり、雲があるような高度(km単位)に達することはない。また、発生から終息までの時間は長くても数分程度である。
被害
塵旋風の被害は粉塵が舞い上がる程度で、被害あるいは自然災害と呼ばれるような規模には至らない場合がほとんどである。ただし、稀に風速30 m/s前後(藤田スケールでF0 - F1相当)の大規模な塵旋風が発生し、建物などに大きな被害をもたらすことがある。
近年の報告例としては、2009年9月に大分県日田市で塵旋風が発生した際、運動会のテントが飛散するなどした。また、2011年3月には宮崎県宮崎市でビニールハウスが損壊する突風が発生し、目撃証言などから塵旋風による被害と推定されている。
映像ギャラリー
映像については本項目の「参考・外部リンク」も参照のこと。
地球の塵旋風
2006年1月、タイのシーサッチャナーライ郡で発生した塵旋風の写真。
火星の塵旋風
地球以外の惑星でも、気象条件が揃えば塵旋風が発生することが観測によって明らかになっている。報告例としては、アメリカ航空宇宙局(NASA)のジェット推進研究所(JPL)が担当する火星探査計画マーズ・エクスプロレーション・ローバーの無人探査機スピリットによる観測がある。
無人探査機スピリットは2003年に打ち上げられ、2004年に火星に着陸して様々な観測を開始、2005年以降に偶然であるが数回にわたって塵旋風の撮影に成功した。この中で最も鮮明に写っている右映像の塵旋風は、2005年5月15日(地球時間)に撮影され、NASAとJPLはこれを塵旋風と判断して2005年5月27日に公式サイトで公開した。この際のプレスリリース「風で移動する火星の旅人」(Wind-Driven Traveler on Mars)によると、この塵旋風はグセフ・クレーターの中にある丘陵コロンビア・ヒルズ付近で午前11時48分頃(火星時間)に発生し、約9分30秒間(静止画像21フレーム分)にわたって連続撮影されたものである。画像解析の結果、この塵旋風は最大直径が約34 mで、画面内の移動距離は約1.6 km、移動速度は時速約17 kmだったという。
旋風や辻風の用法
日本語としての「塵旋風」はあくまでも気象用語である。しかし、日常生活の中でも比較的容易に見ることができる気象現象であるため、一般的な「旋風」や「辻風」などは気象現象を指す用法としても比喩的な用法としても古くから人々に親しまれてきた。気象現象を指す用法の古い例としては、平安時代の歴史物語『大鏡』に「俄(にはか)に辻風(つじかぜ)の吹きまつひて」などの記述がある。比喩的な用法の例としては、1909年に夏目漱石が発表した小説『それから』に「彼の頭には不安の旋風(つむじ)が吹き込んだ」などの記述がある。
以下、主に比喩的な用法を述べる。
比喩的な用例
比喩的な用法では、一過性の流行や突発的な社会現象などを喩えることが多い。ブームやフィーバーといった外来語と同義の意味合いでマスメディアなどで用いられる。
- 赤嶺旋風
- 1947年、プロ野球選手の赤嶺昌志が他選手を巻き込んで集団辞任した様子を喩え、マスメディアで使用された。
- 小泉旋風
- 2001年、首相の小泉純一郎が率いる自民党が選挙で圧勝した様子を喩え、マスメディアで使用された。
人名や題名での用例
同じく比喩的な用法であるが、登場人物の性格や物語の内容を象徴するイメージとして使用されることが多い。
- 辻風典馬
- 1935年から1939年にかけて、吉川英治が連載した小説「宮本武蔵」に登場する架空の人物の名前。読みは「つじかぜ・てんま」。
- ハリスの旋風
- 1965年から1967年にかけて、ちばてつやが連載した漫画と、その後にテレビアニメ化された際のタイトル。読みは「はりすのかぜ」。
その他の用例
参考・外部リンク
- ナショナル・ジオグラフィックの公式サイトより。1994年8月、アメリカのバーモント州で発生した塵旋風。子供たちが遊ぶ野原で発生しており、土埃ではなく枯れ草が舞い上がっている。また、回転速度があまり早くないことなどから、気流の動きを観察しやすい。約30秒のCMが入った後で、約40秒の動画を見ることができる。
- ナショナルジオグラフィック日本版の公式サイトより。火星探査衛星マーズ・リコネッサンス・オービターが約250km上空から撮影した火星の地表の写真。