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鼓膜
鼓膜(こまく, eardrumまたはtympanic membrane)は四肢動物の耳の一部を構成する薄い膜状の構造。音波を受けて振動することで、空気の振動を機械刺激に変換する。
動物の鼓膜
鼓膜は両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類において見られる。両生類は外耳を持たず、したがって鼓膜は体表に直接露出する。現生の有羊膜類における鼓膜は外耳と中耳を隔てる薄い膜上の構造として存在するが、哺乳類と現生爬虫類・鳥類の進化的起源は異なり、両群において鼓膜は独立して獲得されたものであると考えられる。
また、昆虫の一部も「鼓膜」を有する。この鼓膜は体表のクチクラが薄くなった部位であり、鼓膜器官の一部を構成する 。
ヒトの鼓膜
中耳と外耳の境目にある、直径8 - 10mm、厚さ0.1mmの膜で、耳小骨に音を伝える。正常時には光沢のある灰白色をしている。鼓膜は、鼓膜弛緩部pars flaccidaと鼓膜緊張部pars tensaとに大別される。
鼓膜弛緩部は比較的、脆弱であるが、槌骨外側突起上にあり、2層からなる。鼓膜弛緩部は、耳管機能障害と真珠腫に関連する旨が示唆されている。
鼓膜緊張部は外耳側から順に、皮膚層、繊維層、粘膜層の3層からなる。鼓膜緊張部の周辺部は厚くなって線維軟骨輪を形成し、鼓膜輪またはゲルラッハ靭帯と呼ばれる。繊維層は、放射状、円形、放物線状の繊維を含み、槌骨の柄を囲む。鼓膜の穿孔は、通常、鼓膜緊張部で起きる。
臨床
慢性中耳炎では一般に鼓膜の穿孔が起こる。
鼓膜が中耳側に陥入して嚢胞を形成し、内部で上皮が増殖して真珠腫を生じることがあり、これを真珠腫性中耳炎と呼ぶ。真珠腫は進行すると、耳小骨を融解させて難聴を引き起したり、顔面神経を障害したりすることがある。
鼓膜も、皮膚と同じく再生することが可能である。大体1週間 - 10日程で再生する。
小さな子供が鼻水をすすった際に耳の奥へ溜まってしまう場合がある。この際は鼓膜に穴を開け吸い出すのだが、親が同意を求められた際に過剰に反応する場合がある。鼓膜が再生することが認知されていなかったり、聴覚は鼓膜だけによるものではないこと(鼓膜を損傷してもある程度は聴こえる)が理解されていなかった場合などがある。実際は上記の通り、再生するので過剰に反応する必要はない。