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塩化カリウム
塩化カリウム | |
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識別情報 | |
CAS登録番号 | 7447-40-7 |
E番号 | E508 (pH調整剤、固化防止剤) |
特性 | |
化学式 | KCl |
モル質量 | 74.551g/mol |
外観 | 白色結晶 |
密度 | 1.987 g/cm3 |
融点 |
776 °C, 1049 K, 1429 °F |
水への溶解度 | 28.1 g/100 mL (0℃) 34.0g/100 mL (20℃) 56.7g/100 mL (100℃) |
構造 | |
空間群 | Fm3m |
格子定数 (a, b, c) | a = 6.278 Å |
配位構造 | 6 |
熱化学 | |
標準生成熱 ΔfH |
-436.747 kJ mol-1 |
標準モルエントロピー S |
82.59 J mol-1K-1 |
標準定圧モル比熱, Cp |
51.30 J mol-1K-1 |
危険性 | |
安全データシート(外部リンク) | ICSC 1450 |
NFPA 704 | |
半数致死量 LD50 | 2600 mg/kg(経口/ラット)、142 mg/kg(静脈注射/ラット) |
関連する物質 | |
その他の陰イオン |
フッ化カリウム 臭化カリウム ヨウ化カリウム |
その他の陽イオン |
塩化リチウム 塩化ナトリウム 塩化ルビジウム 塩化セシウム |
出典 | |
塩化カリウム | |
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。 |
塩化カリウム(えんかカリウム、potassium chloride)は化学式 KCl で表されるカリウムの塩化物で、結晶格子は塩化ナトリウム型構造をとる。工業的には塩加、塩化加里、塩化カリ。食卓塩および食物に含まれるため日常的に摂取されている。
化学的性質・用途
水溶液中では電離してカリウムイオン (K+) と塩化物イオン (Cl-) になる。味は苦味を伴う塩味。水などの極性溶媒に対し吸熱的に溶解する。
- KCl(s) → KCl(aq), ΔsolnHº = 17.21 kJ mol-1
水酸化カリウムと共に、最も一般的なカリウム源として化学工業に用いられる。工業原料の他、農業資材としてカリウム肥料としても市販されている(単肥として売られるだけでなく、複合肥料の原料としてよく用いられる。)。
赤外線領域での光線透過率が高く、塩化ナトリウムや臭化カリウムなどと共に赤外分光用の窓や試料の封止材としても使用される。
また水溶液中の電気伝導において陽イオンおよび陰イオンの輸率がほぼ等しいため液間電位が小さく、電気化学測定において塩橋の電解質、pH電極の内部液、電気伝導度測定の校正用標準液などに用いられる。
各溶媒に対する塩化カリウムの溶解度 (g KCl / 100 g (25 ℃) | |
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H2O | 36 |
液体アンモニア | 0.04 |
液体二酸化硫黄 | 0.041 |
メタノール | 0.53 |
ギ酸 | 19.2 |
スルホラン | 0.004 |
アセトニトリル | 0.0024 |
アセトン | 0.000091 |
ホルムアルデヒド | 6.2 |
アセトアミド | 2.45 |
ジメチルホルムアミド | 0.017–0.05 |
出典: Burgess, J. Metal Ions in Solution (Ellis Horwood, New York, 1978) ISBN 0-85312-027-7 |
食用
古代から日本で作られている藻を燃やして作られる藻塩、アフリカの内陸部などで植物を燃やして得られる灰塩などに多く含まれる。
ナトリウムによる高血圧などの影響を軽減するために、塩化ナトリウムと混合して食用塩(減塩しお)に用いられることもある。ただし、塩化カリウム特有の苦味のため、塩化カリウムを混合できる割合は限られている。甘味料のソーマチンなどを加えると、苦みは軽減される。
肥料
硫酸カリウムとともに代表的なカリ肥料であり、硫酸カリウムより安価なため選択される機会が多い。吸湿性は保存や取り扱い面で不利であるが、一方で土壌に含まれるリン酸三石灰に作用して可溶性のリン酸三カリウムに変化させる役割を果たす。吸湿性の高さは不純物の塩化マグネシウムの多寡による。乱用すると石灰分が流亡するため、有機質肥料などを併用することがある。
化学原料
- (電気分解)
石油や天然ガスを掘るときに出る掘削泥水に使用される。これは1980年ごろに開発された手法で、KClポリマー泥水と呼ばれる。カリウムイオンが粘土の膨潤と分散を抑制し、泥岩層の切削に優れた性質を示すことから塩化カリウムが使用される。
医学
カリウムイオンは体内で、ナトリウムと共に膜電位の形成に寄与している。通常の状態ではカリウムイオン濃度は細胞内で高く、体液(血液も含む)中では低くなるように維持されている。血液中のカリウムイオン濃度が低い状態では、低カリウム血症という倦怠感、脚のけいれん、脱力感といった症状を示すことがある。低カリウム血症の治療として静脈注射されるが、薬剤の規定量が決められており、腎疾患などがある場合は投与に慎重さを求められる。
入手が容易で確実に効果があることから、開発途上国でも取り揃えやすいように選定されているWHO必須医薬品モデル・リストの候補としても挙げられている。
腎疾患や高濃度の静脈内投与等により高カリウム血症を起こさない限りは安全であるが、高カリウム血症となった場合は副作用として、吐き気、腹痛、消化性潰瘍疾患などを引き起こす。さらに血中に高濃度のカリウムが投与されると、不整脈から最悪の場合は心不全にいたり死亡することがある。
- 心臓手術
- 心臓手術では、高濃度の塩化カリウムを含んだ心筋保護液を 人工心臓に切り替えた後に、温度を低下させた心臓の血管に投与し急速弛緩性心停止させる。術後に高カリウム血症となる場合があるが、血液濾過法(DUF: Dilutional Ultrafiltration)や透析、落差灌流式血液透析濾過法などの血液浄化法を行っている。
- 死刑の際には、three drug cocktail と呼ばれる 3つの薬剤が使用される。(1)意識を喪失させる薬剤(2)呼吸する筋肉を止める薬剤(3)心停止させる薬剤の3番目に使用されるが、(1)が正常に機能しなかった場合は、苦痛を感じることとなる。この方法は、手順が煩雑でミスが起きやすい。そのため、残酷で異常な刑罰を課すことを禁じるアメリカ合衆国憲法修正第8条に反するという意見もあり、一度の薬物投与で済むバルビツール酸系の薬物に変える議論も起きている。
製法・産出
水酸化カリウムと塩酸の中和反応によって作ることが可能である。工業的には鉱産物を精製して得られる。
植物はカリウムを栄養素としており燃やして得られた灰から得られる塩(海藻を燃やして得られる藻塩、内陸部で植物を燃やして作られる灰塩)に多くみられる。また、海塩を作る際に出るにがりを構成している成分の一つである。
そして、鉱物として自然産出もし、カリ鉱石として採掘される。鉱物名はカリ岩塩(シルビナイト)。岩塩とともに内陸に閉じ込められた海水や塩湖から析出して鉱床を形成する他、火山の噴気から少量が結晶した状態でも産出する。主要産地は、ベラルーシ、イスラエル、ヨルダン、アメリカ、カナダ、フランス、ドイツ、チリ、ブラジルで、旧共産圏が圧倒的な埋蔵量をもつ。日本の産地は千葉。また、海草からも抽出可能。日本は大半を輸入している。
塩化カリウムの具体的な精製方法はいくつかあることが知られている。まず一つは溶解度の差を用いるもので、混合物を水に溶かし、水を蒸発させつつ連続して結晶化させるものである。この方法の欠点は、熱を加えるのに大きなエネルギーが必要で、コストが高くなりがちだということである。もう一つの方法は、いわゆる浮遊選鉱法である。まず混合物に飽和食塩水を加え、次に空気を懸濁液に吹き込み塩化カリウムの結晶を選択的に気泡に付着させ、その塩化カリウムの泡を表面からすくいとるというものである。塩化ナトリウムの結晶は底に沈んだところを回収する。この方法はコストを抑えることができる。他の方法としては、静電的なプロセスも用いられることがある。
脚注
関連項目
外部リンク
- 国際化学物質安全性カード 塩化カリウム (ICSC:1450) 日本語版(国立医薬品食品衛生研究所による), 英語版
- 塩化カリウム (試薬) JISK8121:2007