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生理の貧困
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生理の貧困

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生理の貧困(せいりのひんこん)とは、経済的な理由などから生理処理用品を入手することが困難な状態にあることを指す。

経済的な理由のほかにも、羞恥心により購入に躊躇いがあることや、家族の無理解により入手ができないということが、2021年3月に国際NGOのプラン・インターナショナルが15歳から24歳を対象に実施したアンケートで示された。

定義とその変遷

イェール大学のGabrielle Joy Danielsによる2016年の論文ではカンボジア農村社会で月経の貧困(Menstrual Poverty)が新たな貧困の形として、月経への物資の支援の不足や身体的並びに精神的苦痛、周囲の反応への不安などが注目されている。

アメリカではAmerican Women’s Medical Association(アメリカ医学女性協会)によって「生理に関する衛生的な手段や教育が十分に行き届いていない状態を指す」と定義されており、経済的理由だけでなく、教育不足により生理用品にアクセスできない状況も生理の貧困であると定義している。

日本語の「生理の貧困」は「Period Poverty」という英語を和訳したものであり、「経済的な理由で生理用品が買えないことだけではなく、物資にアクセスできない」ことを指す。また、この背景には生理がタブー視されてきた歴史と、男尊女卑の政治・社会構造が影響している。

UNウィメン日本事務所所長の石川雅恵は、「「生理の貧困」の根源は人権問題であり、女性が衛生的に生活できる環境の確保も、守れらるべき「基本的人権」である」と言う。日本国内での「生理禁忌」の風習は平安時代に溯り、慣習や風習での「生理タブー視」は今でも根強く、悩みを持った女性が声を上げづらい状況、政治の現場に女性が少ない構造につながっている。石川は「世界中の女性が生理期間を安心して過ごせるようになれば、社会的な機会損失がなくなって経済の向上にも寄与する。生理の問題は「社会全体の課題」とすべきだ」といった。

2019年10月19日に、アメリカのNPOが、この日を「National Period Day(生理の日)」と定めた。「生理をタブー視せず、生理のある誰もが生理用品を入手可能にする」こと、つまり「生理の平等化」を求め、全米の各地でデモ行進も行われた。

スコットランドでは、「生理の貧困」との呼び方が「女性のヒューマンライツを損ねる」という声が上がり、「生理の尊厳」(period pride)または「生理の公平」(period equality)という表現に変わりつつある。スコットランド地方議員アリソン・エビソンは、「女性の尊厳を守るために、言葉を変えるという考えに至った」と言った。

貧困層や学生に生理用品を配布しているイギリスのNGO"period poverty.uk"は、Twitterに「真の生理の平等には、生理用品への平等なアクセスと、生理への考え方の社会的変化が必要だ」と投稿した。

要素

「生理の貧困」を構成する要素は、大きく3つある。

経済的貧困
経済的な問題で生理用品を買えない最大の要素で、高校生以上の学生の5人に1人が、生理用品を入手できない状態にあるという報告がある。
知識の貧困
生理についての知識や教育が、親などから十分に施されてなく、適切な手当てができない状態。
家族関係の貧困
生理が来たことを親に言えなかったり、生理痛を訴えても「生理は痛いものだから我慢しろ」などと、生理の辛さを親に頼れない状態。

施策とそれに対する反応

イギリス

イギリスでは、2014年から生理用品の税金撤廃を求める署名運動が起こり、2021年1月から生理用品に対する付加価値税タンポン税)が廃止された。

スコットランド

2020年11月、スコットランド議会において生理用品の無償提供に関する法律が成立した。生理用品の購入による経済的な負担をなくすことを目的としており、学校や公共施設において生理用品を必要とする全ての人を対象として無償で配布する。これにより、地方自治体には対象となる人が無料で生理用品を入手できるようにする法的義務が発生した。きっかけは2017年にグラスゴーで始まった、地元自治体が高校などに生理用品を提供する社会実験で、生理用品を教師からもらうのは恥ずかしい生徒もいるため、トイレに置くことになった。これに尽力したのが高校3年生の女性で、13歳で初経が来たときに、父親が「恥ずかしい」と言う理由で生理用品を買ってくれず、別居中の母親のもとへ行って受け取っていた過去がある。そのため、「生理の貧困の問題を解決するには、男性の理解が不可欠だ」と言う。放課後に発案した生徒が毎日トイレを巡回して補充を続け、2018年には事業化されて、市内の全校に拡大された。2021年現在、各自治体と提携した企業が学校・図書館・美術館などに生理用品を供給していて、年間の予算が£870万と見積もられている。

2020年11月24日、スコットランド議会は、生理用品を無料提供する法案を全会一致で可決し、2022年8月15日に施行された。これにより、国内全ての地方自治体や教育機関が、生理用品を無償提供する義務を負う。社会正義担当大臣ショナ・ロビソンは、「生理用品の無償提供は、平等と尊厳に欠かせない」とのメッセージを発表した。

フランス

フランス国内では、「生理の貧困」の問題を持つ女性が170万人以上いたが、2020年、フランス政府はホームレス女性や刑務所にいる女性を対象に生理用品を無償とする施策を発表。さらに2021年2月に全ての大学生を対象に生理用品を無償で配布することを発表した。同年9月からの新学期までに全ての大学生が手に入れられるようにすることを目標としている。

大手リサーチ会社の2019年の調査結果を受け、フランス高等教育・研究・改革省は、生理用品へのアクセスは「国内の保健衛生問題」と認め、2020年2月には€100万の予算で生理用品の実験的な無償配布を始めた。公立高校でも、生徒会での生徒の発言がきっかけで、学校側がすぐに問題を地域圏に共有し、瞬く間に各校で生理用品の設置が始められた。2021年には、生理用品対策に充てる国家予算が、前年の5倍に増額されている。

ニュージーランド

ニュージーランドでは、2021年6月から学校施設において生理用品を無償で配布することが決定している。

韓国

2019年11月、ソウル市において満11歳から18歳の全ての女子児童に対して生理用ナプキンを支給するとした条例改正案が可決された。

アメリカ合衆国

2017年、アメリカ司法省は、受刑者に無料で生理用品を与えるように、管轄の刑務所に指示を出した。

2021年には、37州で生理用品に関する法案が提出された。

2022年3月8日の国際女性デーに合わせ、「シリアルのおまけに生理用品が付いてくる」という架空の広告動画が公開され、話題を集めた。アメリカでは低所得者向けの食費補助制度があるが、その制度で生理用品を買うことはできず、かつ、いくつかの州ではタンポンは「贅沢品」として課税の対象にもなっているため、広告を制作した会社は「生理用品は食料やトイレットペーパーと同じく、必要不可欠なものだ」と、制作意図を言った。

CDCが「性教育の重要項目」としている内容を授業で教えている学校は、アメリカ全体で高校の38%、中学校の14%だけだという統計がある。ニューヨーク在住の女性が、「元彼は女性がみな毎月15日に生理が来ると信じていた」というtwitterの投稿に、19万以上のfavが付き、数多くの女性が「男性の勘違い」をシェアすることになった。

米国では、2022年5月28日までの1年間に、生理用ナプキンの価格が8.3%、タンポンの価格も9.8%上がった。2021年4月の調査で、5人に2人が生理用品の購入に苦労しているのが判明した。2018年の調査から35%増えている。

カリフォルニア州

カリフォルニア州では、2021年10月8日、州知事が新法律に署名して、州内の公立学校と大学で、2022年~2023年の学期から、生理用品を無料で配布することとなった。同州在住の女性が、生理用品の購入で課税されていた額は、年間2000万米ドルだったという。

ニューヨーク州

ニューヨーク州選出の下院議員グレース・メンは、生理用品を買いやすくするための議案2つを提出した。同僚議員のショーン・パトリック・マローニーは、自分の事務所のタンポン代を経費と認めるように求めて議会で言い争いとなった後、メンと連名で「女性用の衛生用品も使えるように」と下院議長に書簡を送った。

2019年10月19日(「National Period Day(生理の日)」)、ニューヨーク市は市内の公立学校全てで、ナプキンとタンポンを無料で提供することを発表した。

ミシガン州

ミシガン州アナーバー市は、アメリカ国内で最初に、市内全ての公衆トイレに、生理用品の無料提供を義務付けた都市となった。

オレゴン州

2021年、オレゴン州ポートランド在住の女性が、ホームレスの女性に困りごとを聞いたのがきっかけで、生理用品を配布するNPOを立ち上げた。さらに女性は政策提言活動や議員への立候補にも挑戦し、NPOの活動はアメリカ全州や他に25か国にまで広がっている。

ブラジル

貧困層の3割に当たる1100万人の女性が「生理の貧困」問題に直面しているとされるブラジルでは、2022年2月、リオデジャネイロの貧困地区(ファベーラ)で、寄付で集まった生理用品を、市民団体が無料で配布した。

カナダ

カナダの香水会社The 7 Virtuesが2022年に出した香水「ロータス・ペア」は、アメリカの非営利団体と提携し、売上金はネパールの若年女性への、支援や生理用品の提供に使われる。創業者のバーバル・ステグマンが生理をめぐる困難やスティグマに怒りを感じたのがきっかけで、生理の貧困問題に会社として全力で取り組む事の現れだという。

レバノン

生理の貧困問題解決のために、レバノン国内で生理用品の工場が稼働を始めたことを、日本の外務省女性参画推進室がtwitterに投稿した。

日本における「生理の貧困」

経済的問題

生理用品を買うお金がない、または利用できない環境にある状況は、開発途上国だけではなく先進国でも問題になっており、2016年には日本のホームレスシングルマザーの間で問題として挙げられている。

信濃毎日新聞』の社説では1か月あたりの生理用品に費やす金額を1000円とした場合、10代初めの初経から50歳前後の閉経までを累計すると、50万円近くを生理用品代に費やすと試算している。

花王によると、女性の生涯の合計8年から9年ほどの日数が生理期間に当たり、仮に12歳から50歳までを生理のある期間とした場合、平均的な生理周期では、合計で約1万枚のナプキンが使用されると試算している。2019年の花王の調査では、20代の女性の約8割は、生理用品を買う時に、機能よりも価格を重視すると回答した。

ライターのHonoka Yamasakiによれば、 13歳に初経が来て、50歳に閉経を来る仮定で計算すると、その間の37年間のうち、6年間分の日数を生理に費やすため、一人の女性が生涯の生理のために使う経済的負担は大きいとしている。

製薬会社のバイエル薬品の調査では、生理に伴う症状が原因で欠勤や労働の質が低下することにより、日本国内で約4911億円の労働損失が出るという試算がある。

プラン・インターナショナル・ジャパンが15歳から24歳までの女性を対象に2021年3月に実施した「日本のユース女性の生理をめぐる意識調査をめぐる意識調査」では、「収入」「生理用品の値段」「自分が使える金額」といった金銭問題により、生理用品を買えない、入手できない女性がいることが判明した。プラン・インターナショナルの長島美紀は、生理用品が生活費の優先度で高くなく、美容費などが優先されている調査結果を見て、「自分の体のケアに対する意識が低く、節約のため生理用品の交換を控えたり代用品でしのいだりしているのだろう」と分析している。

生理用品の他に、鎮痛剤低用量ピルを買う負担が大きいとの意見も目立つ。

歴史社会学者の田中ひかるは『現代ビジネス』の記事で、生理用品を軽減税率の対象とすべく署名活動を行っている「#みんなの生理」が高校生以上の学生を対象としたアンケート調査を取り上げた。そのアンケートでは671件の回答があり、2020年から過去1年の間で、金銭的な理由によって生理用品の入手に苦労した割合が20.1%、生理用品の交換頻度を減らした割合が37.0%、経血の処理に生理用品以外のものを利用した割合が27.1%となっている。その中には、母親のネグレクトや、生理に対する無理解などで、生理用品を買ってもらえない、または買うお金がもらえないケースもあった。また、ソーシャルネットワークサービス上で生理用品の入手に苦労したという体験談が流れ、共感が集まっていることを田中は指摘している。

日本放送協会の記事では、2019年以降の新型コロナウイルス感染症の世界的流行の影響でアルバイトの機会が減った結果、生理用品が購入できなくなってしまったものの、父親に重要性が理解されず、困窮した専門学生の取材が掲載されている。

知識の問題

生理の問題が今まで公にされなかった要因として、生理については家庭で母親が教える「しつけ」の問題と想定されており、学校で生理に対する教育が十分にされてこなかったことに理由があるという指摘がある。

プラン・インターナショナル長島美紀は、生理は恥ずかしいもの、隠すべきものという社会通念が根強く、生理の知識や手当の方法が社会全体で共有されず、PMS(月経前症候群)などの不調を周囲が理解できない状態が続いていると指摘している。

NHKの男性記者が、女性パートナーのために生理用品を買う時、「生理の状態に応じて複数の種類のナプキンを買う」ことを男性記者が知らず、戸惑っている。また、女性パートナーや娘と「生理の話をしたことがない」男性や、「生理痛がある女性の4人に1人は子宮内膜症の疑いがある」ことを知らなかった男性記者もいた。

2020 Women's well-being推進プロジェクトの1400人を対象にした調査では、男性の23.1%が生理を知らず、生理を「面倒臭いもの、煩わしいもの」と答えたのは、女性が42.6%に対して、男性は12.5%しかいなかった。

岩手大学の学生は、「生理の貧困」問題を機に、「男性にも生理の問題を理解してほしい」目的に活動している。

東京都国立市役所では、ユニ・チャームの社員を講師に招き、生理の基礎知識や配慮の方法などを男女の職員で共に学んだ。検修後、男性職員には驚きが多く、生理休暇を取りやすくするための改革が必要だと語った。

学校で勤務している養護教諭には閉経を経験した女性も多く、そういう人たちは生理用品の認識が古いままのことも少なくない。また30代~40代の親世代も同じで、生理用品の進化を知らず、最新の生理用品を見ると驚かれる。また父親にも、学校から初経の教育を断られたりなどで娘の生理について学ぶ機会がなく、ドラッグストアで何を買えばよいのかわからずに帰ってきてしまう父親も多い。

にじさんじに所属するバーチャルYouTuber壱百満天原サロメが、2022年7月1日の「Unpacking アンパッキング」ゲーム実況中、ゲーム内の部屋の中からタンポンの箱が出てきた折に、タンポンがどういうものか、どう使うのかをその場で説明した。その後、月経カップについても触れ、「男性は男性で大変だが、女性は女性で大変。生理の時は大変なので、男性も知っておいたほうが良い」と発言した。また、7月22日には、「生理痛のため今日の実況は休む」とtwitterに投稿した。ファンからは、「知名度の高いVtuberがこうしてオープンに言ってくれるのが、生理の辛さが伝わるのでありがたい」などの好意的な反応が多数寄せられた。

読売新聞のオピニオン欄では、生理痛で会社を休んだところ、出社時に上司が苦笑交じりに「私にはわからないが、諸記事や睡眠を通して体質を改善したほうが良いのではないか」と諭され、生理に理解のない不用意な言動に怒りや悲しみが溢れて涙が出てしまったと言う、23歳の女性の当初が乗った。

関係性の問題

東京大大学院准教授の甲賀かをりによれば、生理の問題がなかなか表面化してこなかった背景には生理は隠すのが美徳とされてきた日本の風潮があるとしている。生理で悩む若年層に、病気ではないから薬を使うことに母親が良い顔をしなかったり、生理で産婦人科に行くことや、子どもを産めば治るといった無理解があり、それを母親によるブロックと呼んでいる。また、親が生理用品を与えないネグレクトなどが原因の「生理の貧困」問題は以前からあり、コロナ禍で表面化しただけであると指摘している。

埼玉県川口市の中学校で勤務していた元養護教諭は、埼玉新聞の取材にて、「病気や傷害を除いて保健室に行かないように指導している学校もある」が、「生理用品を得るために保健室に通う生徒は以前からいた」と述べ、「貧困層の子供は自分の立場を声に上げづらく、生理用品を取りに保健室に向かう生徒には理由がある」と述べている。学校によって、保健室で借りた生理用品は、後で新品を返すルールがある学校もあった。

個人差、家庭内の理解にも差があることが指摘されている。生理用品のうち月経カップや布ナプキンの利用について推奨する意見もあるが、親の庇護下にある子供の場合、物の管理や母親の無理解などが原因で利用できないケースが指摘されている。

「#みんなの生理」と「日本若者協議会」が女子学生に向けて行ったアンケート調査では、「生理で学校・授業・部活を休みたいと思ったことがある」のは、300人の回答のうち93%に及び、そのうち3人に2人は「それでも学校を休めない」と答えていた。「休めない」理由として、「成績や内申点に悪影響が出る」が63%、「生理を理由に休んでいいと思わなかった」も57%にあり、休めないことで「授業に集中できなかった」が81%に達した。また、学校を休んだ場合でも、3人に1人が「生理による欠席で成績や内申点を下げられた」と答えた。そのうえで、学校での「生理休暇」の導入には、9割以上が賛意を示した。

読売新聞公式サイト内の「発言小町」に、「姪の初潮を祝うパーティーに姉から呼ばれた」という投稿があり、犬山紙子は「私は赤飯を炊かれただけだが、それも嫌だった」と書いた。その時にお祝いよりも、生理用品の使用法や性教育をしてほしかった。初潮を祝うのは「子孫繁栄」を願う風習だが、一方で「生理は不浄のもの」という風習もあり、犬山は「生理をどう受け止めるかは、人それぞれを尊重してほしい。生理について自発的に言うのは良いが、全員がオープンにするということではない」と書いた。

実態調査

2022年2月、日本の厚生労働省が、18歳から49歳の女性3000人を対象に、「生理の貧困」問題の事態調査を行い、3月23日に調査結果を報道発表した。標本全体のうち8.1%が、生理用品の購入に苦労した経験が「よくある」「ときどきある」と回答した。このうち18歳と19歳は12.9%、20代は12.7%あった。世帯収入3000万円未満の人では、生理用品の購入に「苦労したことがない」と答えたのは70%に満たなかった。購入に苦労した最大の理由は「自分の収入が少ない」で、その次に「自分のために使えるお金が少ない」だった。生理用品を購入できないときの代替措置として、50%が生理用品の交換頻度を減らし、また40%以上がトイレットペーパーなどで代用していたと回答し、こういった対処をしている人のの70%以上が外陰部のかぶれやかゆみを自覚した。生理用品の購入に苦労した人の69.3%が、心理的な苦痛を感じていることも上げられた。

一方で、生理用品の購入に苦労した経験がある人のうち、50%近くが、自治体が生理用品を無償提供していることを知らなかった。また、標本全体のうち、無償提供の制度があることを知っている人でも、利用したことがあるのは17.8%だった。利用しなかった人の70%近くが「使う必要がない」と答えた一方で、理由として「申し出るのが恥ずかしかった」が8.5%、「人の目が気になる」も7.8%あった。

この調査報告を受け、「#みんなの生理」共同代表の谷口歩実は、3月25日に厚生労働省で記者会見した。谷口は、生理用品への軽減税率の適用や公共のトイレへの生理用品設置を求めたほか、各自治体が進めている生理用品の配布が「必要な人な人に行き届いていない」点を指摘し、公共施設や学校のトイレの個室に、生理用品が誰でも利用できるように配置するのを求めた。

TOKYO MXの情報番組「堀潤モーニングFLAG」でこの実態調査が取り上げられた際、加藤ジーナは「わざわざ役所に行って「生理用品を下さい」と言える日本人は少ない。普通にトイレに置かれるべきで、自己申告しないともらえないのに違和感を感じる」と言ったうえで、「女性が生理にマイナスを感じているのは事実で、意識改革には時間がかかる。時間を待つのではなく、行政がもっと積極的に支援するのが必要だ」と言った。長内あや愛も加藤のコメントに賛同しつつ、「生理休暇制度があっても、名前のせいで取り辛いなら、その制度の名称を変えたほうが良い」と言った。また別の調査で、生理による不調に対して職場の理解があると「思わない人」が55.4%、職場に生理休暇制度があると答えた人は6割以上なものの、ほぼ毎回利用している人が1.9%、利用したいが利用したことがないという人が47.7%、その最たる理由が「男性上司に申請しにくい」という結果に対して、会社の経営者でもある古井康介は「すごくいろいろな課題が詰まっている」と言った。番組アシスタントの田中陽南も、「生理用品の配布にもアイデアが必要。生理休暇申請の問題は男性の理解も必要で、社会全体で考えなければならない」とコメントした。

株式会社ベビーカレンダーが女性1123人にした調査では、「初めてこの言葉を聞いた時、女性としてショックを受けた」「女性には必須のものなので最低限の補助が必要」「男性も義務教育の中で学ぶべき事項」「生理用品が入手できない状態は精神的苦痛が大きい」など、物資の補助や教育不足のほか、相談窓口や生理を学ぶ機会が必要との声が寄せられた。

施策とそれに対する反応

国や政治における対応

2021年3月4日の参議院予算委員会にて、公明党佐々木さやかが「生理の貧困問題」について質問したところ、女性活躍大臣丸川珠代が「対応を検討する」と回答した。3月19日の参議院予算委員会でも、立憲民主党蓮舫が「生理の貧困」を取り上げ、経済的な理由で生理用品の購入が難しかった学生が2割にあたるとする民間調査の結果を示した。そのことから、本件は自己責任と呼べるものではないと言及した。3月23日、一億総活躍担当大臣坂本哲志は、孤独・孤立対策に取り組むNPOなどへの財政支援に関し、「生理用品の無料配布を補助対象として認める」ことを発表した。一方でfumumu編集部の五代桜子は2021年3月24日の記事にて、賛同や追加の提案以外にも課題そのものの根本解決になっていないことや、生理用品と肌の相性からくる課題の提示、実施に関する説明を求む声があったことに触れている。

各地で生理用品の配布が始まったことについて、助産師大貫詩織は、「今回配布されている生理用品は、あくまで『備蓄品の放出』を活用したものが多く、1回配ってそれで終了で良いものか?」「「生理の貧困」の根本の問題は、「生理にはどんなケアやコストが必要か?」などの、性教育の欠如による知識不足がある。この言葉が多様な議論につながってほしいが、まずは「性のタブー」をなくす最初の一歩として、身近な人と日常の会話で「性の話」を出してみてはどうか」と述べている。また産婦人科医の宋美玄は、公共施設での生理用品配布に対して、インターネット上で賛否両論があるとして、その中の反対意見は悪用を心配するものが主だとした。

2021年4月3日の『日本経済新聞』では、コロナ禍による経済的困窮から、自治体や学校で生理用品の無償配布が広がっていることが報じられている。東京都では2021年3月15日から、豊島区が防災用に備蓄していた生理用品を女性向けに窓口で配布を始め、3月19日の終了までに計416袋を配布した。きっかけは、区の若い女性への支援策プロジェクトで、プロジェクトに参加している支援団体から「生理用品を渡すことがある」という声があったことで、備蓄用の生理用品を入れ換え時期が来たことに合わせての活用となった。豊島区をはじめとして、東京都の他の自治体でも、コロナ禍で困窮する女性へ生理用品を配布する支援が進められた。

2021年5月28日、男女共同参画大臣・丸川珠代は、定例記者会見で、内閣府が5月19日時点で各都道府県に調査したところ、「生理の貧困」への支援策をしている自治体が、全国で少なくとも255団体あることを発表した。最多は埼玉県内の31自治体で、東京都内の25自治体、愛知県内の23自治体と続く。主な取り組みは生理用ナプキンの無償配布である。

2021年6月16日、内閣府は「女性活躍・男女共同参画の重点方針2021」を決定した。その中で、内閣府と文部科学省と厚生労働省が、地方教協団体に対して「地域女性活躍推進交付金」を使って、生理用品の提供を支援するだけではなく、それをきっかけに女性の背景や事情に向き合うこと、「地域子供の未来応援交付金」による、子どもたちへに必要な支援、学校での養護教諭スクールソーシャルワーカーによる生活支援への連携などが盛り込まれた。さらに、2021年度から、「生理の貧困」がもたらす健康への影響の調査と、「生理の貧困」に対する支援の「横のつながり」の情報提供を始める。この発表に対して、連合事務局長の相原康伸は、発表された対策に加えて、「教育現場等で、生理の知識や理解を広げることも重要」だとのコメントを出した。

一方で必要とするはずの人間が想定した人数を下回っていることが『信濃毎日新聞』にて指摘されており、心理的なハードルや配布場所まで向かう手間が原因として記事では考えられている。他にも在庫処分として配布分がなくなり次第終了する団体や、継続した支援が続くか疑問視する声が『京都新聞』では触れられている。

2021年10月31日の衆議院議員選挙に向けて、日本共産党社会民主党公明党れいわ新選組立憲民主党自由民主党日本維新の会の各政党が、選挙公約で「生理の貧困」対策を掲げた。「#みんなの生理」共同代表の谷口歩実は、自分たちの行動が政治を動かしている実感がある半面、生理が女性特有の問題と言う認識がまだ強く、「生理をめぐる問題が『女性の貧困問題』に矮小化されてしまわないか」という不安があり、谷口は「生理の問題を通じて、ジェンダーや男女の格差問題を解決する糸口にしたい」と言っている。

政策プラットフォームPoliPoliの起業者伊藤和真は、「生理の貧困問題を国会に持っていったのがPoliPoliである」と強調する。同社は一人の女子学生のリポートを、国民民主党参議院議員伊藤孝恵に届ける仲介役を務めた。PoliPoliには生理の問題についての政策リクエストが数多く届き、生理の問題を持ち出された伊藤も最初は戸惑い、党代表の玉木雄一郎も「ギョッとして反応が悪かった」が、伊藤が粘り強く説得することで、玉木も政策として発信するようになった。伊藤は「生理に対する強いスティグマの解消、生理用品への税制優遇、生理の教育が今後の課題だ」と話す。

自治体や学校における対応

2021年3月17日、市議会で「生理用品の支援」が質疑に挙がったことや女性議員9人から緊急要望が市長に出されたことを受け、多摩市にて防災備蓄用の生理用品(計1664枚)を、全部で26校ある市立小学校と市立中学校の女子トイレに置く取り組みを始めた。学校での配布は都の中でも珍しいと報じられた。

この背景が朝日新聞に掲載されたことに対して、若年女性の貧困対策で活動している一般社団法人Colabo仁藤夢乃は、多摩市の教育委員会が、記事に提供した写真に「持って来られなかった人のための生理用品です。忘れてしまった人は保健室でもらってください。」と書かれていることに違和感を感じ、「誰でも使える生理用品でなければ、本当に困っている女子も使い辛いのではないか」と指摘している。また品川区の場合の写真でも「大切に使いましょう」と大書されていることにも問題があると指摘している。

2021年5月、群馬県は全ての県立学校や県所有施設(ぐんま男女共同参画センター、美術館、図書館)などで、生理用ナプキンの無償配布を始めた。県レベルでは全国初である。

2021年5月、愛知県東郷町では、町の小中学生たちが町長などに質問する「子ども議会」での小学生女子の提案が契機で、提案から2か月弱で、町内の小中学校9校の女子トイレの個室に、生理用品の常備が実現した。町の工業団地競合組合が費用を寄付し、合わせて約4000袋の生理用品が段ボールで届けられた。

学校のトイレに生理用品を置くことを目的に活動している学生コミュニティ「SURP」は、高校生以上の学生団体が集まり、各校で活動している。国際基督教大学では、大学内の3か所ある「オールジェンダートイレ」に、生理用品を置く取り組みを始めた。「生理用品に関する悩みが可視化されていなかった」ことから、学生や教職員から「助かった」という反応や、生理用品の寄付もあった。「#みんなの生理」のメンバーは、「保健室に生理用品を取りに行くことにハードルを感じる人もいるため、プライバシーを守れるトイレの個室に置きたい」と語っている。「生理の問題は多くの人が声を上げるようになれば、今まで言えなかった人も声を出せるようになる」とエールを送る一方で、役所からは「生理に理解のない人からいたずらをされないか」とも指摘を受けていて、性教育の必要性を感じている。また、「生理のある人の性自認(ジェンダー)が女性とは限らない」ため、「生理=女性」という一元論から脱却する必要性も指摘する。

その一方で、トイレに置くと誰でも持っていってしまったり、性教育をする以前の学年への懸念から、トイレではなく保健室や職員室に置くことを決めた学校もある。京都府城陽市は「トイレットペーパーのように『生理用品がトイレに置かれているのが当たり前』という認識が広がっていない」、京都市宇治市綾部市は「経済的困窮の問題」という理由を付けた。「保健室で受け取ってもらうことで、養護教諭が状況を聞き、必要な支援につなげる」ことを意図した自治体もある。その反面、亀岡市は「保健室に行くハードルが高い子もいる」可能性を示した。

長崎市では、6つの市民団体が、クラウドファンディングで資金を集め、市内の学校に生理用品を無料で配布するプロジェクトを始めた。

2021年6月、東京都港区では、区立の学校に通う小学校5年生から中学3年生までの女子約2400人にアンケートを行った。「学校生活で生理用品がなくて困ったことがある」が17%と想定より高い数値を示し、その内訳は「持参するのを忘れたから」が95%、「家庭で購入や準備ができなかったから」が5%だった。

NHKが実施したアンケートで、山口市は生理がある女子生徒の3割近くが「生理用品がなくて困った」と回答し、市立白石中学校で生理用品の置き場所を尋ねたところ、9割弱の女子生徒がトイレと答えた。

港区立御成門中学校では、試行的にトイレに「自由に使ってよいが、後で保健室に来ること」という内容を書いた張り紙とともに生理用品を置いたところ、1か月で10セットが使われ、使った生徒が保健室に来た。

東京都立新宿高等学校では、2021年5月から、統括校長の意向で「トイレットペーパーと同じように」校内のトイレのうちの2か所に無造作に置き始めたところ、8月末までに410枚以上のナプキンが使用されていた。その後さらに増え、保健室で渡していたころは年間10枚程度の利用だったが、単純計算で160倍に増え、2日に1回補充しないといけない状態であるという。

2021年8月3日、内閣府男女共同参画室は、全国581の自治体が学校や役所で生理用品の無料配布などを実施・検討していることを公表した。

2021年9月、石川県金沢市内の看護師と保育士からなる団体が、将来のエッセンシャルワーカーを支援しようと市内の看護教育機関の生徒向けに生理用品を寄付することを決め、9日には金沢看護専門学校で贈呈式が行われた。

高知市の私立土佐女子中学校では、先生の提案により、高知市の事業「こうちこどもファンド」に応募する動画を生徒6人で製作した。震災時の避難所で、男性が女性一人に1枚ずつナプキンを配っていた案件が契機となり、「女子校ならではの視点」で、小中学生向けに生理の知識を伝える動画を作成することにした。この動画案をプレゼンテーションに出した結果、ファンドからの助成が決まり、動画の作成が進められている。

長崎県で生理用品を無料配布している民間団体の活動では、コロナ禍で潜在化している家庭内暴力性暴力の被害者も「生理の貧困の当事者」なのが見えてきたため、ナプキンを無料設置している場所に「支援情報のQRコード」を載せた張り紙を付けた。プロジェクト代表の看護師は「ナプキンを通して、困っている人が必要な支援へと繋がってほしい」と話す 。

養護教諭で性教育講師のにじいろ(中谷奈央子)は、性教育は「健康教育・安全教育・人権教育」と言うが、高校で養護教諭として勤務していたころと振り返ると「申し訳ない気持ちになる」と言う。保健室では「生理で困っている学生」と毎日接し、対応の中で湯たんぽや着替えや洗濯用品を貸したり、受診を進めることもあった。学校の予算の都合上、ナプキンは「あげる」のではなく「貸す」ことで、あとで返してもらうことにしていた。中谷自身も生理用品に困っていたことがあり、親が生理用品の提供や生理のはなしをしてくることがなかった過去から、役所の窓口で生理用品を受け取る提供方法には「気軽に行けない」と思った。中谷は小型の店舗で、周囲に知り合いがいないのを確かめてから、隠れるようにナプキンを買っていた記憶があり、生理があること自体を「恥」だと思っていた。その経験から、学校せ生理用品を設置することに抵抗を持つ先生方には「トイレットペーパーに置き換えて創造して欲しい」と指摘し、積極的な支援と生理の教育が不可欠で、生理中でも安心して学校で過ごせる権利は「人権と社会の問題」との認識が必要だと書いた。中谷は学校せの性教育講習で、生徒から性別を問わず「男女一緒の講習に最初は抵抗があったが、一緒に聞けて良かった」と感想を聞くことが多いという。

2021年4月から生理用品支援プロジェクトを始めた、兵庫県明石市市長の泉房穂は、「自分自身が男性のため気づかなかった」ことを反省していて、市役所の女性職員に相談を持ち掛け、そこから市内の学校の養護教諭に「現場の声」を聞いた。生理用品について「男性としての限界を感じた」泉は、女性職員の提案を積極的に取り入れた。「生理用品が配布されたとしても、女性の身体の負担は変わらず、せめて経済的な問題は軽くしたい」思いがある。将来的には、生理については女性全員の不公平感を解消したいという。

日本福祉大学では、2021年のゼミナールで「ジェンダーの課題」として「月経への理解」を積極的に取り上げ、活動の中で男子学生たちが生理用品を実際に買ったり、学内トイレでの生理用品配布を通した意識調査を行った。この取り組みはインドネシアハサヌディン大学とも共有された。

北海道函館市では、2021年7月から6カ月を使って2600件余りからアンケート調査を行い、回答者の約6%が生理用品の入手に苦労したり、ためらったことがあったことが分かった。函館市の雑貨店主の女性は、自身も母親に生理用品を買ってもらえなかった過去があり、twitterで募った寄付金をもとに、函館市内を中心に生理用品の無料配布を行っている。SNSでの無料相談も行っていて、「生理は隠すものではないと思う。親に言えないなら自分が一番信頼できる人に相談してみてほしい」と言う。

沖縄県婦人連合会は、7月2日を「ナプちゃんの日」と定め、生理に対する理解の促進を始めた。節約のために数日間食事を豆腐だけで過ごしたり、学費が支払えないために退学した学生もいて、連合会代表は「学生へのアンケートでは、生理用品への問題が最も比率が高い」と話す。沖縄県労働金庫沖縄県教職員組合、沖縄県労働者福祉基金協会は3者合同で、小中学生を対象に、ユニクロ製吸水サニタリーショーツの配布を2022年6月から始めた。

上智大学総合グローバル学科では、田中雅子教授の「国際協力論演習」にて、入国管理局の問題に取り組んでいた学生たちの中に、新しく「生理の貧困」問題に関心があった学生が入ったことがきっかけで、『入国管理局に収容されている女性たちの、生理をめぐる状況』に取り組む課題がスタートした。20210年8月25日に東京入国管理局横浜支局に要望書を提出したのをはじめ、各地の入国管理局職員や支援者などと面談した結果、大学側と入国管理局側で認識のズレがあり、入国管理局が被収容者を「生理の困窮者と見ていなかった」のではないかと田中は推測した。田中は東京弁護士会が作った「エクスペクテイションズ(期待される状態)日本版:入国管理局被収容者の取り扱いと状況を評価するための基準(案)」を使って入国管理局と交渉し、その結果、東京入国管理局横浜支局では収容者に個別の生理用品配布と、共用シャワールームでの名ぴ金一括配備が始められた。

神奈川県藤沢市湘南学園高等学校では、高校2年生が中心となってジェンダーについて考えるプロジェクトが動き、「男子生徒向けの生理セミナー」が行われた。企画者の女子生徒の一人は、LGBTQ+に対する偏見が根強い現状の延長として、男子生徒に生理について知ってもらうための企画で、サニタリーショーツメーカーの担当者を呼んだ。自由参加のため、男子が来てくれるかどうか不安はあったが、当日は教室が満杯になるほどの男子が来たのがうれしかったと話す。セミナーを受講した男子は生理用品を手に取り、吸収力がどれだけあるか実験したり、また実際にナプキンを女子のように使用してみて、蒸れなどの大変さを実感した。企画した女子生徒たちは、「男子が積極的に参加してくれたのが感動した」「タンポンを知らなかった女子もいて、自分自身も新しい生理用品を知ることができた」、担当教師は「生徒たちは良い意味で変化が少なく、困っている誰かの助けになりたい、寄り添いたいという気持ちを持てたようだ」と感想を言った。

企業による対応

ファミリーマートは、2021年の3月8日(国際女性デー)の翌日から同年12月31日まで、沖縄県を除く全国の店舗で、店内で販売される生理用品全てを2%値引販売することを発表した。2022年も3月8日から5月31日まで同様の値引きが行われるほか、3月4日から約3か月間、東京家政大学内の店舗にて、客から寄付されたナプキンを検品して、困ったときに自由に使えるようにする実験を行うことを発表した。

2021年6月2日、三井不動産は、ベンチャー企業オイテルとの協力で、グループ会社の三井不動産商業マネジメントが経営する大型ショッピングモール「ららぽーと富士見」内の女子トイレの個室全141に、生理用品を無料で提供するサービスを夏に導入する計画を発表した。個室内の専用機にスマートフォンの専用アプリを近づけると、広告動画が流れたあとにナプキンが受け取れる仕組みで、2時間に1回利用できる。他のグループ施設にも広げる計画がある。2月下旬から約1か月行った実証テストでは、3月17日までにこのディスペンサーを使って、1000枚以上のナプキンが提供された。2022年2月時点で同サービスを提供する「OiTr」は、商業施設や自治体、大学など65か所で約1000台が導入されている。また、大阪市の医療ベンチャー企業ネクイノも、千葉市内のイオンモールの店舗で同様の生理用品ディスペンサー「toreluna」の実証実験を始めた。

サンリオエンターテイメントは、2021年7月4日に「生理について思うこと」「性ってなんだろう?」をテーマとした小学生から大学生によるスピーチコンテストを開催した。親子で生理について話せる雰囲気づくりを狙いの一つとし、表彰会場のサンリオピューロランドには子宮頸がんの検診車を呼び、ハローキティなどのキャラクターを使った子宮頸がんの予防啓発活動も行った。

集英社少女漫画誌「りぼん」編集部では、毎月の編集会議で、編集者から生理についての特集の提案があり、「生理は恥ずかしいことではない」という女性編集者の想いや、「生理の貧困」問題の風潮を鑑みて、2021年10月発売の「りぼん」10月号に、とじ込み付録『生理カンペキBOOK』を収録した。産婦人科医高橋幸子ユニ・チャームが監修した。内容は年齢や性別を問わず、基本的かつ正しい情報、そして情報を偏らせないことで「様々な選択肢がある」ことを盛り込んだ。2022年8月現在の「りぼん」編集部が全員女性なので、編集部員が当時知りたかったこと、今でも知らないことも入れた。タンポン低用量ピルを使用している小学生がいる現状も反映して、それ以外の多様な生理用品の情報も盛り込み、さらに高橋医師の要望でHPVワクチンの情報も入れた。Q&Aコーナーは読者はがきや実際の小学生のモニターの声から作成した。この企画に社内からの反対は一切なく、読者はがきからの反響も大きかった一方で、保護者からは「こんなことまで書いているのか」という驚きの声と、編集部内でも改めて生理についての認識の共有ができた。読者からはこの付録の反響が大きく、またSNSでは保護者や若者世代からも注目を集めており、発売期間終了後も問い合わせが絶えず、雑誌の制約上再販売ができないため、編集部は制作関係者の許可を取り付け、2022年8月にこの別冊付録「生理カンペキBOOK」を「りぼん」公式サイトで全面無料公開した。また、小学館の「ちゃお」2022年8月号にも、「マイ❤️ファースト生理BOOK」がとじ込み付録に付いた。産婦人科医宋美玄が監修し、キャラクターイラストをいわおかめめが担当した。

2022年4月、「elis」ブランドで生理用品を製造している大王製紙が「奨学ナプキン」プロジェクトを開始、生理用品の入手が困難な児童や学生計1000人に対し、生理用品1年分を無償配布する。応募フォームでアンケートに答えた内容から人選して、対象者には4か月に1度、計3回商品を発送する。届く商品は本人の体調に合わせ、3種類の中から選ぶことができる。大王製紙の社内でも「生理の貧困」についての問題意識はあり、「生理用品のメーカーとしてできることは何か」を考えた結果の取り組みである。これには予想を上回る反響があり、応募者数が9000人を突破したため、他企業や団体の賛同も受けた大王製紙は、当初の倍の2000人を「奨学生」とした。応募者へのアンケートでは、9185件の標本のうち、「生理用品の入手に苦労したことがある」のが全体の97.1%、その中で「毎月苦労している」のも42.7%あった。生理用品の購入に苦労した理由には、69.3%が「経済的な理由」、40.0%が「人目が気になって恥ずかしい」のを上げ、学生の現実的な問題が出てきた。なお、大王製紙は家庭用紙製品の価格を15%以上値上げすると発表しているが、生理用品は値上げの対象ではない。2023年3月1日、大王製紙は「奨学生」へのアンケート結果を公表し、9割以上の対象者が生活に変化が現れたことから、2023年度も「奨学ナプキン」制度を行うと発表した。

神奈川県は、2021年12月に、県内の大学キャンパス数か所に、合計15000セットのナプキンの接地を始めた。ナプキンの包装に企業の広告を入れることで費用を賄い、包装作業は障害者福祉事業所に依頼している。

Jリーグ松本山雅FCでは、クラブスタッフが中学生女子の会話を聞いたのが契機となり、チャリティ団体レッドボックスジャパンとの連携で、クラブの女子選手や指導者に生理の基礎知識の講習を行ったり、本拠地スタジアムの女子トイレに生理用品を設置した。この取り組みが評価され、Jリーグの社会連携活動を表彰する「『2022Jリーグシャレン!アウォーズ』」で、松本山雅FCはパブリック賞を受賞した。

医薬品卸業者のメディパルホールディングスでは、2022年6月に、月経困難症に悩む女性をピルで支える「Shift P 服薬支援制度」を立ち上げた。その一環として、グループ会社メディセオの従業員が婦人科医から生理の仕組みや女性の実態などの講習を受けた。受講した従業員の大半は男性だった。男性の営業部長は「生理を知る機会がなく、辛さを想像することもなかった」と話した。講演した婦人科医師は、「生理については女性でも知らないことが多い。女性の活躍を進める社会にするには、女性の性を必要以上に毛嫌いする現状を変えなければ」と。

花王が、企業の負担で職場に生理用品を常備する備品化プロジェクト「職場のロリエ」を立ち上げ、福利厚生の一環として試験導入に協力した宝島社ゼリア新薬工業アクアクララなどでは、従業員から「急に生理用品が必要になった時や、慌ただしくて生理用品の準備を忘れていた時に助かった」などの反応が寄せられた。

女性として生まれたがXジェンダーを自認する田中史緒里は、ジェンダーフリーなスーツブランド「株式会社クーゼス」を立ち上げ、その後の顧客の要望で、「生理用品を付けられるボクサーパンツ」をデザインした。生理中だけ女性用下着を着けなければならない不自然さに、田中自身も「なぜないのか」と気づかなかったという。

バンダイナムコグループサンスター文具は、社内のアイデアコンテストがきっかけとなり、初経を迎える世代の女児向けに、サニタリーショーツ、ソフトケース、ユニ・チャーム製生理用品と生理のハンドブックをひとまとめにしたギフトボックス『First Luna Gift』を企画した。企画者自身もPMSに悩まされていたことがあり、文具メーカーでフェムケア用品は難しいと思っていたが、「文房具やポーチを作っている延長線で」という応援があって企画を出したら、コンテストで入賞してプロジェクトが起動した。社内でも意見を求めたところ、娘の初経の対応に親も戸惑い、必要なものがバラバラに売られている現実もあり、「かわいいデザインで、必要なものがそろったセット」というものがなかったことが明らかとなった。このギフトボックスは小学5年生から中学2年生をターゲットに想定し、デザイン担当者は今の流行であるレトロさやパステルカラーを取り入れ、使う人の感覚に合わせた4種類の色とファンシーなデザインを揃えたのが「文具メーカーの強み」だという。2022年7月時点ではクラウドファンディングの状態だが、いずれは一般発売し、少女向けに実用性の高いフェムケアグッズを出したいと語る。

GMOインターネットグループは2022年10月、パン・パシフィック・インターナショナルホールディングスも2023年3月に、グループ内企業の従業員とそのパートナーを対象に、オンラインピル処方サービス「Mederi for biz」を導入し、同アプリを介して、月経困難症の改善に効果がある低用量ピルの購入費用の一部を会社が負担する取り組みを始めた。パン・パシフィック・インターナショナルホールディングスの調査で、グループ内の女性社員の約25%が生理痛で仕事を休んだ経験があり、2・3か月ごとに一度休む女性社員も30%以上いることから、導入を決めた。担当者は、「制度の対象者を『男性社員のパートナー』にも適用することで、女性の健康課題や労働問題について知識を深めてもらいたい、という期待を込めた」と言った。

#みんなの生理

大学でジェンダーについて学び、生理を題材に卒業論文を書いていた谷口歩実は、生理用品に消費税軽減税率が適用されない事を知ったことをきっかけに、仲間3人で「#みんなの生理」というグループを立ち上げた。谷口は祖母が若い頃はお金がなくて朝食か生理用品のどちらかしか買えなかった話を聞いており、現代の日本においても同じような境遇の人がいることに衝撃を受けた。「生理は恥ずかしいもの、隠すべきものという印象」に対して、谷口は「生理の問題は「月経のある人」だけが考えればよい問題ではない」と述べている。

「#みんなの生理」では「生理用品を軽減税率対象にしてください!」のタイトルで署名運動を始め、4万6000人の署名を集めて国や政治団体に提出した。また2021年2月にインターネットで日本国内の利用者にアンケートを取り結果を公表、生理用品を買うのに苦労した経験があると回答した人が2割を超えるなどの結果に対して大きな反響が寄せられた。2021年7月16日、「#みんなの生理」は、厚生労働省で記者会見をして、生理用品への軽減税率の適用を求める署名者が、7月15日時点で7万2809人に達したと発表した。

2021年6月16日に内閣府が発表した「女性活躍・男女共同参画の重点方針2021」の中の「生理の貧困対策」に対して、“コロナ対策の一環とされているために一過性の取り組みになりかねない”、“生理用品の提供方法が明らかにされておらず、窓口配布の可能性が高い”、“女性活躍の文脈で扱われており、生理のある人が「女性」に限定されている”、“「経済的要因のみが「生理の貧困」の引き金とされているため、その他の理由で生理用品や生理における情報やケアなどにアクセスできない人々のニーズが不可視化される可能性がある”という4つの問題点を指摘し、それに対して、「生理用品への軽減税率適用」「学校のトイレへの生理用品設置」「より包括的な調査の実施」の3つを提案した。また、2021年7月9日に厚生労働省が発表した、学校や職場などでの不妊予防の支援策については、「将来の体のためにこのような要望を出しているのではなく、単に今の自分の体に関するニーズを満たした社会にしたいという思いで活動しています」とコメントした。

報道

2021年3月9日放送のTBS情報番組「グッとラック!」で「生理の貧困」問題が取り上げられた際には、3時のヒロイン福田麻貴が「売れない頃はなるべく交換しないようにしていたことがある」「色々なところを切り詰めていると月1000円でも辛い」と自身の過去の体験を述べ、最低限清潔に暮らす権利は誰にもあり生理用品は確実な入手が必要といった内容のコメントをした。また同メンバーのゆめっちも、ナプキンの長時間使用やトイレットペーパーでの代用、低用量ピルの値段に言及した。アナウンサーの若林有子は、Twitter上でナプキンを買えない人への批判が集まっている事に対して、「こういった声によって、より『我慢しなければいけない』と思う人が出てきてしまうのも問題」であると指摘した。田村淳は「スマホを諦めて生理用品に替えろというのは暴論だなと思います」との意見を述べた。コメンテーターでフリーライターの望月優大は貧困そのものに対する無理解があり、また、男性が生理に無理解なのは性教育の問題であると指摘した。トレンディエンジェル斎藤司は「生理用ナプキンを1日に7枚も使うのは知らなかった。なんとなく1日1枚でいいと思っていた」と言った。

2021年4月6日放送のNHK『クローズアップ現代+』で生理の貧困を取り上げた。NHKアナウンサーの井上裕貴は、今まで生理について触れる機会がほとんどなかったため、番組で「生理の貧困」問題を放送すると決まった時に身構え「生理を経験したことがない自分には「生理の貧困」を語る資格はないのでは」と考えたたという。女性の問題に男性が介入することに、セクハラと受け取られかねない反応への抵抗感や忌避を感じつつも、まずは同僚の女性アナウンサーに尋ねてみることから始めた。アトピーの薬とコンタクトレンズを常用している井上は、取材を通して、生理用品の問題が「人の尊厳にかかわる問題」だと感じ、それを簡単に入手できない状態の深刻さを見た。また、男だから問題の深刻さが分からないといった指摘もあった。これらを踏まえて、井上は放送中に「生理」「ナプキン」「タンポン」と言った言葉を連発したところ、好意的な反応が多数あった。当初、井上は打ち合わせで保里小百合とこの話題を出すだけでも恥ずかしかったが、放送終了後は保里から違和感がなくなったと言われた。井上は「一見すると自分とは関係がないように思える取材相手や状況に、自分との共通点を見つけること」を大切にしたいと振り返った。

2021年5月31日、日本テレビnews zero」で「生理の貧困問題」が特集され、大学1年生の女性に密着取材した内容が報道された。この女性は父親の収入が減り、妹もいるため、自身が使う生理用品の量を減らしていた。しかし、取材したアナウンサーから、スマートフォンの毎月の利用料金を削って生理用品を購入しないのかという問いには、「スマホがないと友人付き合いができない」と答え、また、遊ぶお金を削ってはどうかという問いにも、「Tシャツ1枚で友人には会えない」と回答した。この報道に対して、主に同性から、「なぜ交友費や通信費を削って生理用品を買わないのか」といった批判が相次ぎ、ネット上で炎上が発生した。しかし、この報道を見た取材対象者本人を名乗るTwitterアカウントが釈明を投稿し、インタビューでは月経困難症の治療のために低用量ピルを飲んでいるが金額の負担が重い上、ピルを飲んでいることからの偏見や中傷を受けていることを訴え、さらに男性に生理の辛さを理解してもらえない辛さも伝えたが、そのような内容は編集でカットされてしまい、単に金銭のやりくりで生理の貧困になったと偏向報道されてしまったのを公表した。この投稿によって、ネットでは一転して番組への批判が相次いだ。

2021年8月、テレビ愛媛では生理の貧困を取り上げ取材をまとめている。愛媛県松山市で子育てサポート事業をしている女性は、女性用品やケアを通して生理の大切さを伝えてきた事から、「生理」と「貧困」の2語が並んでいるのに違和感を感じている。また、小学校1年生の娘がいる別の女性は、まだ第二次性徴も始まっていない年齢の娘が、学校で生理について教えられずに、ただ「生理用ナプキンを配布します」という紙を持って帰ってきたことに戸惑っていた。生理を「恥ずかしいからあまり公言してはいけない」という社会、「ナプキンを買いたくても買えないから助けてほしい」と言える社会にすることが課題である。

2021年11月20日、一般社団法人反貧困ネットワークが主催する「貧困ジャーナリズム大賞2021」にて、NHKの「生理の貧困」取材チームが、「貧困ジャーナリズム大賞」を受賞した。若い女性が苦しんでいる状況を番組やネットで発進し続け、学校や公共施設でのナプキン無料配布につなげた点が評価された。一方で、この問題をめぐる報道では、NHKのTwitterアカウントが「※生理用品の画像や生理に関する具体的な記述があります」と注意書きを付けた投稿が、生理をタブー視して声を上げづらくするものだと批判された。

2022年5月8日放送のTBSサンデー・ジャポン」で「生理の貧困」問題が取り上げられた際、フワちゃん鈴木紗理奈が生理に対する経済的な負担が大きいことを言い、「医療費の健康保険みたいに3割負担があっても良いのではないか」とのフワちゃんのコメントに対し、杉村太蔵が「学校や公共施設、鉄道駅などには、女性用トイレに生理用ナプキンの設置を義務づけてはどうか」と返し、「行政がある程度無料にすれば、大した金はかからないと思う」と続け、備品のような感覚での対策を提案した。

批判と反論

日本では2021年に「生理の貧困」が報道されるようになり問題が広く知られるようになった。その一方で、複雑な背景を知らずに、「ナプキンを買えないのは金遣いが荒いからだ」とか、「スマホに金が使えるのにナプキンは買えないのか」「大学に行っているのに生理用品が買えないのはおかしい」といった批判や、「生理用品の無料配布は男性差別だ」「他人が働いた金が怠けものに流れてはならない」という自己責任論に基づく中傷をする人が出てくるようになった。

「生理の貧困」とは、経済的困窮だけではなく個人を取り巻く多様な事情により引き起こされるものである。このことから、「女性に必要なものへのアクセス手段」が失われることで、「女性の人権」や「社会を変化させる芽」が損なわれるといった事態は避けるべきである。ピルを買うことも、「体に良くない」「ふしだらな女だと見られる」といった根拠のない理由で止められてしまうなど、「目に見えない部分の必需品」だからこその値段やハードルの高さがある。「生理の貧困」が批判される大きな要因は日本の性教育の遅れであり、「ナプキンは1日1枚でいい」「生理中はセックスしても妊娠しない」といった誤解が蔓延する結果である。「生理の貧困」対策は「女性優遇」ではなく、「生理のある人が毎月苦しんでいることの是正」である。また「生理の貧困」問題はきっかけに過ぎず、女性は初経から更年期障害に至るまで、男性では起こらない様々な問題があるため、女性の不快や苦痛を社会全体でケアする体制づくりが必要である。

「女だけに補助があるのは優遇だ」「男の納めた税金を女に使うな」といった批判もあり、日本維新の会参議院議員梅村みずほは「『生理の貧困』が問題なら、『ひげそりの貧困』も対策が必要」とTwitterに投稿し、物議を醸した。

2021年6月に「生理の貧困では無く、生理に対する考えの貧困だ」といった高齢男性による新聞の投書があり、その件に対して反論したイラスト付きのTwitter投稿に多数の反応があり話題となった。

また、各公共施設に生理用品を無償配置している一般社団法人の代表理事に当て、生理用品を学校に置くと「子どもがだらしなくなる」という批判があった。この批判は生理用品を届けた先の学校に勤務する養護教諭から出たで、「生理用品を持ってこなくなった生徒は甘えている」「社会人はこんな恩恵はない」「生理用品を無料配布すると学校の評判が下がる」という懸念を伝えられた。この批判に対し、この代表理事は「本当に生理用品を買ってもらえない子供のことをどう見ているのか?」「養護教諭に心無いことを言われたり、男性教諭には相談しづらい」とした上で、「生理の貧困は虐待やネグレクトが背景にあることも少なくなく、保護者に連絡されるのを恐れて保健室に生理用品を取りに行けない子どももいる」と反論した。この批判のツイートには、元養護教諭や他の女性を中心に、多くの反響があった。

生理痛(月経困難症)の問題は女性同士でも理解しづらく、様々な理由でピルを服用できない人もいる。2015年の女性全体の平均年収は276万円で、男性との賃金格差は245万円あるが、そのような貧困状態の中で、ピルを服用するための費用を捻出するのに苦労する女性もいて、そういう女性が「生理が辛い」とTwitterに投稿すると、大量にクソリプが付くことがある。そのクソリプは男性からかと思っていたが、実際には約半数のクソリプは女性から飛んできたものである。女性は無意識に同性にクソリプを送ってマウンティングを行っている。

被害

身体は「女性」だが、外見も精神も「男性」として生活しているトランスジェンダー当事者の一人が、2011年の東日本大震災で被災し、自分の存在で他人に迷惑がかからないか、さんざん悩んだ末に、自分に限界が来たために宮城県内の避難所に行った。避難所で職員に生理用品をもらおうとした時、男性職員に「あなた男でしょ」と胸を触られてしまった。その感触に職員が唖然としている間に彼は生理用品を持っていったが、さらにその様子を見た第三者が周囲に話した(アウティング)ことで、彼への周囲に視線が強くなってしまい、彼は数日間でその避難所を離れ、関東地方にいる友人の家に避難を余儀なくされた。弘前大学助教の山下梓は、「男性同士なら胸を触っても良いというジェンダー認識の問題が根底にある」と指摘する。「生理用品」「下着」「ヒゲソリ」など、男女別になっている物資は、性的少数者には受け取りにくく、性的少数者が抱えている差別・偏見・社会制度の問題が露わになった形だと評した。

2020年の3月から5月ごろ、福岡市内にある中学校の女子生徒が朝の健康観察で男性教諭に体調不良を申し出た際、男子生徒たちのいる前で教諭から「生理ですか?」などと聞かれ、女子生徒はその後、その教諭に対して吐き気などのストレス症状を催すようになった。2022年8月、元女子生徒が福岡市に対して損害賠償を求めた訴訟の判決があり、福岡地方裁判所の女性裁判長は「望まない性的言動で不快なことは明らかで、人格権を侵害する違法な発言」と認めたものの、損害賠償は棄却された。

その他の意見

LiLiCoは、世の中で生理に対する考えが代わったのを感じているが、「生理の貧困」問題を機に、女性は自分の体についてもっと知ったほうが良いと述べ、目の前で女性が流産してしまった体験にショックを受けたことや、母国スウェーデンと日本での「生理」や「性」に対する扱いが大きく異なることなどを語っている。

2021年3月の参議院予算委員会で、蓮舫が「生理の貧困」問題を質問に出したのは、10代の女性を支援する団体の活層を視察したのが起因だった。「政治家の自分ができることをやろう」と蓮舫は言った。それ以降、日本国内で生理をめぐる状況が変動し始めたのは、政治や経済の意思決定の現場に女性が付き始めたからである。世界の中でジェンダーギャップが120位、G7構成国の中では最下位の日本国内で、男性中心の社会で放置されていた問題が見え始め、社会構造の変化によって解決への行動が可能となってきた。社会の様々な場面で女性が意思決定に関与することで、生き辛さが解消される人が増えるかもしれない。

SHELLYは、性について教えることを「なぜ性別で分けようとするのか。生理についても同じだ」と言い、「身近な女性の仕組みについて正しい知識を持つのは大切なことだ」と話す。

関連文献

脚注

注釈

外部リンク


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