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インスリン
インスリン (Insulin, 英語: [ˈɪn.sjʊ.lɪn, ˈɪnsəlɪn])とは、膵臓のβ細胞で産生されるペプチドホルモンである。血中を流れるブドウ糖が、肝臓、脂肪細胞、骨格筋細胞に取り込まれるよう促し、炭水化物、タンパク質、脂肪の代謝を調節する。
これらの細胞に取り込まれたブドウ糖は、グリコーゲン(Glycogen)に合成されるか、脂質生合成(Lipogenesis)を経て中性脂肪に合成される。肝臓においては、グリコーゲンと脂肪の両方に合成される。肝臓ではグリコーゲンの分解に伴うブドウ糖の生成作業(糖新生)と分泌が起こるが、血中のインスリン濃度が高いとき、これは強力に阻害される。血中を循環するインスリンは、身体のさまざまな組織におけるタンパク質の合成にも影響を及ぼし、血液中の小分子から細胞内の大分子への変換も促進する。
血中のインスリン濃度が低いとき、全身の体脂肪で異化作用が起こる。β細胞は血糖値に非常に敏感であり、高濃度のブドウ糖に反応する形でインスリンを分泌させ、逆に血糖値が低いときには、インスリンの分泌を阻害する。インスリンは細胞内へのブドウ糖の吸収およびブドウ糖による代謝を促し、それに伴って血糖値は低下する。β細胞に隣接するα細胞は、β細胞からの信号を受けて、インスリンの時とは逆のやり方でグルカゴン(Glucagon)を分泌し、血中に解き放つ。血糖値が低いとき、血中のグルカゴンの濃度は上昇し、インスリンの分泌は阻害され、血糖値が高いとグルカゴンの分泌は阻害される。分泌されたグルカゴンは、肝臓におけるグリコーゲンの分解および糖新生を刺激し、それによって血糖値が上昇する。血糖値に反応する形でのインスリンとグルカゴンの分泌は、ブドウ糖の恒常性維持機能における重要機構である。インスリンは身体における同化作用を持つホルモンとみなされている。
インスリンの活性の低下やインスリンの欠如は、血糖値の制御が不能となる糖尿病を惹き起こす。糖尿病には「1型」と「2型」の2種類がある。前者では自己免疫反応によってβ細胞が破壊されており、インスリンの合成機能は失われ、インスリンが血中に分泌されなくなる。後者においては、β細胞の破壊は1型に比べると際立ってはおらず、自己免疫反応によるものとは異なる。膵臓のランゲルハンス島の内部にアミロイド(Amyloid)が蓄積していき、身体の生理機能を壊滅させる可能性がある。糖尿病に関しては、膵臓のβ細胞の縮小、β細胞からのホルモンの分泌機能の低下、末梢組織で起こりつつあるインスリン抵抗性(Insulin Resistance)が関与していることが分かっている。2型糖尿病においては、グルカゴンの分泌量が増加する(グルカゴンは血糖値には反応しない)が、インスリンは血糖値に反応して分泌される。
「ヒト・インスリン・プロテイン」(The human insulin protein)は、51個のアミノ酸で構成され、その分子量は「5808ダルトン」である。これはA鎖とB鎖のヘテロ二量体であり、ジスルフィド結合で連結している。インスリンの分子構造は、動物の種によって微妙に異なる。動物由来のインスリンは、その違いが理由でヒトのインスリンとは効果(炭水化物を代謝する効果)がいささか異なる。ヒトのインスリンに近い性質を持つのはブタであり、DNA組み換え技術によってヒトのインスリンの大量生産が可能になるまでは、1型糖尿病患者の治療に用いられていた。
ジョン・ジェイムス・リッカード・マクラウド(John James Rickard Macleod)の研究室で働いていたフレデリック・バンティング(Frederick Banting) とチャールズ・ハーバート・ベスト(Charles Herbert Best)の2人が、インスリンを共同で発見し、これが初めて発見されたペプチドホルモンとなった。マクラウドは1921年に犬の膵臓からインスリンを単離させた最初の人物でもあった。1951年、生化学者のフレデリック・サンガー(Frederick Sanger)は、インスリンについて、「インスリンのアミノ酸の構造についての配列を決定した最初のタンパク質」とした。固体状態のインスリンの結晶構造は、1969年にドロシー・ホジキン(Dorothy Hodgkin)が確定させた。
インスリンはDNA組み換え技術によって化学的に合成・生成された最初のタンパク質でもある。インスリンは、医療体制において極めて重要とされる必須医薬品の1つとしてWHO必須医薬品モデル・リストの一覧表に掲載されている。
食べ物を食べたあとの血糖値の上昇とインスリンの分泌を最も強力に促進するのは炭水化物である。タンパク質もインスリンの分泌を刺激するが、グルカゴンの分泌も誘発する。食べ物に含まれる脂肪分は、インスリンの分泌にほとんど影響を与えない。
日本語表記では「インスリン」のほかに、「インシュリン」とも呼ばれる。「インスリン」の名の由来は「島」を意味するラテン語『Insula』から。
物性
構造
インスリンはアミノ酸からなるペプチドで、A鎖とB鎖の二量体による構造である。プロセッシングされる前のプリプロプロテインは、ロイシン (18%)、グリシン (11%)、アラニン (9%) で38%とその4割近くを占める。これはプロセッシング後に4つに切断され、そのうちの2つがA鎖とB鎖として切り出され、二量体を構成する。
- A鎖: GIVEQCCTSICSLYQLENYCN
- B鎖: FVNQHLCGSHLVEALYLVCGERGFFYTPKT
二量体のアミノ酸比率は、システイン (12%) とロイシン (12%) が最も多く、合計で1⁄4を占める。
生化学
インスリンの作用機序
- インスリンは細胞膜にあるインスリン受容体に結合する。
- インスリン受容体は、インスリンが結合するとチロシンキナーゼとして活性化し、細胞質内のIRS-1 (Insulin Receptor Substrate-1) がリン酸化される。
- IRS-1→PI3キナーゼ(ホスファチジルイノシトール3キナーゼ)→PKB(プロテインキナーゼB)と信号が伝達され、細胞質のGLUT-4(GLUcose Transporter-4)が細胞表面へ浮上する。
- GLUT-4はグルコースをカリウムとともに血中から細胞内へ取り込む。例えばGLUT-4が多く存在する脂肪細胞に取り込まれたグルコースは細胞中で中性脂肪へ変換、蓄積される。
- インスリンにより交感神経系が刺激され、Na+/H+交換輸送体機能が亢進し、尿細管でのNa+再吸収が増加して、体内のNa+量と水分量が増加して、高血圧や浮腫を来たす。
- インスリンは腎の近位尿細管細胞にあるNa+依存性モノカルボン酸トランスポーター(SMCT1)に作用し、Na+の再吸収を亢進させる。
インスリンの生化学振動
食事後の1〜2時間ほどの消化の間、膵臓からのインスリンの放出は血中濃度が一定となるようには放出されてはおらず、3〜6分の周期で血中インスリン濃度をおおよそ100 ピコモル/Lから800 ピコモル/L以上へと変動するように放出されている。 これは細胞にあるインスリン受容体の(インスリンに対する感応度や細胞表面の受容体の数そのものを減少させる)脱感作を避け、インスリンの主要標的である肝臓の細胞に対してインスリンが十分に作用を果たせるようにするためではないかと考えられている。
インスリン受容体の脱感作はインスリン抵抗性とも関連があると見られることから、インスリン療法の管理においては、このインスリン振動すなわち一定濃度ではなく理想的には血中濃度が周期的に変動するような投与についてその有効性を検討する必要があり、将来のインスリンポンプはこの点について考慮されることが望まれる。
歴史
1869年にドイツ・ベルリンの医学生パウル・ランゲルハンス (Paul Langerhans) は、顕微鏡で見た膵臓の構造を研究していた。後にランゲルハンス島として知られる「小さな枠の集合体」は当時まだ知られていなかったが、エドワール・ラゲス(Edouard Laguesse)は、それらが消化に関わる大きな役割を果たすものであり得ると主張した。
1889年、リトアニア出身のドイツの内科医オスカル・ミンコフスキ(Oskar Minkowski)とヨーゼフ・フォン・メーリング(Joseph von Mehring)は健康な犬の膵臓を取り除く研究を行った。実験が始まって数日後、ミンコフスキーはハエがいつもこの犬の尿に群がっていることに気づいた。尿を調べてみると、糖分が含まれており、ここで初めて膵臓と糖尿病との関係が実証された。
1901年、アメリカ合衆国の病理学者ユージン・オピー(Eugene Opie)によりランゲルハンス島と糖尿病との関連が明らかにされたとき、この研究は新たな段階を迎えた。つまり、糖尿病はランゲルハンス島の部分的あるいは全体的な破壊によって惹き起こされることが分かった。しかしながら、ランゲルハンス島が果たす特定の役割については、この時点ではまだ不明であった。
それから20年、これに連なる数々の研究が科学者の間で行われた。1921年、カナダの整形外科医であるフレデリック・バンティング(ウィリアム・バンティング〈William Banting〉の遠縁の親戚)と、医学生のチャールズ・ハーバート・ベストの2人が、ジョン・ジェイムズ・リッカード・マクラウド(John James Rickard Macleod)の研究室で働いていたとき、インスリンを共同で発見した。
1922年1月11日、当時14歳であった1型糖尿病患者に世界で初めてインスリンの投与が、カナダのトロント総合病院で行われた。これは、精製方法が未熟であったこともあり、患者にひどいアレルギー反応が出たため中断された。ジェームス・バートラム・コリップは、それから12日間投与量の改善に日夜努力し、23日に再び投与が行われた。今度は副作用を惹き起こすこともなく、糖尿病の症状を取り除くことにも成功した。しかしながら、バンティングとベストはコリップを一種の闖入者と見なしたようで不和を生じたため、その後すぐにコリップは去って行った。
1922年の春が過ぎ、ベストは大量の需要にも応えられるように抽出技術を工夫したが、精製は未熟であった。1921年の発表の直後、イーライリリー社から、彼らは支援の申し出を受けており、4月にこの申し出を受けた。11月にリリー社は技術の革新に成功し、非常に純粋なインスリンの生産に成功した。このインスリンは「アイレチン」という名ですぐ市場に出された。インスリンの発見は1923年のノーベル生理学・医学賞の対象となった(#ノーベル賞で詳述)。
1933年、ポーランドの精神医学者マンフレート・ザーケルにより、インスリンを大量投与することにより低血糖ショックを人為的に起こさせて精神病患者を治療するというインスリン・ショック療法(Insulin shock therapy)が考案されたが、これは死亡例が多かった。その後、電気痙攣療法、薬物療法(クロルプロマジンに代表される抗精神病薬)が登場すると、1950年代には廃れた。
2013年、カナダはフレデリック・バンティングらの研究論文や臨床データと、インスリン普及後の各国からの報告をユネスコ記憶遺産へ申請し、これが登録された。
日本での歴史
大正13年(1924年)3月、現代之医学社から平川公行著『糖尿病のインスリン療法』という治療マニュアルが発売され、アメリカからの輸入も始まっている。当時の価格は50単位4円50銭、100単位8円と極めて高価であり、絶対適用の患者の場合は薬代だけで当時の平均賃金の3倍近くも必要になる。このため「世界一の高貴薬」と呼ばれ、糖尿病は「金持病」と揶揄された。
昭和10年(1935年)に帝国社臓器薬研究所(帝国臓器製薬→現あすか製薬株式会社)から国産初のインスリン製剤が発売されるが、ウシやブタの膵臓から抽出精製した物だったので非常に高価で生産量も少なく、輸入品と比べても安くは無かったため国産化は進まなかった。
昭和13年(1938年)に外交関係の悪化によりインスリンを初め医薬品の輸入が完全に停止し、日本国内は深刻なインスリン不足に陥る。
昭和16年(1941年)5月14日に魚のハラワタを原料とした魚インスリンを生産するために清水製薬(現EAファーマ)が設立され、同6年7月に出荷を開始している。第二次世界大戦中にもかかわらず国産インスリンの生産量は増え続け、国内需要を国産のみで満たせるようになると同時に十分の一以下にまで値下げされ、戦時中に値下げされた唯一の医薬品となる。
昭和20年(1945年)、太平洋戦争下の空襲により全てのインスリン工場が焼失し、国内生産は完全に停止した。
戦後まもなく清水製薬が生産を再開したことでインスリンの供給が再開され、ヒト・インスリンの登場まで日本は西洋とは異なる独自の魚インスリンの製造販売を続けた。
ノーベル賞
インスリンを発見したフレデリック・バンティングとジョン・ジェームズ・リッカード・マクラウドが1923年に賞を受賞。1951年にインスリンのアミノ酸構造を解明したフレデリック・サンガーが1958年にノーベル化学賞を受賞し、1964年にドロシー・ホジキンが、1977年にはロザリン・サスマン・ヤロウ(Rosalyn Sussman Yalow)がラジオイムノアッセイをインスリンで開発したことでそれぞれノーベル賞を受賞している。
インスリン製剤とインスリン療法
インスリンの副作用と有害性
低血糖症
- 運動後遅発性低血糖症
- 無自覚性低血糖症
- 詐病性低血糖症
インスリン・アレルギー
インスリン自体とインスリン製剤に含まれる、添加物に対するアレルギーと考えられている。まれにアナフィラキシーショックを生じる。
インスリン抗体による低血糖および高血糖
ヒトが体内で産生するヒト・インスリンで抗体が作られることはないが、インスリンアナログを投与した際に特異的な抗体が産生される場合があり、これがアレルギー症状を示して血糖コントロールに支障をきたすことがある。この産生の条件はよく判っていない。
脂肪異栄養症
- インスリン・リポハイパートロフィー - 同じ場所に皮下注射を繰り返すことで起こる皮膚の膨張症状
- インスリン・リポアトロフィー - 同じ場所に皮下注射を繰り返すことで起こる皮膚の陥凹症状
「脂肪異栄養症」(Lipodystrophy)、その中でも稀に発生する「進行性脂肪異栄養症」(Progressive Lipodystrophy)と呼ばれる症状がある。この症例は1950年代半ばまでに約200例報告されており、その大部分は女性である。これは上半身の皮下脂肪がほぼ消失する代わりに、腰から下の部位に脂肪が異常に蓄積する。1931年にこの症例が報告されたある女性の身体においては、10歳の時に顔の脂肪が減り始め、13歳の時に脂肪の消失が腰の括れ部分で止まった。その2年後、そこから下に向かって脂肪の蓄積が始まった。彼女の体脂肪は事実上、腰から下に集中しており、上半身は痩せている代わりに腰から下が異常に太っていた。サイエンス・ジャーナリストのゲアリー・タウブス(Gary Taubes)はこの脂肪異栄養症を取り上げたうえで、「カロリー理論によれば『太るのは食べすぎるからだ。食べる量を減らせば痩せられる』というなら、この女性の上半身から脂肪が減ったのは食べる量を減らしたからであり、腰から下に脂肪が蓄積したのは食べ過ぎたからだ』ということになるのか?明らかに馬鹿げた話だ」とカロリー理論を公然と批判している。脂肪組織において調節障害が発生し、身体の一部の脂肪が肥大していくこの症状は、インスリン療法の一環としてインスリンを注射している際に発生する最も一般的な合併症の一つであり、有害な免疫学的副作用であり、重大な問題である。
体重の一方的な増加
血中のインスリンの濃度が高い状態が続くと、体重が一方的に増加する。この状態は肥満に直結する。インスリンの濃度が低下すると体重は減少する。これは、その人がどれぐらい食べたか、運動していたかどうかは、何の関係も無い。とりわけインスリノーマの場合、外科手術で切除しない限り体重が一方的に増え続けていく。
炭水化物を制限すると血圧は低下する
空腹時においても持続する高血糖症を慢性高血糖症と呼ぶ。高血糖を惹き起こす最も一般的な原因は、炭水化物の消費にある
炭水化物や砂糖を食べて血糖値とインスリン濃度が高い状態になると、インスリンは腎臓に対して「ナトリウムを再吸収せよ」という信号を送り、腎臓はその指令のとおりに動く。インスリンは尿酸の分泌を阻害し、それに伴って身体は水分を保持しようとし、血圧は上昇する(→高血圧)。一方、炭水化物の摂取を制限する食事を続けることで、血糖値と血中のインスリン濃度が低い状態が続くと、体内で変化が起こる。食事から時間が経過したり、炭水化物が少ない食事を摂ったり、長時間絶食すると、血糖値と血中のインスリンの濃度が低下する。血中のインスリン濃度が低下すると、腎臓は貯蔵していたナトリウムを、体内に溜まった余計な水分と一緒に体外に排出する。これは人体にとって有益な現象であり、炭水化物の摂取を制限するだけで血圧は簡単に低下し、降圧剤の服用回数を減らせる。体重が200ポンド(約91kg)あり、炭水化物を常食している人がその摂取制限を開始すると、身体から減少する余計な水分量は、最大で6ポンド(約2.8 kg)以上に達する可能性があるとされる。
高血糖と糖化
肥満は糖尿病とも密接に関わっている。40歳から59歳の男性で、糖尿病が強く疑われる人の割合、BMI18.5 - 22が5.9%、BMI22 - 25が7.7%、BMI25 - 30が14.5%、BMI30以上が28.6%であった。なお、加齢を重ねていない20-39歳の男性ではこのような大きな差は出ていなかった。1971年から1980年のデータで糖尿病患者と日本人一般の平均寿命を比べると男性で約10年、女性では約15年の寿命の短縮が認められた。このメカニズムとして、高血糖が生体のタンパク質を非酵素的に糖化させ、タンパク質本来の機能を損なうことによって障害が発生する。これによってAGEs(Advanced Glycation End Products, 「最終糖化産物」と呼ばれる)が体内で次々に作られ、身体の至るところで炎症を惹き起こす。「糖化」とは「老化」のことである。この糖化による影響は、血管の主要構成成分であるコラーゲンや水晶体蛋白クリスタリンのような寿命の長いタンパク質ほど大きな影響を受ける。白内障は老化現象の一種であるが、高血糖状態が続くことでより高度に進行する。高血糖は、動脈硬化や微小血管障害の原因にもなる。この糖化反応で生じたフリーラジカルが酸化ストレス(Oxidative Stress)も増大させる。
インスリンと肥満
「インスリンがヒトを太らせる」
体重を目標もしくはそれ以下まで落としたものの、その後再び体重が増えてダイエット開始前と同じ体重に戻ったり、以前よりも体脂肪率が増加する。これは俗にリバウンドと呼ばれている。減量とリバウンドを繰り返すと、痩せにくく、太りやすい状態となる。
体重のリバウンド現象については、インスリンおよびインスリン抵抗性が原因と考えられている。カナダの腎臓内科医ジェイスン・ファン(Jason Fung)は、「リバウンドとは、インスリンが設定した体重に戻ろうとすること」と述べている。「体重の『設定値』を決めるのはこのインスリンであり、インスリンが過剰に分泌される状態およびインスリン抵抗性が続くと、インスリンが『体重の設定値のつまみを回す』。こうなると、何をどうしようとも、身体はインスリンが設定した体重に戻ろうとする」「体重のリバウンドが起こるのは、あなたの意志が弱いわけでも、努力が足りないわけでもない。インスリンがその人の体重を決める」という。また、身体活動および運動の効果に対しても、「体重を減らすことを目的に、食べる量を減らして運動をする習慣を付ける実験は、いずれも例外なく失敗に終わっている」「どれだけ運動を頑張ってこなし、食べる量を減らしたところで体重を減らす効果は無いことは証明済みである」「運動する人に比べて、運動しない人ほど痩せている」 と結論付けている。「やろうと思えば誰でも太らせることが可能だ。インスリンを注射するだけでいい。インスリン濃度が高い状態が続く限り、どんどん太り続ける。何をどうしようとも無駄である」と述べ、「『肥満ホルモン』ことインスリンがヒトを太らせる」と結論付けている。炭水化物の摂取制限を奨める人物も全員例外なく、「インスリンが出るから太る」という結論で一致しており、「過食や運動不足は肥満の原因ではなく、あくまで『結果』でしかない(「身体が太って脂肪が蓄積したあとに、過食したり、動かなくなる」)」と断じている。
インスリノーマ(Insulinoma)と呼ばれる腫瘍があり、これはインスリンの大量分泌を促す作用がある。インスリノーマにおいては、体重が一方的に増加し続ける。2年間で体重が37㎏も増加した症例がある。体重の一方的な増加は、インスリンの過剰分泌が原因である。
インスリノーマにおいては、低血糖症およびそれに伴う形で、高インスリン血症、鬱病、めまい、意識喪失、てんかん発作、意識障害、脳卒中様症状、神経障害といった神経学的症状までも惹き起こされる。インスリノーマにおいては、高インスリン血症に伴う形で、頭痛、複視、かすみ目、錯乱、異常行動、嗜眠、健忘症、発作、昏睡、発汗、脱力感、空腹感、振戦、吐き気、熱、不安、動悸がみられる。
膵臓内分泌腫瘍(Pancreatic Endocrine Tumors)における最大のものがインスリノーマであり、そのうちの10%は多発性であり、悪性である。
インスリノーマの最適な治療法は外科手術による切除であり、取り除くことで寛解する。インスリノーマを切除したあとの患者は低血糖症が無くなり、体重は大幅に減少する が、切除したあとでも再発するリスクはある。インスリノーマの切除に成功した最初の症例が報告されたのは1929年のことである。
インスリノーマは、内因性高インスリン症に関連する低血糖症の最も一般的な原因である。長時間絶食することにより、内因性高インスリン症を検出し、再発性低血糖の原因として不適切な形で上昇したインスリンの分泌を検出できる手段となる。
インスリンの濃度が高い状態では、身体は一方的に太り続けていく。これは、その人がどれぐらい食べたか、運動していたかどうかは、何の関係も無い。
インスリンは脂肪分解を抑制・妨害する
インスリンは脂肪の合成と貯蔵を促進し、体内における脂肪分解を徹底的に抑制・阻害する最大のホルモンである。
インスリンは脂肪の蓄積を強力に促進し、空腹感を高め、体重増加を惹き起こす。たとえカロリーを制限したところで、インスリンを注射された動物には過剰な量の体脂肪が蓄積する。
インスリンの分泌を高める食事は、インスリンを注射した時と同様の作用をもたらす。
インスリンは、細胞へのブドウ糖の取り込みを促進し、脂肪細胞からの脂肪酸の放出を抑制・妨害し、肝臓でのケトン体(Ketone Bodies)の産生を抑制し、脂肪の沈着を促進し、主要な代謝燃料の循環濃度までも低下させる。
肥満における危険因子には、高インスリン血症が関わっている。インスリンの濃度が正常より高い場合や、インスリンの濃度がほんのわずかに上昇するだけで肥満は惹き起こされる。インスリンの分泌を阻害する薬物を投与するか、インスリンの濃度が低下すると体重は減少する。脂肪分解を抑制・妨害する作用は、インスリンにおける最も敏感な代謝作用である。空腹時でもインスリンの濃度がわずかに上昇すると、脂肪細胞における脂肪分解作業は阻害される。細胞へのブドウ糖の取り込みを刺激するには、通常の6倍のインスリン濃度が必要になり、肝臓における糖新生(Gluconeogenesis)を抑制するには、インスリンの濃度が2倍になるだけで十分である。
脂肪細胞が満杯になってしまう場合に備えて、新しく脂肪を貯蔵する場所を確保するため、インスリンは脂肪細胞を新しく作るよう信号を送る。
17歳の時に1型糖尿病を発症したある女性は、その後47年間に亘って太ももにある2か所の部分に、毎日インスリンを注射し続けた。彼女の太ももには、マスクメロン大の脂肪の塊ができあがった。これは、「彼女が何をどの程度食べたか」とは何の関係も無く、「インスリンによる脂肪生成作用」に他ならない。全身のインスリン濃度が上昇している時にも、同じ現象が起こる。糖尿病患者がインスリン療法を受けるとしばしば肥満になるのは、これが理由である。『ジョスリン糖尿病学』(『Joslin's Diabetes Mellitus』)には、「It results from the direct lipogenic effect of insulin on adipose tissue, independent of food intake」(「食べ物の摂取とは何の関係も無い、脂肪組織に対するインスリンによる直接的な脂肪生成作用の結果である」)と説明されている。
リパーゼ、インスリン、脂肪分解と脂肪蓄積
1970年代初期、マサチューセッツ大学のジョージ・ウェイド(George Wade)は、雌のラットから卵巣を摘出し、そのラットの行動を観察し、性ホルモン、体重、および食欲の関係について研究を始めた。卵巣を摘出されたラットは餌をがつがつと食べ始め、瞬く間に肥満になった。ラットは過食し、その身体には過剰な脂肪が蓄積した(第1の実験)。その後、ウェイドは卵巣を摘出したラットに厳格な食餌制限を行った。このラットが激しい空腹を覚えて何かを食べたくてたまらなくなったとしても、その衝動を満たせない食餌制限を実施した(第2の実験)。その結果、ラットは好きなだけ餌を与えられた時と同じく、すみやかに肥満体になっただけであった。このラットは完全に動かなくなり、食べ物を得る必要がある時にだけ、動くようになった。 ラットの卵巣を摘出したことにより、ラットの脂肪組織は循環する血液から脂肪を蓄えた。一方、自由に餌を食べることも許されない時、ラットは使えるエネルギーが少ない以上、消費エネルギーを減らそうとしてその場でじっとしたまま動かなくなった(第2の実験)。これについてウェイドは「ラットは過食したから太ったのではなく、太りつつあるから過食した」と説明した。
ラットの卵巣を摘出するというのは、卵巣から分泌される女性ホルモン、エストロゲン(Estrogen)を除去することと同義である。卵巣を摘出したラットにエストロゲンを注射したところ、このラットは餌をがつがつと食べることは無く、肥満にもならなかった。卵巣を摘出したラットが過食する衝動に駆られたのは、身体を動かすのに必要なカロリーを脂肪細胞が次々に取り込んだことで、身体がエネルギー不足に陥ったためである。脂肪細胞がカロリーを取り込んで隔離すればするほど、ラットはエネルギーを補給しようとして食べる量を増やす。だが、脂肪細胞がカロリーを取り込み続ける限り、他の細胞に行き渡らせるだけの十分なカロリーが不足し、ラットは太り、飢え、空腹を満たせなければ、エネルギーの消費を減らす(動かなくなる)ことで解決しようとする。
エストロゲンは、LPL(Lipoprotein Lipase, リポプロテイン・リパーゼ)という酵素に対して、ある働きかけを行う。LPLは、脂肪組織、骨格筋、心筋、乳腺を含む多くの末梢組織の表面に発現し、血中を流れる脂肪を細胞内に送り込む役割がある。LPLが脂肪細胞の表面に発現している時、血中の脂肪を脂肪細胞が取り込む。一方、LPLが筋肉細胞に発現している時、脂肪は筋肉細胞に取り込まれ、筋肉はそれを燃料として消費する。エストロゲンには、脂肪細胞にあるLPLの活動を抑制・阻害する作用がある。細胞の周辺にエストロゲンが増えると、LPLの活性が低下し、脂肪が蓄積されにくくなる。逆に、このラットの実験のように卵巣を摘出することでエストロゲンが分泌されなくなると、脂肪細胞におけるLPLが活性化する。LPLは、そこでいつもの仕事をする(脂肪を脂肪細胞に取り込む)が、脂肪を蓄積させる役割を持つLPLを妨害するエストロゲンが無いために、脂肪細胞には大量のLPLが発現し、そのせいで脂肪が脂肪細胞に次々に取り込まれ、ラットは肥満体となった。ラットから卵巣を摘出したことで、エストロゲンは分泌されなくなり、ラットは通常以上に太っていった。ヒトにおいても、卵巣を摘出したあとや、閉経後の女性の多くは肥満になるが、その理由は、彼女らの体内でエストロゲンの分泌量が減り、その脂肪細胞にLPLが大量に発現するからである。
ラットを肥満から解放する方法はただ1つ、エストロゲンをラットに戻すことである。さすればラットは再び痩せるうえに、食欲も食べる量も正常に戻る。動物たちに食餌制限と運動を強いたところで無駄であり、彼らが肥満になるのを防ぐことはできない。
脂肪組織における脂肪の蓄積と減少には、インスリンのほかに、複数の酵素と複数のホルモンが関わっている。
ヒトを含めたすべての生物は、エネルギー基質や信号伝達の前駆体として、脂肪酸(Fatty Acids)を燃料にしている。脂肪酸を輸送および保存する際には、中性脂肪(Triglyceride)という分子の形で行われる。だが、中性脂肪はそのままの大きさでは細胞膜を通過できず、細胞への出入りが行われる際にはリパーゼ(Lipase)による作用で分解されなければならない。この生化学的過程を「脂肪分解」(Lipolysis)と呼ぶ。膵臓から分泌される膵液には脂肪分解作用があり、これは食べ物に含まれる脂肪分を腸が取り込む際に欠かせないものである。
LPLは、体内の脂肪の蓄積や脂肪の分解を制御する重要な酵素の一種である。脂肪組織、骨格筋、心筋、乳腺を含む多くの末梢組織の表面に発現し、血中から脂肪を細胞内に送り込む役割を持ち、この酵素を調節するのはインスリンである。インスリンは「脂肪代謝における主要な調節器」であり、同時にLPL活性化の調節器でもあり、脂肪細胞におけるLPLの活性化を促す。インスリンが分泌されればされるほど脂肪細胞におけるLPLの活性化はますます強まり、血中から多くの脂肪が脂肪細胞に流入していく。さらに、インスリンは筋肉細胞におけるLPLを抑制し、それによって筋肉が脂肪酸を燃料に使うこともできなくなる。脂肪細胞から脂肪酸が放出されようという時にインスリンの濃度が高ければ、これらの脂肪酸は筋肉細胞には取り込まれず、燃料として消費されることも無く、インスリンによって脂肪細胞に再び押し戻される。
LPLは、脂肪細胞における脂肪の蓄積に関わっている。肥満体においては、この酵素の活性化が、肝臓における脂肪生成ならびに高インスリン血症の増加に関係している。炭水化物の慢性的な消費が、この酵素の活性化の漸進的な上昇および脂肪細胞の肥大を促進することが分かっている。
脂肪細胞の表面にあるLPLの活性化が失われ、筋肉細胞の表面にあるLPLが活性化すると、蓄積した脂肪が減少する。
ヒトが運動をしている間、LPLの活性化は脂肪細胞内で低下し、筋肉細胞内で活性化が上昇する。これは脂肪細胞から脂肪が放出されるのを促進し、燃料を必要とする筋肉細胞で消費される。しかし、運動を終えた途端、この状況は逆転する。筋肉細胞におけるLPLの活性化は失われ、脂肪細胞内のLPLの活性化が急上昇し、脂肪細胞は運動中に失われた脂肪を補充しようとし、再び太る。これは、運動がヒトを空腹にさせる理由でもある。運動を終えると、筋肉はその補充と修復のためにタンパク質を必要とするのに加えて、脂肪の補充も積極的に行う。身体の他の部分は、運動によって身体から流出したエネルギーを補充しようとし、その作用で食欲が増す。
すなわち、運動をすると、その最中に少しは脂肪が減り、その分だけ痩せるが、運動を終えた途端、(運動中に失われた分の脂肪が)またもや体内に復活するようにできている。「運動をしても痩せない、肥満を防げないのはなぜか?」というのは、これで説明が付く。
男と女で太り方がそれぞれ異なるのは、LPLの分布が異なり、それに付随して分泌されるホルモンの影響もそれぞれ異なるためである。
ATGL(Adipose Triglyceride Lipase, 脂肪組織中性脂肪リパーゼ)は、脂肪細胞における脂肪分解の律速酵素(Rate-Limiting Enzyme)である。脂肪分解過程の触媒となる別の酵素としてHSL(Hormone Sensitive Lipase, ホルモン感受性リパーゼ)の存在があり、インスリンはこれらの酵素も調節する。ATGLは、遊離脂肪酸(Free Fatty Acids)を除去してジアシルグリセロール(Diacylglycerol)を生成することで脂肪分解を開始し、HSLがそれを加水分解する(グリセロールと脂肪酸に分解する)。
インスリンは、LPLだけでなく、HSLにも影響を及ぼす。HSLは、脂肪細胞にて中性脂肪を脂肪酸に分解し、それが血液循環に流れ出るよう促す。この時、脂肪細胞内の脂肪が減少する。HSLの活性化が高ければ高いほど、脂肪細胞からより多くの脂肪酸が放出され、身体はそれを燃料にして消費し、貯蔵されている脂肪の量が減っていく。インスリンはこのHSLの働きを抑制し、脂肪細胞内の中性脂肪の分解を妨害し、脂肪細胞からの脂肪酸の流出を最小限に抑える。インスリンはほんのわずかな量でHSLの働きを抑制し、インスリンの濃度がわずかでも上昇すると、脂肪細胞内に脂肪が蓄積していく。
HSLは、脂肪細胞における脂肪分解だけでなく、ステロイドの産生や精子の形成にも関わる重要な酵素である。HSLが欠損すると、脂肪組織の萎縮、炎症が起こり、インスリン抵抗性が全身に惹き起こされ、脂肪肝の発症を促進する。
ATGLとHSLの活性化は、絶食している時にWAT(White Adipose Tissue, 白色脂肪組織)で強力に上方調節された(有意に増加した)。同時に、血漿遊離脂肪酸の比率も増加し、空腹時や絶食状態になると脂肪分解率の上昇が確認された。
成長ホルモン(Growth Hormone)には、蓄積した脂肪の減少を促す作用がある。成長ホルモンは中性脂肪の分解を刺激し、LPLを阻害することにより、体重と体脂肪の減少が促進される。HSLの活性化は、体重減少に伴って大幅に強化される。インスリンはLPLを活性化させ、HSLの作用を抑制するが、成長ホルモンはインスリンによる脂肪生成作用を低下させ、脂肪組織における脂肪の貯蔵と蓄積を抑制・阻害する。高脂肪食を組み合わせることで、中性脂肪の数値も改善される。
インスリンを除く全てのホルモンはHSLを刺激することで中性脂肪の分解を促進するが、HSLはインスリン感受性が非常に高く、インスリンを除く全てのホルモンには、インスリンによる脂肪蓄積作用を上回る力が無い。インスリン以外のホルモンによる脂肪細胞からの脂肪酸の放出が可能となるのは、インスリンの濃度が低い時だけである。
1965年、医学物理学者のロザリン・サスマン・ヤロウ(Rosalyn Sussman Yalow)と、医師で化学者のソロモン・アーロン・バーソン(Solomon Aaron Berson)の2人は、「脂肪を脂肪細胞から放出させ、それをエネルギーにして消費する」ためには、「Requires only the negative stimulus of insulin deficiency.」(「『インスリン不足』という負の刺激以外は必要ない」)と明言した。
インスリンと癌
メタボリック症候群
1980年代、スタンフォード大学の教授で内分泌学者、ジェラルド・リーヴン(Gerald Reaven)は、「高血糖(Hyperglycemia)、インスリンの過剰分泌、ならびにインスリン抵抗性(Insulin Resistance)と高インスリン血症(Hyperinsulinemia)こそがメタボリック症候群(Metabolic Syndrome)の根本的な原因である」と考え、「高血糖とインスリンの過剰分泌をもたらすのは炭水化物および砂糖・果糖である」とした。1987年、アメリカ国立衛生研究所は総意委員会を招集し、糖尿病の予防や治療について、集まった委員たちに議論させた。出席者の1人であったリーヴンは、「Anyone who consumes more carbohydrates has to dispose of the load by secreting more insulin.」(「誰であれ、炭水化物の摂取量が多いほど、その人の体内ではインスリンがさらに分泌され、身体はその処理に追われることになる」)と述べた。1988年、アメリカ糖尿病協会(The American Diabetes Association)が主催した「バンティング・レクチャー」(Banting Lecture, インスリンの共同発見者の1人、フレデリック・バンティング〈Frederick Banting, 1891~1941〉に敬意を払っている)に出席したリーヴンは、メタボリック症候群は肥満・糖尿病・高血圧とも密接に関係している趣旨を述べた。
メタボリック症候群を患っているということは、身体がインスリン抵抗性を惹き起こしていることと同義である。インスリン抵抗性は、肥満ならびにメタボリック症候群の特徴である。インスリン抵抗性は、肥満、高血糖、糖尿病、メタボリック症候群、癌とも密接に関係している。
高血糖
炭水化物を摂取すると、体内でブドウ糖に合成され、高血糖状態になる。インスリンはブドウ糖の細胞への取り込みを促進し、脂肪細胞からの脂肪酸の放出を抑制・妨害し、それによって身体が脂肪ではなくブドウ糖を最優先でエネルギー源にするよう促進する。インスリンは肝臓でのケトン体の産生を抑制し、脂肪の沈着を促進し、主要な代謝燃料の循環濃度までも低下させる。
炭水化物を食べて高血糖になり、そのたびにインスリンを注射する、というのを繰り返していると、さまざまな合併症や癌を患う危険性が上昇し、インスリンの強制的な注射やインスリンの強制分泌を促進する薬物の服用は、身体に深刻な不利益をもたらす。インスリン療法を受けている患者は、インスリン療法を受けていない患者に比べて、心血管疾患(Cardiovascular Disease)で死亡する危険性が上昇する。さらに、インスリンを注射して血糖値を下げようとすると、心血管疾患の発症率は低下せず、死亡率は上昇する。体重については、インスリンを注射していただけで10㎏以上も増加した。インスリンは脂肪の蓄積を強力に促進し、空腹感を高め、体重増加を惹き起こす。たとえカロリーを制限したところで、インスリンを注射された動物には過剰な量の体脂肪が蓄積する。インスリンの過剰分泌を促進する食事は、インスリンを注射した時と同様の作用をもたらす。
血糖値が正常範囲内(90~99)であっても、血糖値が90未満の人間と比較すると、膵臓癌の累積発生率は有意に増加し、空腹時の血糖値が110を超えると、あらゆる癌で死亡する確率が有意に上昇する。「GLUT5」と呼ばれる果糖輸送体は乳癌の発生に関わっている。果糖は前立腺癌の腫瘍の増殖を強力に促進する。
炭水化物が多い食事は高血糖を有意に惹き起こす。砂糖を含む飲み物も高血糖の明確な原因となる。
インスリン抵抗性
インスリンとは、膵臓のランゲルハンス島にあるβ細胞(Beta Cell)から分泌されるペプチドホルモンである。細胞によるブドウ糖の取り込みを促進し、炭水化物、脂質、タンパク質の代謝を調節し、分裂を促進する効果を通じて細胞分裂と成長を促進し、正常な血糖値を維持する。
インスリン抵抗性は、インスリンが肝臓、脂肪組織、骨格筋といった抹消標的組織において、インスリンの機能が損なわれたり、弱まったり、機能を発揮できない状態を指す。インスリン抵抗性は、2型糖尿病の発症にも関与する極めて重要な病因因子である。
たとえ運動していても、炭水化物を食べている限り高血糖は防げず、インスリン感受性は運動を終えた途端に低下する(インスリン抵抗性が高くなる)。インスリン抵抗性は運動では防げない。
「インスリン感受性が低い」ということは、「インスリン抵抗性が高い」(インスリンの効き目が悪い)状態を意味する。
インスリン抵抗性に伴い、血糖値が慢性的に高い状態が続くと、インスリン抵抗性は、高血糖症、高インスリン血症、および全身の細胞に酸化ストレス(Oxidative Stress)をもたらす。高血糖は、体内でAGEs(Advanced Glycation End Products, 「最終糖化産物」と呼ばれる)の産生を促進する。これは身体の老化を強力に促進する物体で、タンパク質に糖が結合することでタンパク質が変性する。果糖はAGEsをブドウ糖以上に強力に生成し、ブドウ糖を摂取したときの10倍もできやすくなる。インスリン抵抗性において、高血糖は、最終糖化産物の形成を促進する。インスリンは全身の脂肪細胞に強く作用し、摂取した炭水化物を中性脂肪に合成して脂肪細胞内に閉じ込め、脂肪細胞は肥大していく。インスリンは脂肪細胞にエネルギーを貯蔵するにあたり、重要なホルモン信号を持つ。脂肪細胞は肝臓や骨格筋においてインスリン抵抗性に直面したとしても、インスリン感受性(インスリンの効き目の強さ)を維持する傾向が強く、インスリン抵抗性が強まれば強まるほど、脂肪組織の形成を促進し、体重の増加が加速する。脂肪細胞は、肥大するにつれて「サイトカイン・ストーム」(Cytokine Storm, 「免疫機能暴走」)を惹き起こし、これは全身に有害な影響をもたらす。サイトカイン・ストームは「高サイトカイン血症」(Hypercytokinemia)とも呼ばれ、もともと身体に備わっている免疫系統(Immune System)が「サイトカイン」と呼ばれる炎症信号伝達分子を制御不能状態で過剰に放出する現象であり、ヒトや動物にみられる生理的な反応である。サイトカインそのものは感染に対して身体が示す免疫反応の一部であるが、この分子が突然大量に放出されると、多臓器不全(Multisystem Organ Failure)を惹き起こしたり、死につながる。炎症反応を誘発する性質を持つサイトカイン(Proinflammatory Cytokine)である「IL-6」(「インターロイキン-6」, Interleukin-6, 炎症性サイトカインの一種)は、さまざまな代謝、内分泌、および腫瘍性疾患に関与する。IL-6の信号伝達はインスリン抵抗性を誘発し、タンパク質、脂質、脂肪酸の代謝を変化させ、貧血と食欲不振を刺激する。また、内臓脂肪は炎症誘発性のサイトカインを生成する。このサイトカインは血流に直接輸送され、サイトカイン・ストームを惹き起こす直接の原因となる。炎症誘発性のサイトカインは、腫瘍の発生に影響を与える。サイトカインは癌を促進する役割も果たす。
高血糖になると、膵臓は、血糖値を正常な状態に戻そうとしてさらに多くのインスリンを分泌するが、これは高インスリン血症の原因となる。筋肉細胞や脂肪細胞におけるインスリン感受性は低下し、血糖値は低下せず、インスリン抵抗性に対処するために膵臓のβ細胞は過剰な量のインスリンを分泌しようとする。
メタボリック症候群は、肥満、糖尿病、アルツハイマー病、さらには各種の癌とも密接に関わっている。また、砂糖および果糖は脳においてもインスリン抵抗性を惹き起こし、脳の神経組織を破壊し、アルツハイマー病を惹き起こす直接の原因となる。
砂糖および果糖はインスリン感受性を低下させ、内臓脂肪の蓄積を促進し、空腹時の血糖値とインスリンの濃度を上昇させ、肝臓に脂肪を蓄積させ、ミトコンドリアの機能を妨害し、炎症の誘発を刺激し、脂質異常症、インスリン抵抗性を惹き起こし、糖尿病発症を促進する。砂糖は膵臓癌 を初めとする各種の癌を患う可能性を高める。これの摂取を断つことが、癌の予防や治療への取り組みとなりうることを示唆している。砂糖の摂取を減らすことにより、脂肪肝、肥満、各種疾患を防げる可能性が出てくる。
ヒトはストレス(精神的な重圧や緊張状態)に晒されると、副腎皮質からコルチゾール(Cortisol)と呼ばれるホルモンが分泌され、血中に流れ出る。これは「ストレス・ホルモン」(Stress Hormone)と呼ばれ、慢性的なストレス反応に対して身体が示す正常な反応であるが、コルチゾールの濃度が高い状態が続くと、内臓脂肪の蓄積やインスリンの分泌を刺激し、インスリン抵抗性につながる可能性がある。インスリン抵抗性が認められる患者の体内では、コルチゾールとインスリンの濃度が高い。
臨床研究では、高血圧患者の約50%が高インスリン血症や耐糖能異常(Impaired Glucose Tolerance)を示し、2型糖尿病患者の最大80%が高血圧症を示している。インスリンは内皮において一酸化窒素の産生を刺激し、血管弛緩(Vasorelaxation)を誘発する作用も持つ。また、インスリンは腎臓に対して「ナトリウムを再吸収せよ」との信号を送る。腎臓は体内のナトリウムの量を保持し、インスリンはナトリウムの体外への排泄を抑制・妨害する。ナトリウムの蓄積は余分な水分貯留につながり、高血圧を惹き起こす。正常な血糖値を維持するためにインスリンが分泌され、それに伴う高インスリン血症は、インスリンによるナトリウム保持作用を悪化させ、高血圧をもたらす。
食事を終えて時間が経過したり、糖分が少ない食事を摂ったり、長時間絶食すると、血糖値と血中のインスリンの濃度が低下する。血中のインスリン濃度が低下すると、腎臓は貯蔵していたナトリウムを、体内に溜まった余分な水分と一緒に体外に排出する。炭水化物の摂取を制限すると血圧は低下し、降圧剤の服用回数を減らせる。高血圧をもたらすのは、インスリン抵抗性を直接惹き起こす砂糖であり、砂糖の摂取を減らすと、空腹時のインスリン濃度は低下し、血圧も低下する。ナトリウムとカリウムの摂取量が多いほど血圧は低くなり、この両方の摂取量が少ないほうが血圧は高くなる。
慢性的な高インスリン血症は、癌を促進する可能性を高める。また、インスリンは腫瘍の成長、増殖、転移を直接誘導する力を持つ。
慢性的な高血糖と酸化ストレスの増加も、癌を患う危険の増加につながる。さまざまな証拠が示すところでは、インスリン抵抗性と癌は密接に関係している。多くの臨床的および疫学的証拠は、高インスリン血症、インスリン抵抗性、および脂質異常症に関連する体重の過剰な増加は、結腸癌や乳癌を含む腫瘍の重大な危険因子である可能性を示している。
多くの疫学的研究は、インスリン抵抗性が強い患者の体内においては、乳癌、結腸直腸癌、肝臓癌、および膵臓癌を患う危険性が高いことを一貫して示している。インスリンは強力な分裂促進因子(Mitogen)であり、膵臓癌、結腸直腸癌、前立腺癌、子宮内膜癌、肝臓癌、卵巣癌、その他のありとあらゆる癌の発生にはインスリンが直接関与している証拠を提供する。高インスリン血症は、癌による死亡率を2倍に増やす。体重やBMIの数値が正常であったとしても、インスリンの濃度が上がるだけで、癌の発生率のみならず、その死亡率までもが上昇する。
医学博士のウィリアム・ファルーン(William Faloon)は、「多過ぎる量のインスリンは、すべての老化関連疾患に関与する。長寿の達成においてインスリンの制御は不可欠だ」「インスリンは、インスリンの分泌機能が損なわれている1型糖尿病患者にとっては命綱であるが、分泌が過剰な場合、有毒なホルモンとなる」「余分なインスリンを減らすことで脂肪の減少を促進し、寿命を延ばす」と書いた。
血中のインスリン濃度が低下すると、腫瘍の増殖は抑制される。慢性的な高インスリン血症とインスリン抵抗性を弱めることは、癌の予防に向けての取り組みにつながる。インスリンの濃度が低下する生活習慣や治療手段は、癌の予防や治療につながる。
5大陸、18か国に住む135,335人を対象に行われた大規模な疫学コホート研究の結果が『The Lancet』にて発表された(2017年)。これは炭水化物の摂取量および脂肪の摂取量と、心血管疾患に罹るリスクおよびその死亡率との関係についての調査であった。これによると、炭水化物の摂取を増やせば増やすほど死亡率は上昇し、脂肪の摂取を増やせば増やすほど死亡率は低下するという結果が示された。とくに、飽和脂肪酸の摂取量が多ければ多いほど、脳卒中に罹るリスクは低下した。また、飽和脂肪酸・不飽和脂肪酸を問わず、脂肪の摂取は死亡率を低下させ、心筋梗塞および心血管疾患の発症とは何の関係も無かった。
飽和脂肪酸の摂取は、冠状動脈性心臓病、脳卒中、心血管疾患の発症とは何の関係も無く、飽和脂肪酸がこれらの病気と明確に関係していることを示す証拠は無い。
また、多価不飽和脂肪酸の摂取量を増やし、飽和脂肪酸の摂取量を減らしても、心血管疾患の発症リスクは減らせない。
肥満、インスリン抵抗性、メタボリック症候群、2型糖尿病を患っている患者が、炭水化物の摂取を制限し、脂肪に置き換えて食べると、最大限の効果が得られる可能性がある。さらに、84時間に亘って絶食状態にあった被験者と、84時間に亘って脂肪「だけ」を摂取し続けた被験者の血中の状態は「全く同じ」であった。双方とも、血糖値とインスリンの濃度は低下し、遊離脂肪酸とケトン体の濃度、脂肪分解の速度がいずれも上昇した。
体重を減らしたい人、心血管疾患の危険因子を減らしたい人にとって、炭水化物が少なく、脂肪(トランス脂肪酸を除く全ての脂肪。飽和脂肪酸、一価不飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸)が多い食事はその選択肢となりうる。
炭水化物は、脂肪やタンパク質に比べてインスリンの分泌にはるかに大きな影響を及ぼす。インスリンは食事における満腹感を減少させ、摂食行動にも影響を及ぼす。炭水化物の摂取を減らすと、インスリン抵抗性は緩和される。炭水化物を制限する食事は、インスリンの濃度が高い患者に有益である証拠が示された。食後の血糖値の上昇とインスリンの分泌を最も強力に促進するのは炭水化物である。タンパク質もインスリンの分泌を刺激するが、インスリンと拮抗する異化ホルモン、グルカゴン(Glucagon)の分泌も誘発する。一方、食べ物に含まれる脂肪分は、インスリンの分泌にほとんど影響を与えない。この生理学的な事実は、低糖質・高脂肪食が人体に有益であることを示す理論的根拠となる。
炭水化物が少なく、脂肪が多い食事は、空腹感と満腹感に大いに影響を与える。炭水化物が多く、脂肪が少ない食事(カロリー制限食)と比較すると、高脂肪食は体脂肪を減少させ、身体のエネルギー消費量の増加を促進する。
また、炭水化物を制限する食事は、低脂肪食よりも大幅に体重を減らし、心血管疾患の危険因子も減少させる。
炭水化物の少ない食事は、血糖値とその制御の大幅な改善につながり、薬物の服用回数を減らせるだけでなく、服用の必要も無くなる可能性があり、この食事法は2型糖尿病の改善と回復にも効果的である証拠が示された。
ハーヴァード大学の元医学部長ジョージ・F・ケイヒル・ジュニア(George F. Cahill Jr.)は、
「Carbohydrates is driving insulin is driving fat.」(「脂肪を操るインスリンを、炭水化物が操る」) との言葉を残している。
食事を終えたのち、脂肪細胞へのブドウ糖の取り込みは、「Glucose Transporter Type 4, GLUT4」(「ブドウ糖輸送体」)を介してインスリンが行う。インスリンはブドウ糖の取り込みを促進し、脂肪分解を抑制し、脂肪生成を促進し、それに伴って遊離脂肪酸(Free Fatty Acid)が血流に流入していく。インスリンの濃度が低いとき、脂肪酸の酸化によって細胞内にエネルギーが供給されるが、心臓や肝臓のような臓器が脂肪をエネルギー源として利用するため、遊離脂肪酸が血流に放出されて循環し、有利脂肪酸はケトン体(Ketone Bodies)に変換される。このケトン体は、空腹状態のときに、脳にエネルギーを供給する。
サイエンス・ジャーナリストのゲアリー・タウブス(Gary Taubes)は、炭水化物は身体を太らせるだけでなく、肥満、心臓病、糖尿病、高血糖、インスリン抵抗性、メタボリック症候群の原因であり、最終的には癌をも惹き起こす根本的な原因でもある趣旨を明言しており、「砂糖は肥満、糖尿病、心臓病、メタボリック症候群を惹き起こす原因であり、これにはインスリン抵抗性が関わっている」「砂糖はインスリン抵抗性の直接の原因となる」「インスリン抵抗性は癌の原因となる」と断じている。
ボディービルダーとインスリンの乱用
2017年8月8日、アメリカ合衆国のボディービルダー、リッチ・ピアーナ(Rich Piana)が、散髪の最中に突然倒れた。ピアーナは意識不明の状態が2週間以上続いたまま、8月25日に死亡した。ピアーナの死因については剖検で公式に「不明」とされている が、インスリンの過剰摂取を疑う声がある。インスリンは膵臓のβ細胞で産生されるペプチドホルモンであり、身体における同化作用を持つホルモンとみなされている。インスリンは細胞内へのブドウ糖の取り込みとブドウ糖による代謝を促し、それに伴って血糖値が低下する。
ハーヴァード大学医学校(Harvard Medical School)の精神科教授で医学博士のハリスン・ポープ(Harrison Pope)によれば、ボディービルダーたちの間でインスリンの使用が増加しているのは確かであるという。ピアーナは2013年にYouTubeに動画を投稿し、その中でインスリンの服用は危険であることを認めたが、適切な量の糖分を摂取すれば危険は回避できる、と主張した。ボディービルダーがインスリンを服用する理由については、前述のとおり、インスリンには血糖値を低下させるだけでなく、同化作用があり、筋肉の増加を促進するからである。ポープは「インスリンはステロイドと同じく、筋肉の成長を促す同化作用が強く、ボディービルダーたちが服用している」「インスリンはすでに血中にあり、検出されることが無い」と述べた。
だが、インスリンの過剰摂取は低血糖症を惹き起こし、そこから発作、昏睡、神経学的な脳の損傷、そして死につながる。また、インスリンの服用はボディービルダーたちの間で大いに人気が高まっていることが判明した。ボディービルダーがインスリンを服用しており、そのことを公言していない場合は一際危険であるという。インスリンは規制された薬物ではなく、容易に入手できる。
健康のための運動の専門家、マット・フィッズ(Matt Fiddes)は、「糖尿病患者と同じく、インスリンを服用するなら十分な量の炭水化物を食べる必要がある。さもなくば昏睡状態に陥り、死に至る」と述べ、ピアーナが命を落とす原因となった可能性が最も高いのはインスリンである、と考えている。インスリンを服用する行為自体が非常に危険である。
2016年12月、イギリスのボディービルダー、ゲント・ウェイクフィールド(Ghent Wakefield)が自宅で死んでいるのが発見された。35歳であった。ノース・スタッフォードシャー(North Staffordshire)の検死官、イアン・スミス(Ian Smith) は、ウェイクフィールドの死因について「可能性が最も高いのはインスリンの乱用にあるだろう」と推測している。
また、「マット・フィッズの言うとおり、ピアーナの死因がインスリンにあるとすれば、議論が沸き起こるだろう。自分自身を命の危険に晒してまで、いかつく、どっしりとした筋肉を作り上げるだけの価値が本当にあるのか?」と疑問を投げかけているメディアもある。
インスリンは身体を太らせる作用が非常に強く、ボディービルダーの多くが理想として描いている肉体の構築を実際には困難にする。
イギリスのボディービルダー、トリスタン・アルバーツ(Tristan Alberts)は、筋肉を肥大させる目的でインスリンを服用していた。2017年11月、彼は自宅で嘔吐した状態で倒れているところを発見された。発見時の彼は外傷性の脳損傷を起こしており、呼吸もしていなかった。彼は低血糖性昏睡(Hypoglycemic Coma)と診断され、緊急手術を受けた。アルバーツは失明しており、自力で歩いたり、食べ物を食べたり、満足に会話することすらもできなくなり、24時間に亘って介護が必要な状況になった。筋肉を肥大させる目的から、糖尿病を患っていなかったとしてもインスリンを服用しているボディービルダーもいる。
『ブリティッシュ・ジャーナル・オブ・スポーツ・メディスン』(British Journal of Sports Medicine)に掲載された論文「Insulin as a drug of abuse in body building」(「ボディービルダーたちによる乱用薬物としてのインスリン」)では、
- 「インスリンの人体での半減期は4分であり、短時間で消失し、検出は非常に困難である。たとえ検出されたとしても、本人の体内から分泌されたインスリンとの区別は不可能である。それゆえ、インスリンはボディービルダーにとって非常に魅力的かつ潜在的に危険な薬物である」
- 「ボディービルダーたちによるインスリンの乱用はますます問題となっており、医師による監督下に無い状況でインスリンを乱用する人に降りかかる可能性のある潜在的な危険を浮き彫りにしている」
- 「致命傷を与えるだけの潜在能力を秘めたこの薬物は、知識が無くとも秘密裏に服用され、そのせいで診断と治療が遅れれば重大な結果を惹き起こす」
- 「インスリンの乱用は低血糖症につながり、昏睡や死につながる」
と述べ、筋肉を肥大させる目的でのインスリンの服用行為は非常に危険である、と結論付けている。
参考
参考文献
- 病態生理に基づく臨床薬理学 ISBN 4895924610
- インスリン療法マニュアル第4版 ISBN 9784830613692
- 糖尿病治療ガイド2008-2009 ISBN 9784830613708
- 超速効! 糖尿病診療エクスプレス(上巻) ISBN 4903331032
- 超速効! 糖尿病診療エクスプレス(下巻)ISBN 4903331040
- Hellman B, Gylfe E, Grapengiesser E, Dansk H, Salehi A (2007). “[Insulin oscillations--clinically important rhythm. Antidiabetics should increase the pulsative component of the insulin release]” (Swedish). Lakartidningen 104 (32–33): 2236–9. PMID 17822201.
関連項目
- 糖尿病
- 経口血糖降下薬
- シックディ
- インスリン抵抗性
- インスリン・ショック療法 - かつて統合失調症の治療法として用いられていた
- インクレチン - インスリンの分泌を促進する消化管ホルモン
- 高血糖症
- 低血糖症
- インスリノーマ
外部リンク
- University of Toronto Libraries Collection: Discovery and Early Development of Insulin, 1920–1925
- CBC Digital Archives – Banting, Best, Macleod, Collip: Chasing a Cure for Diabetes
- Animations of insulin's action in the body at AboutKidsHealth.ca
- Overview of all the structural information available in the PDB for UniProt: P01308 (Insulin) at the PDBe-KB.