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砂糖
砂糖(さとう、英語: Sugar、ドイツ語: Zucker)は、甘みを持つ調味料(甘味料)である。物質としては糖の結晶で、一般に多用される白砂糖の主成分はスクロース(Sucrose、ショ糖)と呼ばれ、これはブドウ糖と果糖の両方で構成される。原料はサトウキビやテンサイである。
砂糖の歴史は古く、その発明は2500年前と考えられている。インドからイスラム圏とヨーロッパへ順に伝播してゆき、かつては植民地に開拓されたプランテーションで多数の奴隷を使役して生産された。19世紀末になると「高級品」ではなく、一般に普及する食品となり、20世紀以降になると生産過剰から、地球規模で生産調整が行われるようになった。
砂糖の有害性については昔から様々な研究者が指摘している。現代では砂糖は疾病の原因になるという意識が強まり、国によっては肥満税や砂糖税を導入するなど、砂糖消費の削減が進んでいる。
原料と製法
サトウキビ
サトウキビの茎を細かく砕いて汁を搾り、その汁の不純物を沈殿させて、上澄み液を取り出し、煮詰めて結晶を作る。伝統的な製法では、カキ灰に含まれるカルシウム等のミネラル分が電解質となり、コロイドを凝集させる為、カキ殻を焼いて粉砕したカキ灰を沈殿助剤として加える例もある。
煮詰めてできた結晶と結晶にならなかった溶液(糖蜜)の混合物を、遠心分離機にかけて粗糖を作る。粗糖の表面を糖蜜で洗った後、さらに遠心分離機にかけて、結晶と糖蜜を分ける。その結晶を温水に溶かし、不純物を取り除き、ファインリカーにする。それを煮詰めて結晶を生じさせ、真空状態のもとで糖液を濃縮する。結晶を成長させた後、再び遠心分離機にかけて、現れた結晶が砂糖となる。
光合成において飽和点が高いため、他の植物よりも多く糖質を生産できる。
テンサイ(サトウダイコン)
テンサイの根を千切りにし、温水に浸して糖分を溶け出させて、その糖液を煮詰め、濾過して不純物を取り除く。真空状態のもとで糖液を濃縮し、結晶を成長させた後、遠心分離機にかけて現れた結晶が砂糖である。
砂糖の原料となりうるテンサイのベータブルガロシド(betavulgaroside)類には小腸でのグルコースの吸収抑制等による血糖値上昇抑制活性が認められた(詳細はサポニンを参照のこと)。
サトウカエデ
サトウカエデの幹に穴を開け、そこから樹液を採集する。その樹液を煮詰めて濃縮したものがメープルシロップである。これを更に濃縮を進めて固体状になったものがメープルシュガーである。
なお、糖分がやや低いものの、日本に自生するイタヤカエデからもメープルシュガーを作ることは可能であり、終戦直後の砂糖不足の時代に東北や北海道で製造が試みられたことがあるが、商業化ベースには乗らずに終わった。
オウギヤシ(サトウヤシ)
オウギヤシは東南アジアからインド東部にかけて栽培されている。樹液からパームシュガー(椰子砂糖)が作られる。また、それを発酵させて酒を作る。
スイートソルガム(サトウモロコシ)
モロコシ属のうち、糖分を多く含むものの総称で、アメリカ合衆国を中心に栽培されている。煮詰めてソルガムシュガー(ロゾク糖)をつくることもできるが、グルコースやフラクトースを多く含むため結晶化させにくく、結晶糖の収量としてはサトウキビやテンサイに劣るため、シロップの原料として使用されることが多い。バイオエタノールの原料としても多く利用されている。
搾りかすなど副生成物の年間排出量は世界中で約1億トン以上で、製糖工場自身の燃料として利用されるだけでなく、石灰分を多く含むため、製鉄、化学工業、大気汚染防止のための排煙脱硫材、上下水の浄化、河川海域の水質底質の改善、農業用の土壌改良材として使われる。搾りかすの一部は堆肥として農地に還元されるほか、キクラゲの菌床栽培の培地原料としても利用される。テンサイ(ビート)の搾り粕は牛の飼料として、サトウキビの搾りかす(バガス)は紙の原料としても使われる。
歴史
原産地と語源
サトウキビの原産地は、南太平洋の島々で、そこから東南アジアを経て、インドに伝わったとされるが、「インド原産」という説も強い。砂糖の歴史は古く、約2500年前に東インドでサトウキビの搾り汁を煮詰めて砂糖をつくる方法が発明されたと考えられている。例えば、カウティリヤにより紀元前4世紀後半に書かれたとされるサンスクリットで書かれた古典「アルタシャーストラ」(「実利論」)には、純度が一番低いグダ、キャンディの語源とされるカンダ、純度が最も高いサルカラ (SarkaraあるいはSarkkara) の3種類の砂糖の説明が記載されている。サルカラは英語の「Sugar」やフランス語の「Sucre」の語源になった。
また、パタンジャリが紀元前400~200年の間に書いたと推定されるサンスクリット文法の解説書「マハーバーシャ」には、砂糖を加えたライスプディングや発酵飲料の作り方が記載されている。砂糖は病気による衰弱や疲労の回復に効果があるとされ、薬としても用いられた。当時は「インドの塩」と呼ばれ、塩と関連づけられていた。
ダレイオス1世はインド遠征の際にサトウキビをペルシアに持ち帰り、国家機密として輸出と栽培を独占した。その後サトウキビは戦乱とともに黒海方面やペルシャ湾岸、中東一帯に広がっていった。フェニキア人や古代エジプト人は砂糖を香辛料や生薬として扱った。中国での砂糖製造の歴史は古く主に広東地方で行われていた。唐代の本草学者、蘇敬の『博物誌』には「太宗は砂糖の製造技術を学ぶため、リュー(インド)、とくにモキト(ベンガル)に職人を派遣した」と記述されている。
古代ギリシャのテオフラストスは『植物学概論』で「葦から採れる蜜」について書き留めている。そしてアレクサンドロス3世がインドに遠征した。また、帝政ローマ時代のギリシア人医師ディオスコリデスは砂糖をサッカロン(saccharon)と呼び、考察を行った。プリニウスやストラボン以後のローマ時代の学者はこれに倣った。
プランテーションの成立
966年ヴェネツィア共和国が中東から来る砂糖を貨物集散所に通して流通させる仕組みをつくった。11世紀末に十字軍がサトウキビをキプロスに持ち帰った。まず14世紀にはシチリアで、ついで15世紀初頭にはバレンシア地方へ栽培法が伝播し、地中海周辺が砂糖の生産地となった。
しかし、この15世紀からは大西洋の探検が少しずつ始まり、スペインがカナリア諸島で、ポルトガルがマデイラ諸島とアゾレス諸島でそれぞれサトウキビ栽培を始めた。この島々からの砂糖は1460年代にはヨーロッパへ輸出されており、シチリアやバレンシアでの砂糖生産は競争に敗れて衰退した。
新大陸の発見によって、まず最初に砂糖の大生産地となったのはブラジルの北東部(ノルデステ)だった。1530年代にサトウキビ栽培が始まり、1630年にレシフェを中心とする地方がオランダ領となると、さらに生産が促進された。しかし1654年にブラジル北東部が再びポルトガル領となると、サトウキビ生産者たちは技術を持ったまま、カリブ海のイギリスやフランス領に移民し、1650年代からはカリブ海域において大規模な砂糖プランテーションが相次いで開発され、この地方が砂糖生産の中心地となった。
砂糖プランテーションには多くの労働力が必要だったが、この労働力は奴隷によってまかなわれ、アフリカから多くの黒人奴隷がカリブ海域へと運ばれた。ここで奴隷船は砂糖を買い付け、ヨーロッパへ運んで工業製品を購入し、アフリカで奴隷と交換した。この三角貿易は大きな利益を上げ、この貿易を握っていたイギリスは、これによって産業革命の原資を蓄えたとされる。
またこれらの西インド諸島の農園主たちは、本国議会に議席を確保するようになり、18世紀には西インド諸島派として保護貿易と奴隷制を主張する一大勢力をなしていた。1764年にイギリス本国議会において可決された砂糖法は、英領以外から輸入される砂糖に課税するもので、税収増と西インドの砂糖業保護を狙ったものだったが、アメリカの13植民地の反対を受けて撤回を余儀なくされた。
しかし砂糖法は始まりにすぎず、1765年の印紙法や1770年のタウンゼント諸法によってアメリカ植民地の支配が強化されると植民地の不満は爆発し、アメリカ独立戦争へとつながっていくことになった。18世紀後半にはフランス領サン・ドマングが世界一の砂糖生産地となったが、1804年のハイチ革命によりハイチが独立すると、支配者層が追放されて農園は黒人に分配され、砂糖生産は一気に衰退した。
19世紀
一方、1747年にドイツの化学者アンドレアス・マルクグラーフ(Andreas Sigismund Marggraf)がテンサイから砂糖と同じ成分をとりだすことに成功した。1806年から1813年の大陸封鎖による影響で、イギリスからヨーロッパ大陸へ砂糖が供給されなくなった。そのためにナポレオンが砂糖の自給自足を目的としてテンサイに注目し、フランスやドイツを始めヨーロッパ各地に甜菜糖業の大規模生産が広まり製糖業が発達した。ナポレオン戦争後砂糖の供給が元に戻ってもテンサイの増産は続いた。
その一方で、サトウキビからの砂糖生産も増加の一途をたどった。19世紀にはいると、イギリスはインド洋のモーリシャスや南太平洋のフィジーにもサトウキビを導入し、プランテーションを建設した。すでに奴隷制はイギリスでは廃止されていたため、ここでの主な労働力は同じイギリス領のインドから呼ばれたインド人であった。そのため、現在でもこの両国においてはインド系住民が多い。やがてオーストラリアのクイーンズランド州でも生産するようになる。
19世紀末の国際価格低落による砂糖消費の増加は非アルコール飲料の消費増加と軌を一にしている。砂糖入り飲料(イギリスでは砂糖入り紅茶、ヨーロッパ大陸では砂糖入りコーヒー)とパンの組み合わせが庶民の安く手軽な朝食として取り入れられ、一般的なものとなっていったのである。
日本における砂糖の歴史
純然たる舶来品
日本には奈良時代に鑑真によって伝えられたとされている。唐において精糖技術が伝播する以前は、砂糖はシロップ状の糖蜜の形で使用されていた。唐の太宗の時代に西方から精糖技術が伝来すると、持ち運びが簡便になった。当初は輸入でしかもたらされない貴重品であり医薬品として扱われていた。
平安時代後期には本草和名に見られるようにある程度製糖の知識も普及し、お菓子や贈答品の一種として扱われた。室町時代には幾つもの文献に砂糖羊羹、砂糖饅頭、砂糖飴、砂糖餅といった砂糖を使った和菓子が見られるようになってくる。名に「砂糖」と付くことからも、調味料としての砂糖は当時としては珍しい物だということがわかる。狂言『附子』の中でも珍重されている。日明貿易も海禁政策の影響を免れなかった。
やがて戦国時代に南蛮貿易が開始されると宣教師たちによって金平糖がもちこまれ、さらにアジアから砂糖の輸入がさかんになり、徐々に砂糖の消費量は増大していく。
国産化の試み
江戸時代初期、薩摩藩支配下の琉球王国では、1623年に儀間真常が部下を明の福州に派遣して、サトウキビの栽培と黒糖の生産法を学ばせた。帰国した部下から得た知識を元に砂糖生産を奨励し、やがて琉球の特産品となった。
江戸時代には海外からの主要な輸入品のひとつに砂糖があげられるようになり、オランダや中国の貿易船がバラスト代わりの底荷として大量の砂糖を出島に持ち込んだ。このころ日本からは大量の金・銀が産出されており、その経済力をバックに砂糖は高値で輸入され、大量の砂糖供給は、砂糖を使った和菓子の発達をもたらした。
しかし17世紀後半には金銀は枯渇し、金銀流出の原因のひとつとなっていた砂糖輸入を減らすために、江戸幕府の将軍徳川吉宗が琉球からサトウキビをとりよせて江戸城内で栽培させ、サトウキビの栽培を奨励して砂糖の国産化をもくろんだ。また、殖産興業を目指す各藩も価格の高い砂糖に着目し、自領内で栽培を奨励した。
特に高松藩主松平頼恭がサトウキビ栽培を奨励し、天保期には国産白砂糖流通量の6割を占めるまでになった。また、高松藩はこのころ和三盆の開発に成功し、高級砂糖として現在でも製造されている。こうした動きによって19世紀にはいると砂糖のかなりは日本国内でまかなえるようになった。
天保元年から3年(1830年から1832年)には、大坂での取引量は輸入糖430万斤と国産糖2320万斤、あわせて2750万斤(1万6500トン)となり、さらに幕末の慶応元年(1865年)にはその2倍となっていた。
一方、このころ大坂の儒者である中井履軒は、著書『老婆心』の中で砂糖の害を述べ、砂糖亡国論を唱えた。また江戸幕府も文政元年(1818年)に、サトウキビの作付け制限を布告したが、実効は上がらず砂糖生産は増え続けた。江戸時代、砂糖の流通は砂糖問屋が行っていたが、幕府崩壊とともに独占体制が崩れ、明治時代には自由な流通が行われることとなった。
明治時代初期、鹿児島県徳之島における砂糖製造
明治時代初期、鹿児島県徳之島における砂糖製造は下の図に示す手順で行われた。
明治以後
日清戦争の結果として台湾が日本領となると、台湾総督府は糖業を中心とした開発を行った。また第一次世界大戦の結果、日本の委任統治領となった南洋諸島のうち、マリアナ諸島のサイパン島、テニアン島、ロタ島でも南洋興発による大規模なサトウキビ栽培が始まった。これにともなって日本には大量の砂糖が供給されることとなったが、沖縄を除く日本本土ではサトウキビの生産が衰退した。しかし台湾や南洋諸島での増産によって生産量は増大しつづけ、昭和に入ると砂糖の自給をほぼ達成した。一方、北海道においては明治初期にテンサイの生産が試みられたが一度失敗し、昭和期に入ってやっと商業ベースに乗るようになった。
この砂糖生産の拡大と生活水準の向上によって砂糖の消費量も増大し、1939年には一人当たり砂糖消費量が16.28kgと戦前の最高値に達し、2010年の消費量(16.4kg)とほぼ変わらないところまで消費が伸びていた。
戦時色が強くなった1939年には公定価格の設定対象になり、増税の上で卸売価格と小売価格が凍結された。 また、1940年に生活物資の配給制が導入されると、砂糖はマッチとならんでいち早く対象となった。その後、第二次世界大戦の戦況の悪化にともない、砂糖の消費量は激減し、1945年の敗戦によって、砂糖生産の中心地であった台湾や南洋諸島を失ったことで、砂糖の生産流通は一時大打撃を受け、1946年の一人あたり消費量は0.20kgまで落ち込んだ。その後1952年に、砂糖の配給が終了して生産が復活し、日本の経済復興とともに再び潤沢に砂糖が供給されるようになった。
生産と消費
順位 | 国 | 生産量 (百万トン) |
---|---|---|
01 | ブラジル | 24,8 |
02 | インド | 22,1 |
03 | 中国 | 11,1 |
04 | アメリカ合衆国 | 8,0 |
05 | タイ | 7,3 |
06 | オーストラリア | 5,4 |
07 | メキシコ | 4,9 |
08 | フランス | 4,4 |
09 | ドイツ | 4,2 |
10 | パキスタン | 4,0 |
11 | キューバ | 3,8 |
12 | 南アフリカ共和国 | 2,6 |
13 | コロンビア | 2,6 |
14 | フィリピン | 2,1 |
15 | インドネシア | 2,1 |
16 | ポーランド | 2,0 |
世界
砂糖の生産量は増加しており、1980年代には年1億トン前後であったものが2000年代には年1.4-1.5億トン程度になっている。全生産量のうち約30%が貿易で取引される。生産量の内訳は、サトウキビによるものが約70%、テンサイによるものが約30%である。サトウキビからの砂糖の主要生産国は、ブラジル・インド・中国であるが、ブラジルは中国の約3倍の生産量、インドは中国の約2倍の生産量である。テンサイからの砂糖の主要生産国は、EU各国(ドイツ・フランス他)、アメリカ合衆国、ロシアである。
一方、輸出国は主要生産国とは異なっている。これは、主要生産国のかなりが生産量は多いものの国内需要を満たすことができないことによる。世界最大の輸出国はブラジルであり、2008年には2025万トン、世界の総輸出量の59.6%を占め、圧倒的なシェアを持っている。次いでタイが510万トン(15.0%)、オーストラリアが389万トン(11.5%)、グアテマラが159万トン(4.7%)、南アフリカが80万トン(2.4%)と続く。
砂糖はさまざまな工業製品の原料として利用されている。オリゴ糖やパラチノース、食品添加物(乳化剤)のショ糖脂肪酸エステルは砂糖を原料として製造されており、着色料としてのカラメルも砂糖を原料とする。また、ポリウレタンやポリエステル、プラスチックの原料としても利用されている。近年では石油に代わる燃料としてバイオエタノールが注目された。そこでサトウキビやテンサイがバイオエタノールの製造に多く使用された。糖分を多く含む可食部分を醸造原料に使う限りエタノールは食料と競合するため、2007年-2008年の世界食料価格危機の主因となった。なお、バイオエタノール製造に不可欠なのは糖分であって、サトウキビやテンサイ由来でなくてもよい。
日本
砂糖の日本国内消費・生産は、1995-2004年度の10年間平均値(1995年10月-2005年9月)では、国内総需要は年230万トン(国産36%:輸入64%)、国産量は年83万トン(テンサイ約80%:サトウキビ約20%)である。年毎の動向を見ると、総消費量は、1985年には一人当たり21.9kgだったものが、2010年には16.4kgと大きく減少してきたが、ここ数年は下げ止まっている状態である。
日本で販売されている砂糖は、賞味期限が記載されていない。理由は食品衛生法やJAS法で、砂糖は長期保存可能食品のため、表記を免除されているからである。一部のメーカーでは、代表的な長期保存の可能な食品である缶詰の賞味期限に倣う形で、製造後3年に設定していたことがあった。長い賞味期限は在庫を膨張させている。
南北に長い日本列島は、サトウキビの栽培に適した亜熱帯とテンサイ栽培に適した冷帯の両方が存在する。国産量は微増傾向にあるが、それはテンサイ糖の増加によるもので、サトウキビ糖は微減傾向にある。サトウキビの生産地は沖縄県や鹿児島県で、戦前は他に台湾とマリアナ諸島で砂糖が大量に生産されていた。テンサイの生産地は北海道である。
日本の砂糖輸入は、タイ王国が約4割、オーストラリアが約4割、南アフリカが約1割をそれぞれ占め、この3カ国で9割以上の輸入をまかなっている。
主要国の2014年国民1人1日当りの砂糖消費量(g)は以下のようである。日本は先進国の中では、非常に少ない方である。
ブラジル | 172g | |
オーストラリア | 167g | |
ドイツ | 127g | |
アルゼンチン | 125g | |
オランダ | 120g | |
ロシア | 116g | |
タイ | 114g | |
メキシコ | 109g | |
フランス | 107g | |
エジプト | 100g | |
英国 | 93g | |
米国 | 89g | |
インド | 55g | |
日本 | 45g | |
中国 | 31g |
種類
呼称 | 糖種 | ショ糖 % | 転化糖 % | 灰分 % | 水分 % | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
砂糖 | 分蜜糖 | ||||||||
原料糖(粗糖) | 精製糖 | ザラメ糖 | |||||||
グラニュー糖 | 99.95 | 0.01 > | 0.01 > | 0.01 > | |||||
白双糖 | 99.95 | 0.01 > | 0.01 > | 0.02 | |||||
中双糖 | 99.70 | 0.05 | 0.03 | 0.03 | |||||
車糖 | |||||||||
上白糖 | 97.80 | 1.30 | 0.02 | 0.80 | |||||
中白糖 | 95.70 | 1.90 | 0.10 | 1.60 | |||||
三温糖 | 95.40 | 2.10 | 0.40 | 1.60 | |||||
液糖 | |||||||||
ショ糖型 | 67.00 | 0.20 | 0.01 | 32.00 | |||||
50%転化型 | 37.50 | 37.50 | 0.01 | 25.0 | |||||
加工糖 | |||||||||
角砂糖 | 99.80 | 0.01 | 0.01 > | 0.15 | |||||
氷砂糖 | 99.80 | 0.06 | 0.01 | 0.06 | |||||
粉砂糖 | 99.80 | 0.02 | 0.01 | 0.02 | |||||
顆粒状糖 | 99.80 | 0.01 | 0.02 | 0.02 | |||||
原料糖 | 原料糖 | 97.70 | 0.70 | 0.45 | 0.50 | ||||
耕地白糖 | 耕地白糖 | ||||||||
含蜜糖 | 黒砂糖 | 75-86 | 2.0-7.0 | 1.3-1.6 | 5.0-8.0 |
※ 三木健(1994)、「砂糖の種類と特性」より引用し改変
砂糖は、製造法によって(A)含蜜糖と(B)分蜜糖とに大きく分けられる。(A)含蜜糖は糖蜜を分離せずにそのまま結晶化したもので、黒砂糖・白下糖・カソナード(赤砂糖)・和三盆・ソルガム糖、メープルシュガーがこれに当たる。糖蜜を分離していないため原料本来の風味が残るのが特徴である。ほとんどの精糖原料から作ることができるが、テンサイから砂糖を作る場合は高度な精製が必要なため、含蜜糖の製造は一般的ではない(不可能という訳ではない)。
これに対し(B)分蜜糖は、文字通り糖蜜を分離し糖分のみを精製したもので、一般的に使用される砂糖である。まず原料からある程度の精製を行い、粗糖を作成する。粗糖は精製糖の原料であり、不純物も多くそのままでは食用に適さない。このため、生産地の近くでまず一次精製を行って粗糖を作成した後、貨物船に積み、消費地の近くで二次精製を行って、商品として流通する精製糖が作られる。しかし、生産地で粗糖を経由せず直接製造する耕地白糖や、粗糖工場に精製工場を併設して産地で精製した最終製品まで製造する耕地精糖といった種類も存在する。
精製糖は、大きくザラメ糖・車糖・加工糖・液糖の4つに分類される。ザラメ糖はハードシュガーとも呼ばれ、結晶が大きく乾いてさらさらした砂糖であり、グラニュー糖・白双糖(しろざらとう)・中双糖(ちゅうざらとう)がこれに属する。なお、一般的には白双糖と中双糖を指してザラメという。白双糖を白ザラメ、中双糖を黄ザラメともいう。一方、車糖はソフトシュガーとも呼ばれ、結晶が小さくしっとりとした手触りのある砂糖で、上白糖・三温糖がこれに属する。液糖はその名の通り、液体の砂糖である。また、ザラメ糖を原料として、角砂糖・氷砂糖・粉砂糖・顆粒状糖の加工糖が製造される。
日本においては最も一般的な砂糖は上白糖であり、日本での消費の半分以上を占めるが、上白糖は日本独自のもので、製造・消費されるのも日本であり、ヨーロッパやアメリカ合衆国では、ほとんど使われない。世界では「砂糖」といえば『グラニュー糖』を指す。
1970年代後半には、クロマトグラフィー果糖濃縮技術の出現で、異性化糖(高果糖コーンシロップ、HFCS)の大量生産を可能とした。異性化糖の消費が増加し、砂糖の消費を減少させた。
調理上の特性
砂糖は単に食品に甘味をつけるためだけではなく、食品にさまざまな効果を与えるためにも利用される。
- タンパク質の熱凝固抑制-卵焼きやプリンが柔らかく仕上がる
- 乾燥防止-焼き菓子の乾燥を防ぐ
- ペクチンのゲル化-果物のペクチンをゲル化させかつ水分活性を抑えることで日持ちのするジャムにする。
- デンプンの老化抑制-デンプンの老化を抑制して菓子を柔らかく保つ。
- 油脂の酸化抑制
- イースト菌の発酵促進
- 着色・着香
- 防腐
- 砂糖漬け、あんこ、果実ジャム。
日本料理においては、「料理のさしすせそ」の一つに数えられ、中心的な調味料の一つとなっている。これは、醤油、塩、砂糖による組み合わせを基本とする料理が多いことによる。一方、西洋料理や中華料理においては、砂糖を大量に使う料理のほうが少ない。
食品に含まれる砂糖
国立健康・栄養研究所によれば、飲料に含まれる砂糖の量は、次のようである。
- ヤクルト‥‥‥‥‥‥砂糖 12g
- コーヒー飲料(小)‥‥砂糖 18g
- サイダー缶‥‥‥‥‥砂糖 36g
- 炭酸飲料(コーラ)‥‥砂糖 42g
文部科学省によれば、菓子類に含まれる砂糖の量は、次のようである。
- どらやき‥‥‥‥‥‥可食部100gに、砂糖38g
- きんつば‥‥‥‥‥‥可食部100gに、砂糖40g
- 練りようかん‥‥‥‥可食部100gに、砂糖56g
- シュークリーム‥‥‥可食部100gに、砂糖15g
- ショートケーキ‥‥‥可食部100gに、砂糖23g
英国政府によれば、食品に含まれる砂糖の量は、次のようである。
- プレーン・チョコレート‥100gに、砂糖62g
- フルーツ・ヨーグルト‥‥100gに、砂糖17g
- トマト・ケチャップ‥‥‥100gに、砂糖28g
砂糖と健康問題
糖反射
ヒトの胃は1分間に約3回ほどのペースで動いている。胃に糖が入ると胃の動きが止まると言われている。被験者に砂糖水を飲ませると、数十秒間胃腸の動きが完全に静止し、逆に塩水を飲ませると、胃腸の動きが急に活性化した。量的には角砂糖の1/4-1/5個くらいで起こる。糖分は唾液、胃液、腸液で5.4%等張液として消化吸収され、大量の糖分を摂取すれば1時間以上に亘って停滞が起こるとされる。糖は細胞に対して絶縁物質として作用し、神経信号の伝達を阻害するのではないかと考えられている。糖分は静脈の弛緩をもたらすとともに血液粘度を上げ、血流の遅滞が起こり、組織や静脈に老廃物が蓄積することで様々な病気が発症することがある。
日本における戦前の砂糖の有害性に関する研究
日本に栄養学を創設した佐伯矩は、内務省衛生局『栄養と嗜好』(1930年)にて「栄養研究の大いに進歩しているアメリカでは三白の禍として白パン・白砂糖・白い乳粉を憂いているが、わが国でも三白の禍ありて、それは白い米、白砂糖、白い味付けの粉がそれである」と述べている。1939年には、桜沢如一が『砂糖の毒と肉食の害』を著している。
砂糖の毒性
独立行政法人農畜産業振興機構は、砂糖の悪影響について
- 「いろいろな食品をほどよく摂取することが大切であるという原則を忘れて、特定の食品や食品成分を悪者に仕立て、それを一方的に排斥しようとすることは食生活教育をゆがめるもの」「米国食品・医薬局(FDA)は1986年に「糖質系甘味料に含まれる糖類の健康面の評価」という報告書を発表しました。(中略)虫歯の発生に砂糖が関与することは認めたものの、その他の「砂糖疑惑」は、現在の消費水準及び使用法で有害であることを示す証拠はないと結論した」「確かに過剰摂取すれば悪影響が生ずる可能性はありますが、そういう問題は砂糖に限ったことではありません。」
- 「砂糖のエネルギーは、他の糖質と同様に1g当たり4Kcalで特別に肥満になる要因はありません。疫学的研究でみれば、砂糖摂取と肥満は逆の相関を示しています。さらに、一国の食糧供給量における砂糖供給量の割合と肥満発生率とは何の関係もありません。」「糖質と肥満に関する最近の研究では、砂糖を含めて糖質に富む食事よりも脂肪の豊富な食事の方が太りやすいというデ-タの方が優勢です。」
- 「日本人の食事による摂取カロリーは減り続けている。砂糖は肥満の原因ではない」「砂糖は脳に欠かせない」「アルツハイマー病患者に砂糖を与えた場合と与えない場合を比較すると、砂糖を摂取したほうが記憶が大きく改善する」「砂糖の制限は『食の楽しみ』を奪う」「バランスのよい食事が大事だ」
と、砂糖の安全性を強調しているが、砂糖の摂取と疾患や行動の変容との相関を示す数々の調査結果が出ている。
- ハーバード大学の研究者が、アメリカ合衆国の男女約12万人のデータを分析した結果では、砂糖の入った清涼飲料の消費が増えるほど心疾患による死亡リスクが高まり、乳がんと大腸がんのリスクも少し高まったことが分かった。がんでは増加はなく、人工甘味料では1日4杯以上に限り心臓疾患のリスクが高まった。
- 砂糖は気分を不安定にさせる。砂糖は血糖値を急上昇させ、インスリンが放出されると血糖値は急降下する。その際に空腹感を覚えたり、眠気が襲ってきたり、イライラしたり、怒りっぽくなる場合がある。
- アメリカ疾病予防管理センター(CDC)のドクター・ヤンは、「アメリカ人の多くは砂糖を摂り過ぎている。砂糖を最も多く摂取する人では、最も少なく摂取する人に比べて、心臓病で死亡する人が2.75倍も多い」という調査結果を発表した。虚血性心疾患に関しては、アメリカ心臓協会が2006年に発表した生活指針で、砂糖の含有量が多いものを減らすよう勧めており、砂糖の摂取量について、「女性は1日に25g以下、男性は1日に37.5g以下」にするよう勧告を出している。
- 高カルシウム尿症の尿路結石症患者は、砂糖の過剰摂取をしないよう勧告されている。
- 注意欠陥・多動性障害 (ADHD) と、砂糖の摂取との関連を示す、小規模な研究報告が継続的に報告されている。2006年には、5000人以上と規模の大きい研究で砂糖の多いソフトドリンクの摂取量とADHDとの相関関係が観察された。ただし、J字型の相関であり単純に比例関係にあるというわけではない。
- 果糖を摂取した時の血糖値の上昇は、ブドウ糖を摂取した時に比べて緩やかではあるが、肝臓が果糖をすべて脂肪に変えて内臓脂肪として蓄積させる。「果糖を代謝できるのは、人体の中では肝臓だけ」であるため。肝臓が炭水化物を材料にして脂肪を合成する過程は「デノボ脂肪生成」( De Novo Lipogenesis, 「De Novo」はラテン語で「再び」の意 )と呼ばれる。果糖を摂取し続けることで肝細胞に脂肪が蓄積していき、飲酒の習慣が無い人間でも脂肪肝を患う。脂肪肝を患って間もない時点ではまだ治る余地はあるが、進行すると炎症を起こして肝炎が発生し、最終的には肝硬変を惹き起こす。カリフォルニア大学のロバート・ラスティグも「砂糖は脂肪肝の原因になる」と主張している。また、ラスティグは果糖を「Alcohol Without the Buzz」(「酔わせる作用の無いアルコール」)と表現している。
- 砂糖・果糖はほんの僅かな期間で肝臓に脂肪を有意に蓄積させる。
- 砂糖・果糖は中性脂肪を有意に増加させ、空腹時の脂肪酸の酸化を低下させる(脂肪の燃焼を抑制・妨害し、身体から脂肪が減らない)。
- 砂糖の摂取は、中性脂肪の数値を高め、高血圧を惹き起こし、内臓脂肪の蓄積を促し、インスリン抵抗性、糖尿病、メタボリック症候群を惹き起こす。砂糖を摂取し続けることで脂肪肝を患うと、心血管疾患を惹き起こして死亡する確率が上昇する。
- 砂糖を摂取することで、体内でAGEs(終末糖化産物)が作られやすくなる。これは身体の老化を強力に促進する物体で、タンパク質に糖が結合することでタンパク質が変性する。AGEsができやすくなる確率は、ブドウ糖を摂取した際の10倍にまでなる。
- 砂糖および果糖はインスリン感受性を低下させ、内臓脂肪の蓄積を促進し、空腹時の血糖値とインスリンの濃度を上昇させ、肝臓に脂肪を蓄積させ、ミトコンドリアの機能を妨害し、炎症の誘発を刺激し、脂質異常症、インスリン抵抗性を惹き起こし、糖尿病発症を促進する。
- 砂糖および果糖の摂取は痛風を惹き起こす可能性が示唆されている。心疾患、メタボリック症候群に砂糖が関わっていることは以前から知られていた。
- 砂糖は膵臓癌を初めとする各種の癌を患う可能性を高める。これの摂取を断つことが、癌の予防や治療への取り組みとなりうることを示唆している。
- 砂糖および果糖は脳においてもインスリン抵抗性を惹き起こし、脳の神経組織を破壊し、アルツハイマー病を惹き起こす。
- 砂糖および果糖は「虫歯の大いなる原因である」と結論付けられている。砂糖が入っている飲み物の販売の禁止、砂糖の摂取に対する警告ラベルの商品への貼り付け、砂糖税の導入は、砂糖の摂取を減らせる取り組みとなりうる。
- 砂糖の摂取を減らすことで、脂肪肝、肥満、各種疾患を防げる可能性がある。
- 砂糖および果糖の摂取は肝臓への脂肪の蓄積を促すが、炭水化物および砂糖が少ない食事を摂ると、蓄積した脂肪が急速に減少することが確認された。外部からの資金提供を受けることなく書かれた研究論文の著者は、「身体の健康を守るために砂糖の摂取を制限すべきである」と結論付けている。
1775年、イングランドの医師、マテュー・ドブスン(en:Matthew Dobson)は、糖尿病患者の尿の甘みが、グラニュー糖のような物質によるものであることを発見し、翌年それを発表した。その研究は1790年代ににスコットランド出身の軍医、ジョン・ロロ(John Rollo)によって引用され、糖尿病の食事療法の基礎を確立するのに貢献した。
フランスの法律家で美食家、ジャン・アンテルム・ブリア=サヴァラン(Jean Anthelme Brillat-Savarin)は、著書『Physiologie du gout』の中で、「肉食動物は決して太らない」「デンプン質が豊富なものを常食している動物は、いずれも例外なく、強制的に脂肪が蓄積していく。ヒトもまた、この普遍的な法則から逃れられはしない」と書いた。また、「La fécule produit plus vite et plus sûrement son effet quand elle est unie au sucre」「デンプンは、砂糖と組み合わせることにより、より迅速に、より確実にその効果が発揮される」との記述を残している。
1856年、フランスの医師で生理学者、クロード・ベルナールは、パリで糖尿病についての講演を行っていた。イングランドの医師ウィリアム・ハーヴィー(William Harvey)は、ベルナールによる講演を聴いていた。ベルナールは肝臓の機能について、肝臓がブドウ糖を産生して分泌することや、糖尿病患者の血中ではブドウ糖の濃度が異常に上昇している趣旨を説明した。また、ベルナールはブリア=サヴァランの著書を読み、肥満の治療法を発見した、と述べた。
ベルナールの講演を聴いたハーヴィーは、糖やデンプンを含まない動物性食品による食事を取ると、糖尿病患者の尿中への糖の排泄が抑制される事実に考えを巡らせ、これが体重を減らす食事法としても機能するかもしれない、と考えた。ハーヴィーは、「糖やデンプンを含む食べ物は動物を太らせるために使われる。糖尿病になると身体から脂肪が急速に減っていくことが分かる。肥満の進行の仕方はさまざまであれ、その原因は糖尿病に行き着く点に思い当たった。もしも動物性食品が糖尿病に対して有効であるなら、動物性食品および糖やデンプンを含まない植物性食品との組み合わせが、過剰な量の脂肪の生成を抑制するのに役立つ可能性がある」と記述した。ハーヴィーは、自身の友人の1人で、ロンドンで葬儀屋をやっていたウィリアム・バンティングに、砂糖やデンプンを含まない食事法を教えた。バンティングは自身が太り過ぎていただけでなく、身体の随所で発生していた深刻な不調にも悩まされていた。ハーヴィーからこの食事法を教わり、実践したバンティングは、体重を減らし、身体の不調も回復していった。1863年、バンティングは公開書簡『Letter on Corpulence, Addressed to the Public』(『市民に宛てた、肥満についての書簡』)を出版した。この公開書簡はまもなくベストセラーとなり、複数の言語に翻訳された。のちにバンティングの名前から、「Bant」は「食事療法に励む」を意味する動詞として使われるようになった。「Banting」という言葉はウィリアム・バンティングの名にちなんで使われるようになり、スウェーデン語にも輸入されて使われるようになった。英語辞典のメリアム・ウェブスター(Merriam Webster)では「Banting」について、「肥満体策としての食事療法で、炭水化物や甘い味付けの食べ物を避ける」と定義している。
アメリカ合衆国アリゾナ州に住む先住民族、ピマ族(Pima Indian)は、肥満や糖尿病の患者数がとても多い民族である。1850年代までのピマ族は狩猟採集生活を送っていた。獲物を捕らえて殺してその肉を食べ、領内を流れるヒラ川に生息する魚を食べていた。カリフォルニア州にてゴールドラッシュが始まると、アメリカ連邦政府は、ピマ族に対して食料を提供するよう依頼した。ピマ族は、サン・タフェの馬車道を通ってカリフォルニアに向かう旅行者数万人に、自分たちの食料を提供し続けた。だが、イギリスからの白人の移民とメキシコ人が移住し始めると、彼らはヒラ川の水流を、自分たちの畑に引いて迂回させた。ピマ族たちの獲物であるシカやアンテロープといった動物たちは、この移住者たちによってほぼ絶滅させられた。1850年以降、ピマ族の居留地には6つの交易所が開設された。狩猟採集生活が不可能となったピマ族は、その交易所から砂糖、コーヒー、缶詰を購入するようになった。彼らはアメリカ連邦政府からの配給食に頼るようになるが、この配給食の大部分は小麦粉であった。少なくとも、100年前までのピマ族にとってはかなりの摂取量となる砂糖を含んでいた。ピマ族の大多数は肥満になり、糖尿病を患うようになった。
1901年から1905年にかけて、フランク・B・ラッセルとアロイス・フェルディナント・ハルドリチカ、それぞれ2人の人類学者がピマ族の元を訪れた。ラッセルとハルドリチカが訪問したころのピマ族は、作物を可能な限り育ててはいたが、この時点で政府からの配給食に頼っていた。「彼らが食べているものの中には、明らかに太らせるものがあるようだ」とラッセルは記録した。ハルドリチカは、ピマ族が心許ない状態にある点を考慮すれば、彼らは痩せているはずだ、と考えた。ハルドリチカは「彼らの肥満の原因について、食べ物は明らかに間接的なものだ」と記録し、ピマ族が太っているのは運動不足が原因だ、と考えた。一方で、同地域に住むプエブロ族(Pueblo Indian)は「昔から座りがちの生活を送っていて、痩せている」点に気付いたハルドリチカは困惑していた。
狩猟採集生活を送っていたころのピマ族は食料が豊富にあり、1日の労働時間は現在よりも少なかった。政府からの配給食に頼るようになってからのほうが運動量は多く、労働時間は長く、食べる量もはるかに少ない。19世紀半ばのピマ族の健康状態について、1846年にアメリカ陸軍部隊がピマ族の土地を通過した際、部隊に従軍していた外科医のジョン・グリフィン(John Griffin)は、「活発で良好」「素晴らしい健康状態」と評し、「貯蔵庫が溢れるほどに、食料が豊富にある」と記録した。アメリカ国境委員会長官のジョン・バートレット(John Bartlett)は、1852年に「ピマ族において、女性は胸が発達し、身体は細身であり、男性においては、身体はひょろ長く、四肢は細く、胸板は狭い」と記録した。
北極圏に住むエスキモーたちは、動物の肉と魚、およびその脂肪を食べて生活してきた。西洋との交易が始まり、小麦粉と砂糖を食べ始めるようになってから、彼らは肥満や糖尿病を患うようになっていった。
血圧
炭水化物および砂糖を食べて血糖値とインスリンの濃度が高い状態になると、インスリンは腎臓に対して「ナトリウムを再吸収せよ」という信号を送り、腎臓はその指令のとおりに動く。インスリンは尿酸の分泌を阻害し、それに伴って身体は水分を保持しようとし、血圧は上昇する。一方、食事を終えて時間が経過したり、糖分が少ない食事を摂ったり、長時間絶食すると、血糖値と血中のインスリンの濃度が低下する。血中のインスリン濃度が低下すると、腎臓は貯蔵していたナトリウムを、体内に溜まった余分な水分と一緒に体外に排出する。これは人体にとって有益な現象であり、炭水化物の摂取を制限すると血圧は低下し、降圧剤の服用回数を減らせる。体重が200ポンド(約91kg)あり、炭水化物を常食している人がその摂取制限を開始すると、身体から減少する余分な水分量は、最大で6ポンド(約2.8kg)以上に達する可能性がある。
砂糖中毒
英語圏においては、「Sugar Addiction」(砂糖中毒、砂糖依存症)という言い方が広まっており、「砂糖に対する欲求や、砂糖を多く含んだものが止められないという砂糖に対する渇望感は、中毒症状の一種であり、その中毒症状を惹き起こすのは砂糖である」という見方が広まっている。アメリカ合衆国の歯科医師ウェストン・プライスは、狩猟採集生活を送っている集団の食生活についての研究をまとめた報告書『食生活と身体の退化―先住民の伝統食と近代食その身体への驚くべき影響』(1939年)の中で、「砂糖を食べるようになってから、虫歯を患ったり、栄養不足に伴う病気が増えた」と述べている。
イギリスの生理学者・栄養学者、ジョン・ユドキンは、ミネソタ大学の生理学者アンセル・キースと、「砂糖・脂肪論争」を繰り広げた。この論争では、「心臓病を惹き起こす原因は(食べ物に含まれる)脂肪分にある」というキースの主張が通り、ユドキンの「砂糖が原因である」との主張は通らなかった。その後、アメリカ合衆国政府は「脂肪の摂取を減らし、炭水化物の摂取を増やせ」と国民に呼びかけたが、肥満・糖尿病・心臓病を患う国民の数は増え続けた。ユドキンは著書『Pure, White and Deadly』(1972年)の中で、「肥満や心臓病を惹き起こす犯人は砂糖であり、食べ物に含まれる脂肪分は、これらの病気とは何の関係もない」と断じている。
1980年代の時点で、砂糖は冠状動脈性心臓病の発症に重要な役割を果たす、と信じていた科学者はほとんどいなかった。
ユドキンの主張を支持する者の1人として、カリフォルニア大学の神経内分泌学者、ロバート・ラスティグがおり、カリフォルニア大学が製作・公開したラスティグによる講演『Sugar: The Bitter Truth』の中で、「砂糖は毒物であり、ヒトを肥満にさせ、病気にさせる」「砂糖の含有量が多いものには課税すべきだ」と断じており、著書『Fat Chance』の中でもそのように主張している。また、「砂糖はカロリーがあるだけで栄養価は皆無であり、肥満をもたらすだけでなく、タバコやアルコールと同じように中毒性が強く、含有する成分の果糖が内分泌系に悪影響を与え、心臓病や心臓発作、2型糖尿病を発症するリスクを高める」として、「砂糖の含有量が多いものには課税すべきである」との主張を科学雑誌ネイチャーに発表した。ラスティングのこの主張に対して、砂糖を使う商品を作る企業や業界団体が一斉に反論する事態となった。
サイエンス・ジャーナリストのゲアリー・タウブスは、2016年に出版した著書『The Case Against Sugar』(『砂糖に対する有罪判決』)の中で、「砂糖は『中毒性の強い薬物の一種』であり、ヒトを肥満にさせるだけでなく、心疾患の原因でもあり、健康を脅かす」「肥満とは、身体がホルモン障害を惹き起こした結果であり、そのスイッチを入れるのは砂糖である」と断じている。また、「砂糖は肥満、糖尿病、心臓病、メタボリック症候群を引き起こす原因であり、これにはインスリン抵抗性が関わっている」「砂糖はインスリン抵抗性の直接の原因となる」「インスリン抵抗性は癌の原因となる」と断じている。
カナダの腎臓内科医ジェイスン・ファン(Jason Fung)も、「砂糖の摂取は、血糖値および血中のインスリン濃度を速やかに急上昇させ、その状態を長時間に亘って持続させ、さらにはインスリン抵抗性をも同時に惹き起こす」「砂糖や人工甘味料は、インスリン抵抗性を惹き起こす直接の原因となる」「『どれくらいの量なら砂糖を摂取してもいいか』というのは、『どれくらいの量ならタバコを吸ってもいいのか』という質問と同じである」「砂糖を食べると太る。この事実に異を唱える者はいないだろう」「太りたくない、体重を減らしたいのなら、真っ先にやるべきなのは、糖分を厳しく制限することである」と断じている。
砂糖への規制
WHO/FAOは、レポート『食事、栄養と慢性疾患の予防』(Diet, Nutrition and the Prevention of Chronic Diseases WHO/FAO 2003年)という報告書の中で、「食事中の総熱量(総カロリー)に占める糖類の摂取量を10%以下にすべきだ」と推奨している 。なお、日本人の食事摂取基準(2005年版)推定エネルギー必要量の10%を糖類をすべて砂糖に換算した場合、成人で約50—70g程度の量(3gスティックシュガーで17—23本分)に相当する。
2014年、世界保健機関は肥満と口腔の健康に関するシステマティック・レビューを元に、砂糖の摂取量をこれまでの1日あたり10%以下を目標とすることに加え、5%以下ではさらなる利点があるという砂糖のガイドラインの計画案を公開した。具体的には、砂糖の摂取量は「1日にティースプーン6杯分以内(約25g)に抑えること」としている。
2016年10月、世界保健機関は、清涼飲料水に課税することで、「同飲料水の消費を削減でき、肥満と2型糖尿病を減らし、虫歯も減らせるようになる」と発表した(肥満税も参照のこと)。
2017年3月、イギリスで、2020年までに市場から年20万トンの砂糖を減らすためにガイドラインを作成し、飲料水は砂糖への課税により、また食品では、シリアル、ヨーグルト、ビスケット、ケーキ、クロワッサン、プリン、アイス、お菓子、調味料から砂糖を減らすように推奨し、同国は「砂糖税」を導入した。
アメリカの消費者団体(Center for Science in the Public Interest)は、「消費者は、糖分を多く含む食品の摂取を控えなければならない。企業は、食品や飲料に加える糖分を減らす努力をしなければならない」と主張し、FDAへソフトドリンクの容器に健康に関する注意書きを表示し、加工食品と飲料によりよい栄養表示を義務付けるよう請求している。アメリカでは肥満対策のため、公立学校で砂糖を多く含んだ飲料を販売しないように合意されている。アメリカでは、マクドナルドやペプシコを初めとする11の大企業が、12歳以下の子供に砂糖を多く含む栄養価に乏しい食品の広告をやめることで合意している。イギリスでは2007年4月1日に砂糖を多く含む子供向け食品のコマーシャルが規制された。
2011年4月28日、アメリカ食品医薬品局 (FDA)、アメリカ疾病対策センター (CDC)、アメリカ農務省 (USDA)、連邦取引委員会 (FTC) の4機関は、肥満増加の対策として子供に販売する飲食品の指針として、加工食品1食品あたりの上限を、「飽和脂肪酸1グラム、トランス脂肪酸を0グラム、砂糖を13グラム、ナトリウムを210mg」とした。
砂糖業界による買収行為
ハーヴァード大学の栄養学者、マーク・ヘグステッドらは、アメリカ砂糖協会(The Sugar Association)から資金を提供されて研究を行っていた事実を、複数の研究者たちが明らかにした。これはヘグステッドたちの死後のことであった。2016年、「アメリカ砂糖協会は、ヘグステッドを含む研究者たちに金を渡して買収し、糖分の過剰摂取に伴って発生する健康被害を長年に亘って隠してきた」という事実が、砂糖協会の保管記録から発見された。サイエンス・ジャーナリストのベス・モール(Beth Mole)は、「砂糖業界は研究者たちを買収し、食事における指針を何十年にも亘って歪めてきた」「堕落した研究者と、捻じ曲げられた科学文献は、50年近くもの間、砂糖の摂取の危険性から目を逸らさせ、食べ物に含まれる脂肪への責任転嫁に成功した。低脂肪・高糖質な食事の推奨は、現在起こっている肥満の流行の重大な原因である」と書いた。
これについて、砂糖協会は公式に表明を発表し、「我々としては、砂糖研究財団(砂糖協会の前身)は、すべての研究において、より高い透明性の責務を果たすべきであったということは認めるが、問題視されている研究が発表された当時は、資金開示や透明性の基準について、現在のように一般化されているわけではなかった」「ある業界から資金提供を受けた研究は腐敗したものになる、という烙印を押されるのは、不適切であるというだけでなく、酷い仕打ちだ」「我が協会は、砂糖と健康における役割についてなお理解しようと常に努力しているが、我々の主張は、質の高い科学と事実に基づいたものだ」と弁明した。
砂糖研究財団は、ハーヴァード大学の研究者3人、 - マーク・ヘグステッド、フレデリック・J・ステア(Frederick J. Stare)、ロバート・マクガンディ(Robert McGandy) - に資金を提供し、砂糖と冠状動脈性心臓病を結びつける研究に対抗するのを目的とした批評を書くよう要請した。1967年に「ザ・ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディスン」(The New England Journal of Medicine, NEJM)に掲載された批評では、砂糖の摂取が冠状動脈性心臓病につながる証拠は限られていることを「発見」し、心臓病の危険性がある患者に対し、砂糖の消費については「気にすることはない」と書かれた。NEJMは、1984年までは研究者に対して資金の開示を要求しておらず、研究者は利益相反を開示する必要が無く、彼ら3人は砂糖研究財団から金を渡された事実を明らかにしなかった。
ヘグステッドらが砂糖協会から金を受け取っていた事実を公表したカリフォルニア大学サンフランスィスコ校のクリスティン・E・カーンス(Cristin E. Kearns)は、2000ページに及ぶ内部文書を保管しているという。カーンスによれば、砂糖研究財団がのちに政策立案者に提供した小冊子で引用した論文は、アメリカ国民に低脂肪食を薦めることで、砂糖の市場占有率を拡大させたがっていた業界の目論見の後押しになったという。
砂糖研究財団の副会長兼研究責任者、ジョン・ヒクスン(John Hickson)は、栄養研究の動向を注意深く監視していた。カーンスが明らかにした1964年の内部稟議で、ヒクスンは、「砂糖研究財団が『砂糖を拒否する態度』に対抗できるようにするための『重要な計画に着手しよう』」と考えていた。ヒクスンは、ハーヴァード公衆衛生大学栄養学科の学科長を務めていたフレデリック・ステアを、砂糖研究財団の科学諮問委員会に参加させた。1965年7月、砂糖と冠状動脈性心臓病の発症を関連付ける記事が医学雑誌『Annals of Internal Medicine』に掲載されると、ヒクスンはヘグステッドに助けを求めた。ヒクスンは、研究者たちに対して最終的に6500ドルを支払う契約を結んだ。これは現在の48900ドルに相当する。
これら一連の出来事の詳細は、アメリカ医師会雑誌(The Journal of the American Medical Association, JAMA)に掲載された。
脚注
参考文献
- 橋本仁・高田明和 編『砂糖の科学』(初版第1刷)朝倉書店〈食品の科学〉、2006年11月20日。ISBN 978-4-25443073-8。
- Nutrition and Physical Degeneration: A Comparison of Primitive and Modern Diets and Their Effects (1939) Paul B. Hoeber, Inc; Medical Book Department of Harper & Brothers
- Price, Weston (2010). Nutrition and Physical Degeneration: A Comparison of Primitive and Modern Diets and Their Effects. Benediction Classics. ISBN 978-1849027533
- Yudkin, John (1972). Pure, White and Deadly: The Problem of Sugar. London: Davis-Poynter. ISBN 978-0670808199. OCLC 571307
- Taubes, Gary (2010). Why We Get Fat: And What to Do About It. New York City: Alfred A. Knopf. ISBN 9780307272706
- Taubes, Gary (2016). The Case Against Sugar. New York City: Alfred A. Knopf. ISBN 978-0307701640
- Fung, Jason (2016). The Obesity Code: Unlocking the Secrets of Weight Loss. Canada: Greystone Books. ISBN 9781771641258
関連項目
- インスリン
- 高血糖症
- 砂糖依存症
- 肥満
- あまくない砂糖の話・・・「1日にティースプーン40杯分の砂糖を摂取し続けたらどうなるか?」を映像で記録した、オーストラリアのドキュメンタリー映画(2014年)。主演のデイモン・ガモーは、この生活を60日間続けた。
- 糖度
- 甘味度